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【10月15日は「世界手洗いの日」】世界に届け!日本発の手洗い漫画:「子どもたちに手洗いの大切さを伝えたい」取材漫画家・井上きみどりさんに聞きました

2020年10月14日

毎年10月15日は「世界手洗いの日」です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、これまで以上に「手洗い」への関心が高まるなか、JICAは「健康と命のための手洗い運動」キャンペーンを展開しています。その一環として、途上国の子どもたちに向けた「正しい手洗い漫画」を制作しました。この漫画を描いたのは、国際協力などをテーマにする取材漫画家の井上きみどりさんです。制作の背景、漫画で発信する意義やその思いについて聞きました。

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井上きみどりさんが描いた「正しい手洗い漫画」の日本語版(上)と英語版(下)
現在、多数の言語に翻訳中で、今後、世界各国のJICA事務所から現地の保健施設、小学校などに配布される予定です。この漫画を動画化したテレビCMの放送やYouTubeでの配信も企画されています

水が貴重な途上国に配慮した、“正しい”手洗い方法とは?

——途上国では、水道などの設備や手洗いに対する意識なども日本と異なると思います。その違いに配慮して、描くうえで意識されたことはありますか?

井上きみどりさん(以下、井上):まずは“正しい”手洗いの仕方を正確に描くことでしょうか。ウイルスやバイキンを落とすには、水でしっかり洗い流すことが重要なのですが、途上国では水道設備のない地域もあり、桶に水を溜めてすすいだりするそうです。でもそれだと、溜まった水が汚染されるので感染症対策にはならないと。ですから、少ない水でもきちんと洗い流すことができる「Tippy-Tap」などの方法や簡易な手洗い装置を紹介するコマを作りました。

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漫画内では、少ない水でもきちんとウイルスやバイキンを洗い流せる手洗い方法も紹介

漫画を制作する際、JICA地球環境部の担当者とやりとりするなかで、手洗いのシーンには「石鹸」というワードを必ず入れ込んでほしいというお話がありました。いわれてみればなるほどですが、石鹸がない環境で育っていると、石鹸を使わずに水洗いだけで済ませてしまうことが習慣になっている子どもたちもいるんです。

また、洗ったあとは「乾かす」ことも大事だと。清潔な手拭きタオルがない環境では、自然乾燥でもよいとうかがい、パッパと手をはらって乾かす絵柄を入れました。水道から水が流れるシーンには、「ジャー」という擬音語の描き文字を最初、何気なく入れていたのですが、「途上国では水道の蛇口があっても、ジャーというほどの水量が流れないことがありますし、水が足りなくて節約しながら大事に使っている人もいます」とアドバイスいただきました。指摘されるまではその不自然さに気がつきませんでしたね。

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左が下書きで右が完成版。完成版ではタオルを使わず手を乾かす描写が加えられたほか、途上国での水供給事情を考慮し、水が流れる「ジャー」という擬音語が外されている

それから、日本ですと「家に帰ってきたら」「食事をする前に」手を洗う習慣がありますが、途上国の場合は事情が違う。「家畜の世話をした後に」や「ゴミを触った後に」にという表現を加えるようにアドバイスしていただき、なるほどなぁと感じました。

手洗いって「教育」だったんだ! と気がつき、自身の学びになった

——今回「手洗い漫画」を描いてみて、「手洗い」の考え方に変化はありましたか?

井上:ありましたね! 手を洗うことは自然に身に着くものではなく、「教育」なんだ、と気が付いたのです。日本だと、家庭や学校で子どもに手の洗い方を教えてくれますから、自然と習慣化されている。でも、それは当たり前のことではないんですね。

今回は途上国向けの手洗いの方法を、途上国の子どもたちに向けて描いていますが、日本の子どもたちにこの漫画を読んでもらっても意味深いと思うのです。「日本とは手を洗う環境が違うんだ!」って。それもまた大きな学びですよね。

コロナだけではなく、他の感染症予防にも役立ってほしい

——この「手洗い漫画」は、多言語に翻訳され、動画配信も企画されていますが、世界の読者へメッセージをいただけますか?

井上:感染症予防において、衛生管理というのは基本中の基本で、それで防げる病気はかなりあると聞いています。「手洗い」という基本を大切にすることは、コロナだけではなく他の感染症も防ぎ、世界の子どもの死亡率も減らせる。

この漫画を見た人全員が、手洗いを励行することは難しいかもしれませんが、10人のうち1人でも2人でも頭の中に残ってくれたらと願っています。その子どもたちが大人になったときに、今度は自分の子どもに手洗いの大切さを伝えていく。そうやって広がっていってくれたらと思います。

【画像】プロフィール
井上 きみどり(いのうえ きみどり)

仙台在住の取材漫画家。「震災」「ジェンダー問題」「国際協力」等をテーマに、社会問題を自ら取材し描いている。2020年4月「「コロナを『災害』として見る場合の災害時に子どものメンタルを守るために気をつけたいこと」と題した漫画を自身のSNS上で発表。JICAの協力で33言語に翻訳され世界中で話題となる。仙台での震災の経験から宮城・福島の【震災10年】の作品出版などの活動にも取り組んでいる。

JICA 健康と命のための手洗い運動プラットフォームとは
民間企業、業界団体、市民社会、大学、省庁、海外協力隊などの団体又は個人の方に協力の輪を広げ、情報や経験の共有、衛生啓発イベントの開催、共同活動の企画などを通じて、様々な連携事例、アイデア、ナレッジ、ツール等を生み出し、開発途上国の感染症予防、健康の増進、公衆衛生の向上に貢献することを目指します。