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【新型コロナに挑むJICA帰国研修員:日本での学びを活かし、各国で大活躍!】第3回 ケニア:ジョモケニヤッタ農工大学で、人工呼吸器の開発が進行中

2020年5月29日

ケニアの国立ジョモケニヤッタ農工大学では、教育や研究に携わる帰国研修員たちが、患者の増加により需要の急増が見込まれる人工呼吸器の開発に挑戦しています。JICAの研修後、帰国研修員たちがそれぞれの国で新型コロナウイルス対策に奮闘する姿を追うシリーズ第3回です。

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ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学で人工呼吸器を製作する研修員ら開発メンバー

プログラミングの知識を活かし、人工呼吸器の開発に臨む

「鳥取大学で学んだCNC(コンピュータ数値制御)プログラミングや機械加工の知識とスキルが、現在、開発中の人工呼吸器の機械のデザインや部品の製造に活かされています」

鳥取大学で「ものづくり機械工学イノベーション研修」に参加した当時のダニエル・オモンディ技官

そう語るのは、開発メンバーの一人で、ジョモケニヤッタ農工大学工学部のダニエル・オモンディ技官です。ケニアの産業人材育成に向け、鳥取大学で実施された「ものづくり機械工学イノベーション研修」に参加。研修での学びを活かし、開発に携わっています。

「人工呼吸器の開発では、素材選びや機械のサイズを決め、大学内で入手できる材料を使った部品の成型デザイン工程などを担当しています。そのほか、足りない部品の作製や人工呼吸器が正常に作動するか確認作業も行っています」

また、開発メンバーのボニフェイス・カリウキ技官は、「日本で学んだプログラミングスキルのほか、正確に研究や開発をする姿勢も、生産性と効率性の向上につながっています」と述べます。カリウキ技官は、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)の修士課程(およびインターンシップ)プログラムの第1期生。2014年から2年間、北海道大学環境科学院で学びました。

「開発チームには、これまでに医療機器の開発に関わった教員や技官がおらず、人工呼吸器を使用する患者のために必要な動作を組み込むことも容易ではありませんが、チーム全員が手探りの状況のなか、試行錯誤を繰り返し、開発に取り組んでいます」と新たなチャレンジについて語ります。

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人工呼吸器の製作に向け協議する開発メンバーら。右から4番目がカリウキ技官、その左隣がオモンディ技官

ジョモケニヤッタ農工大学で開発中の人工呼吸器

ケニア保健省によると、5月27日現在、新型コロナウイルス感染者は合計1,471名(死亡者数55名)。感染拡大による人工呼吸器の不足を補おうと、研修員たちは、都市間移動や店舗の閉店で部品の入手が難しくなるなど多くの制約があるなか、開発を進めています。

実践的な「ものづくり」を進める

「この人工呼吸器は、太陽光を電源として利用でき、軽くて持ち運びしやすく、どこでも使えることが特徴です。部品の85%を国内で調達して製作しています」と語るのは、開発メンバーの一人、ジョモケニヤッタ農工大学のバーナード・イクア副学長です。今回の人工呼吸器の開発は、同大学のものづくりセンターで行われています。

ジョモケニヤッタ農工大学内にあるものづくりセンター

イクア副学長は、1996~2002年まで鳥取大学工学部で機械工学を学び、博士号を取得。鳥取大学の「ものづくり教育実践センター」をモデルに、ジョモケニヤッタ農工大学で、ものづくりセンターの設置を進めました。2017年に完成し、実践的なものづくりを目指す同センターの取り組みが、今回の人工呼吸器の開発にもつながりました。

ジョモケニヤッタ農工大学では、新型コロナウイルス感染拡大に立ち向かうため、人工呼吸器や消毒剤の製作のほか、ウェブ上での感染トレンド予測システムや感染者の接触履歴をトレースするアプリなどの開発も進んでいます。

JICAは1977年から、機材の整備や本邦大学教員による技術協力を通じてジョモケニヤッタ農工大学への支援を続け、現在、同大学はケニア有数の理工系大学となっています。さらに同大学は、アフリカ連合が域内の高等教育のレベル向上のために2010年に立ち上げた大学院大学(汎アフリカ大学)構想において、科学技術イノベーション分野の拠点大学に指名され、アフリカ各国から多数の留学生を毎年受け入れるなど、アフリカ地域の拠点大学として重要な役割を担っています。