【開発教育支援事業】国際協力の未来に新しい風を/東北初の大学生向け『国際協力理解プログラム』を開催!

2022年9月29日

東北の大学生に国際協力の機会を創出する新プログラム

グループワーク中の室田さん(前列右)と原田さん(後列左)

 JICA東北では2022年8月、国際協力に関心を持つ東北エリアの大学生を対象とする『国際協力理解プログラム』を初開催しました。立ち上げの経緯について担当の遠藤浩昭職員は「これから社会に出て、国際協力に関わっていく世代である大学生の皆さんと、一緒に何かをしたいという想いがありました。特に東北の大学生は、国際協力に関心があっても首都圏と比べると参加できるイベントなどは限られてしまいます。そこで、同じ志を持つ仲間同士で語り合う機会を作りたいと考えました」と話します。

 応募者から選ばれた大学生12名は、JICA事業に関わるテーマについて議論や演習を行い、国際協力への理解を深めるとともに、国際協力を広報するチラシや1分動画などをグループワークで制作し、学びをアウトプットとして形にすることを目指します。今回は、福島から参加した室田彩夏さん、秋田から参加した原田翔さんのお話を交えながらプログラムの模様をお伝えします。

学びの分野もさまざまな大学生12名が、東北各地から参加

毎朝のアイスブレーク。現地の写真を食い入るように見て考える

 本プログラムが開催されたのは8月24日からの3日間。東北各地からJICA東北(宮城県仙台市)に集まった参加者は、大学での専攻も理工、法律、教育、国際資源、保健・福祉などバラエティー豊か。共通項は国際協力への関心です。「以前から職業選択の一つとして国際協力を考えており、JICAや海外協力隊に興味があった」という原田さんは、「大学以外でも何か学びたいと思っていたとき、学内のポータルサイトでプログラムを知りました」と応募のきっかけを話します。室田さんは「国内外を問わず多様な“人”について知りたい」という気持ちから国際協力に興味を持ったそう。地元でも国際交流イベントに参加しており、「いろいろなことに挑戦したい」と今回の参加を決めました。

多様な価値観と協力しあえる相手を持つことの大切さ

東北出身のJICA海外協力隊員(ラオス)とオンラインで意見交換

 今回プログラムで取り上げたのは、「JICA海外協力隊」と「多文化共生」です。それぞれの現状と課題、今後の取り組みなどについて理解し、学生同士で議論する中、際立ったのは“視点の多様性”。原田さんは「同じものを見聞きしても、人によって視点が全く違うことが新鮮でした。国際協力においても教育や資源、エネルギー、農業など分野は多岐にわたるので、多様な視点を持ってさまざまな人と関わっていくことが重要と感じました」と話します。

 演習では国際協力の現場を知る機会として、東北在住の外国人の方との対話や、ラオスで活動中の海外協力隊員とオンライン中継をつないでの意見交換を実施。室田さんは、このとき隊員が話した「何かを実現するには、協力しあえる相手を見つけることが一番大切」との言葉が強く印象に残ったといいます。「一人で何かをすることはできない、というのは今回のグループワークでも感じたことです」と、人と人の結びつきが持つ力に心を動かされたようです。

若者ならではの感性を生かし、チームワークで作り上げたアウトプット

多文化共生の重要性を伝えるチラシ。世界各地で暮らす人々の多様性を表現

海外協力隊の魅力を伝える動画には隊員経験者が出演。最後に最も伝えたいメッセージを挿入した

 アウトプットの制作では、議論や演習で受けた刺激を、自分たちと同じ大学生に向けたメッセージとして形にしていきます。同じグループで制作に取り組んだ室田さんと原田さん。チラシ制作では、“多文化共生”という抽象的な概念を視覚的にわかりやすく伝えるため、写真の配置を何パターンも検討したとのこと。海外協力隊の動画は「興味を持っている人の背中を押すようなものに」と話し合い、伝えたいメッセージとOB隊員やJICA職員のインタビューを組み合わせて構成。「原田さんは動画制作の経験があり、メンバー間で役割分担しながら作業を進められた」とのエピソードも教えてくれました。

 互いのスキルやアイデアを掛け合わせるチームワークは、国際協力を実践していくための礎となります。各グループとも初日から空き時間も使って構想を練り、限られた時間で作り上げたアウトプットは「想像以上にレベルが高い仕上がり」と遠藤職員も驚く力作揃い。今後JICA事業での活用も予定されています。

大学生から大学生へ伝えるメッセージ。次世代につなげる国際協力の輪

最終日には修了証書を授与。充実した3日間に笑みがこぼれる

 3日間のプログラムを終え、室田さんは「他大学の皆さんと出会って、目的に対するアプローチは一つではないと知りました。これから自分の視野をもっと広げたいと感じています」と、普段とは異なる環境に飛び込んだ今回の挑戦からまた新しいきっかけを掴んだ様子。原田さんにとっても、この経験は未来へ進む第一歩となったようです。「海外協力隊で活動したいという自分の夢が現実味を帯びてきたように思います。思い描いていたものに辿り着くには何が必要なのかを目にして、夢が目標に変わりました」

 実りある時間となった本プログラム、総仕上げはこれからです。12名は制作したアウトプットをもとにそれぞれ国際協力について情報発信を行い、10月には振り返りのフィードバックを実施します。室田さんと原田さんは、大学や地元の国際交流協会でのチラシ掲示や動画公開のほか、セミナーなど学生に直接伝える場を設けることも検討中。遠藤職員は「“大学生から大学生へメッセージを伝える”というのは今回最も期待している点。予想以上の熱量でプログラムに取り組んでくれた皆さんが、これからその体験をどのように発信してくれるか非常に楽しみです」と語ります。頼もしい大学生たちの活動は、国際協力の未来に新たな風を吹かせてくれそうです。