国際協力を考える最初の一歩に:「JICA国際協力 中学生・高校生エッセイコンテスト2021」 記念式典を開催

2022年3月2日

次世代を担う学生たちが、世界の問題・課題を知り、どのように行動していくべきかを考える「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト2021」の記念式典が、2月19日にオンライン開催されました。長い歴史を重ねてきたこのコンテストは、多くの学生たちが後に国際協力の道へ進むきっかけにもなっています。

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記念式典の後には交流会を開催。審査員との意見交換や、受賞者同士が「世界と自分との関わりの中で、やってみたいこと・興味のあること」について意見を交わし、国際交流に対しての考えを深める討論の場となりました

自分と向き合い、社会課題を考えるきっかけを描く作品が多数受賞

中学生の部は26回目、高校生の部は60回目を迎える今年のテーマは、「私たちと地球の新しい未来」。総数48,385作品(中学生の部23,170作品、高校生の部25,215作品)が寄せられ、上位受賞者40名(最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞、国際協力特別賞)を対象に、記念式典が開催されました。

「教育は心や生活を豊かにし、人生を変えることができます。世界中の誰もが平等な教育を受けられるようになるための活動をしたい」と語る野中さん

中学生の部で最優秀賞(JICA理事長賞)を受賞したのは、野中真里さん(山梨英和中学校)の「ダブルの私にできること」です。タイ国籍の父と日本国籍の母がいる野中さんは、海外の子どもたちに奨学金を送る活動をきっかけに、奨学金を受ける側であるタイの子どもとオンラインで交流。置かれた環境や価値観の違いに驚きながら、「ハーフ」ではなく「ダブル」の私だからできることは何かと考えました。

「私たちは”美しいSDGs”という結論に固執することで、本来は考えられることや向き合うべきことから目をそむけているのではないか」と受賞コメントを語る久保さん

高校生の部最優秀賞(JICA理事長賞)受賞は、久保日向太さん(広島県加計高等学校)の「本当のサステナビリティってなんだろう?」です。SDGsやエコという言葉が社会に浸透する一方で、日本古来の田園風景の中にソーラーパーネルや風力発電のプロペラが乱立していくことに疑問をもち、社会問題とどう向き合っていくべきかを考えていく作品です。

応募作品から感じたのは、グローバルシチズンシップ時代への幕開け

野中さんの作品について「一人一人がもつ個性の輝きがよりよい未来を作ることを確信させてくれました」と語る中学生の部審査員長を務めた尾木直樹さん

中学生の部の審査員長を務めた教育評論家で法政大学名誉教授の尾木直樹さんは、「みなさんの多様で柔軟な思考は、まさにグローバルシチズンシップ時代への幕開けを予感させてくれました。コロナ禍もまだまだ深刻な状況ですが、後から振り返った時に今が新時代を切り開くターニングポイントだったなと思える日がくることでしょう」と作品への総評を述べました。

高校生の部で審査員長を務めた星野知子さんは、久保さんの作品を「土や草の匂い、風を感じられるすがすがしい魅力がありました」と表現しました

高校生の部の審査員長を務めたのは、女優でエッセイストの星野知子さん。ビデオメッセージで「コロナ禍で海外渡航も集団でのボランティア活動も制限される中、身近で自分の生活から何かを感じ、そこから一歩踏み出していく作文が多いと感じました」と述べ、将来、周囲に影響を与えながら国際協力やSDGsへの関心をリードしていく人材になっていくことを期待しています、と受賞者にエールを送りました。

国際協力の道を歩む先輩たちからのエール

1962年から続く「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」のこれまでの受賞者の中には、このコンテストをきっかけに国際協力の道へ進んだ先輩たちがいます。

現在、JICAパラグアイ事務所に赴任中の福地健太郎さんは、2001年度、高校2年生のときに文部科学大臣賞を受賞しました。日本が行っている障害分野の国際協力や、将来の自分が何をできるかをまとめました。

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視覚障害を持つ福地健太郎さん(右端)は、高校時代に当事者の立場からできることはないかという思いでエッセイを書きました。JICAでは留学生の受け入れや障害者の社会参加を促進するプロジェクトなどを担当してきました

「エッセイを書くためにいろいろと調べるうちに、教育が一人ひとりの人生を切り開く力や世界を変える可能性があると感じ、障害の有無や生まれ育った場所に関わらず、誰も取り残されない世界に近づくための仕事がしたいと目標をもつことができました。今回、受賞した方々もエッセイを執筆する中で感じたことや考えたことをきっかけに関心を深めていってください。地球の未来を思い、行動するみなさんと、いつか世界のどこかでご一緒できることを楽しみにしています」と福地さんは語ります。

また、2010年度、高校2年生のときに優秀賞を受賞した菊池つばささんは、学級内で始めたエコキャップ運動が地域の人々をも巻き込んだ大きな活動となったことを取り上げ、日々の小さな行動が世界の誰かの助けになるかもしれないということをエッセイにまとめました。その後、青年海外協力隊員の活動を経て、現在はアフリカ専門の輸入販売会社に勤めています。

菊池つばささん。ハンドメイドで作られた商品をアフリカ各国から直輸入して販売しています

「エッセイを書くことが、国際協力という夢と深く向き合うきっかけになりました。その際に感じた『他国を知ることは自国を知ること』という考え方は今も私の軸になっています。今回受賞したことで得たチャンスときかっけをぜひ今後の人生に生かしてください」と言います。

自身の考えを形に残すだけでなく、人生を変えていくきっかけにもなる「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」、次回の募集テーマは「世界とつながる私たち~未来のための小さな一歩~」。募集期間は2022年6月7日~2022年9月11日の予定です。