【6月12日は児童労働反対世界デー】子どもの将来、世界の未来のために、できることを考える:児童労働撤廃に向けたJICAの挑戦

2021年6月11日

児童労働は、子どもが教育を受ける機会や、危険にさらされずに健全に成長する機会、つまり、子どもたちの将来と世界の未来を奪うような労働です。

2002年、国際労働機関(ILO)は、児童労働の撤廃に向けた取り組みの必要性を訴えるため、6月12日を「児童労働反対世界デー」と定めました。それから約20年が経ちましたが、今週発表された最新のデータ(2020年初頭)では、世界で児童労働に従事する子どもはまだ約1.6億人。その数は、世界の5歳~17歳の子どもの約10人に1人に相当します。特に状況が深刻なサブサハラアフリカでは約4人に1人におよびます。

2020年の数字は、新型コロナウイルスの世界的な流行以前のものであったにも関わらず、前回(2016年)の数字よりも悪化しています。そして、現在、コロナの影響で、児童労働はさらに増えていると言われています。家の収入が減り、子どもが代わりに稼がなくてはならない、学校が一時休校となり、遠隔授業なども受けられないといった状況が続き、学校を辞めてしまうことがあるからです。

JICAは、児童労働の根本原因である教育や貧困の問題には取り組む一方、児童労働に対する直接的な取り組みについては限定的なこともありました。しかし今、こうした状況を受け、さまざまなパートナーと連携し、新たな挑戦を始めています。そのなかから、ガーナとラオスでの取り組みについて紹介します。

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笑顔いっぱいのガーナの子どもたち(写真提供/ ACE)

ガーナ:児童労働フリーゾーンの認定をサポート

ガーナと言えばチョコレートを思い浮かべる方も多いでしょう。実際、日本で消費されるカカオの70%以上はガーナから輸入されています。その一方で、ガーナでは、カカオ生産において、国際的な基準で『児童労働』と定義される労働に従事する子どもが77万人いるとされます。

この問題の解決に向けて、ガーナ政府は現在、児童労働をなくす仕組みを整備した地域を「児童労働フリーゾーン」に認定する政策を進めています。住民が児童労働の問題について理解していること、子どもの保護に関する条例が制定されていること、子どもの保護委員会が設置されていること、といった基準を満たすことで、「児童労働フリーゾーン」に認定されます。

JICAは、以前からガーナ政府による「児童労働フリーゾーン」の制度作りに協力してきた日本のNGOのACEと、開発コンサルタントのアイ・シー・ネットとともに、「児童労働フリーゾーン」の拡大に向けた調査を実施中です。カカオ生産地の「児童労働フリーゾーン」認定に向け、住民に対する啓発活動や、地域の行政官を対象とした研修の実施にも協力しています。

CRADA代表ブレンポンさん(左端)とACE事務局長白木さん(後列右端)は長年、一緒に児童労働問題に取り組んできました(写真提供/ ACE)

この調査は、子どもの権利の保護を目的に調査研究と開発事業を行うガーナのNGO、CRADAと協力して進めています。CRADA代表のナナ・ブレンポンさんは、「ガーナ憲法は、子どもが成長に悪影響を与える労働から保護される権利を保障しています。日本のパートナーの協力で動き出した児童労働フリーゾーンは、ガーナ政府や他のパートナーがこれまで進めてきた子どもの権利を守るための取り組みを強化するものです」と述べます。

ラオス:ILOと連携し、児童労働の実態調査を支援

コーヒー産業で児童労働に従事する女子(写真提供/ILO)

子どもが働くことが一般的なラオスでは、農作業、また、飲食業や歓楽施設などで児童労働が多くみられます。しかし、その具体的な規模や態様などの実態を把握するための調査が実施されたのはこれまで1回のみ、それも10年以上前の2010年のことです。経済成長が進み、新型コロナの影響も懸念されるなか、現状をさらに調査し、今後の有効な対策を講じることが喫緊の課題です。

ケンポーン・パオカムケオさん(右端)は、児童労働撤廃に向けた国家活動計画の実施に関するワークショップで共同議長を務めました(写真提供/ILO)

今年3月、ラオス政府が実施する児童労働の実態調査を支援するため、ILOとの連携をJICAは開始しました。ラオスでこの調査を担当するILOの担当者ケンポーン・パオカムケオさんは「JICAの協力により、これまでずっと必要とされていた児童労働に関する最新のデータがやっと収集され、児童労働撤廃に必要な政策やプログラムの立案に使われることとなります」と今後への期待を示します。

ラオス政府は、調査の結果を広く国内に広め、児童労働撤廃に向けた取り組みを強化していく予定です。JICAはその調査結果を基に、今後の協力を通じて、どのような貢献が可能か、検討していきます。

児童労働撤廃に向け、消費者一人ひとりも重要なパートナー

JICAは現在、児童労働の撤廃に向け、国内外のNGOや開発コンサルタント、国際機関と連携していますが、サプライチェーン(供給網)上に位置する民間企業、そして児童労働によって生産されたかもしれないモノを手にする一般消費者の一人ひとりも、途上国の児童労働をなくすためには欠かせないパートナーです。

そのような観点から、JICAは2020年1月、幅広いパートナーと児童労働を含むさまざまな開発課題の解決に向けて協働することを目的としたプラットフォームを、カカオ産業を対象に設立しました。

国際社会は2025年までの児童労働の撤廃を掲げており、SDGsの目標8.7にも、「最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅」と記されています。これらの目標に向け、アクションを加速すべき年として、今年2021年が「児童労働撤廃国際年」と定められました。さらに、日本国内においても、2020年10月に「ビジネスと人権」にかかる行動計画が採択され、世界の児童労働の撤廃に向けたさらなる取り組みの必要性が示されています。

児童労働撤廃に向けて、多くの方々とさらに力をあわせるための取り組みをJICAは続けていきます。「児童労働撤廃国際年」の児童労働反対世界デー、子どもの将来と世界の未来のために一緒に何ができるか、考えていきませんか。