開発途上国の農業開発課題の解決のために-栽培ノウハウを電子マニュアル化しました。

2022年3月4日

JICA筑波は、開発途上国の農村地域の農業生産性や農産物付加価値などの向上による農家の所得増加の対策の一つとして、2021年5月から、ICTの活用にかかる共同事業を国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)と国立大学法人筑波大学つくば機能植物イノベーション研究センター(T-PIRC)との間で進めています。

今回は、初年度の成果をご紹介します。この実証試験では、ソフトバンク株式会社が提供する農業AIブレーン「e-kakashi」(注1)を活用し、圃場から収集した地温や水温、水深などの環境モニタリング情報を可視化するだけでなく、茨城県におけるコシヒカリの栽培ノウハウを電子マニュアル化しました。この電子マニュアルは、出穂期や収穫日を正しく予測するとともに、栽培初期や中干といった重要な水管理の段階などで、農作業の意思決定をサポートします。開発途上国では、様々な理由により、適切な時期に収穫が行えていない現状があり、その収穫ロスは20%とも言われています。今回、つくば市の圃場における実証試験では、最適な収穫日から5日ずれることで、玄米収量で15%ほどの減収となりました(注2)。収穫の遅れは食味にも影響するため、この成果は、開発途上国のみならず、日本においても、食味が優れた米の収穫増に貢献することが期待されます。

今後は、今までの勘や経験に基づいた農作業に比べ、電子マニュアルを使った作業が、稲作収量・品質にどう影響するか、を評価する予定です。これらの実証を通じて、ICTによる意思決定支援ツール等を活用した広域的な水田水管理を実施し、水管理の最適化による水稲増収・品質向上の達成を目指します。

今回の実証試験の結果や、茨城県におけるコシヒカリの栽培ノウハウの電子マニュアルにご関心のある方は、以下の「お問い合わせ先」先にご連絡願います。

(注1)「e-kakashi」は、勘と経験による栽培から、データに基づく科学的農業へのシフトを支援する農業IoTソリューションです。

(注2)ただし、サンプル数は12と少ないです。

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JICA筑波の圃場に設置した「e-kakashi」

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収量調査の様子1

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収量調査の様子2

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分析結果(一部)

お問い合わせ先

JICA筑波 研修業務課
メール:tbicttp@jica.go.jp