西アフリカ・ガーナ最大級の立体交差点が開通:現地への確かな技術移転でコロナ禍を乗り越える

2020年7月28日

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ガーナ最大級のテマ立体交差点が開通(写真提供:清水建設株式会社)

「テマ立体交差点の開通により、地域住民と道路利用者の皆さんは渋滞による不便な生活から解放されます!」

開通式でスピーチするナナ・アド・ダンクワ・アクフォ=アド大統領

今年6月、国内最大級となるテマ立体交差点の開通式のスピーチで、ガーナ共和国のナナ・アド・ダンクワ・アクフォ=アド大統領はこのように述べました。

また、荒木康充JICAガーナ事務所長は「この高品質の道路インフラは、ガーナの輸送部門を改善し、地域経済のロジスティックスを強化することで、この地域のすべての人々により良い未来をもたらすと信じています」と、祝辞スピーチで、テマ立体交差点の重要性を強調しました。

JICAの協力によるアンダーパス型のテマ立体交差点の完成は、ガーナの経済成長のシンボルであり、西アフリカ全体の交通および物流改善を通じた経済発展への貢献が見込まれます。

1キロを超える激しい交通渋滞が解消 

テマ交差点は、ガーナの首都アクラと国内最大のテマ港からの二つの国際回廊道路が交わる重要なポイントです。しかし、朝夕の通勤時間帯を中心とした慢性的な渋滞が問題となっていました。

そんな状況を改善するため、実施されたのが無償資金協力「国際回廊改善プロジェクト」で、テマ交差点は、28か月にわたる工事の末、完成しました。このプロジェクトは、2018年にJICAが作成した「西アフリカ成長リング回廊整備戦略的マスタープラン」を具体的に進めたもので、西アフリカ地域全体の経済発展を支えます。

ガーナ事務所の山本将史職員は、「テマ交差点の立体化により、時には1キロを超えた渋滞も解消され、地域住民からも喜ばれています。これに伴い、より迅速なモノと人の移動が可能になり、ガーナのみならず西アフリカ地域全体の物流改善につながります」と語ります。

開通式のスピーチで、大統領からはこの交差点周辺の道路開発計画も発表されました。今後さらに回廊整備が進み、西アフリカ地域全体の物流が活性化されることで、投資促進と市場拡大の好循環がもたらされ、持続的で強靭な経済成長が生み出されることが期待されます。

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工事前のテマ交差点

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立体化されて新たに開通したテマ交差点

日本式の安全教育と安全管理で無事故・無災害200万時間以上を達成

テマ交差点は、ガーナで最も長い地下道区間を持ち、上下6車線の本線道路、右折交通用の5本のサービス道路、障害者にも配慮したスロープ式の4本の歩道橋、信号機、街路灯などが備えられています。

工事ではドローンによる定点観測システムを導入しました。経験の浅い現地技術者も簡単に操作できるシステムであり、映像データは工事や工程管理に効果的に活用されました。また、日本式の安全管理を導入し、ガーナ人をはじめとした作業員の安全意識の向上に努めた結果、無事故・無災害200万時間以上を達成しています。

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ドローンで撮影されたテマ交差点の地下道工事の様子 (写真提供:清水建設株式会社)

その様子について、植村勇仁さん(清水建設・大日本土木JVテマ交差点改良工事作業所長)は、「工事を進めるうえで、様々な課題がありましたが、ガーナ政府やJICAをはじめガーナの皆様から多大なご協力をいただき、無事工期内に完成することができました。交差点を笑顔で走り抜けていくガーナの人々を見ると感無量です!」とその達成感を語ります。

新型コロナウイルスによる影響を乗り越えての完成

開通式でテマ交差点を紹介するガーナ政府担当者

順調に進んだ工事ですが、完成を目前にして、新型コロナウイルスによる影響が広がりました。ガーナでは3月13日に初のコロナ感染者が確認され、その後、感染者数が増加。日本人工事関係者と第三国籍の関係者は退避帰国を余儀なくされます。

しかし、日本人関係者が帰国後も、遠隔支援をフル活用するなどして、ガーナ人スタッフが仕上げの作業を継続し、完成へとこぎつけました。これは、日本人スタッフがガーナ人スタッフに技術と事業管理のノウハウをしっかりと移転させた何よりの証拠です。テマ交差点の完成は、まさしく「真の技術移転」を達成したプロジェクトとして、大きな実績を残すことになりました。

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完成を喜び、開通式で記念撮影するガーナの現地工事関係者