~開発途上国の農業開発を経て~農業で持続可能な地域づくりを!「水戸市地域おこし協力隊」吉倉 利英さん【後編】

                                      2021年11月

水戸市地域おこし協力隊 
吉倉利英さん (元JICA長期専門家・国際耕種株式会社客員研究員 茨城県水戸市在住) 

水戸市内の畑で苗を運ぶ吉倉さん

静岡県出身の吉倉さんは、JICA海外協力隊から始まり、ジュニア専門員、長期専門家、企画調査員、コンサルタントなど様々な立場から開発途上国の農業開発や環境保全に従事。マラウイ、インドネシア、エチオピアなどで、森林保全や農業開発の技術協力プロジェクトに関わりました。そして2020年11月、吉倉さんは、意を決し、茨城県水戸市の地域おこし協力隊※1として同市に移住。本気で就農を目指し奮闘中の吉倉さんに、これまでの経験や水戸市での取組についてお話を聞きました。(前・後編)後編は、水戸市移住の経緯や現在の想いについてご紹介します。(前編をご覧になっていない方は以下のリンクから!)

地域おこし協力隊として茨城県水戸市へ移住

インドネシア オイルパーム

吉倉さんが国際協力の現場で関わってきた人々の多くは「農民」。どのプロジェクトでも、「森林保全や農業活動との調和」を模索してきた。吉倉さんは、そんな村人との出会いの中で、日本における「食」が、開発途上国の森林保全と無関係ではないことを常々感じていた。

いつか自分も腰を据え、日本で農業をやってみたい、という想いを抱えていたなか、吉倉さんは、エチオピアのプロジェクトが終了したタイミングで、「今だ!」と決意。

就農先探しの中で、「地域おこし協力隊」に関心を持つ。「地域おこし協力隊」は、収入を得ながら地域と関係を作り、農業技術を習得できるという魅力があった。農業をやるなら森林の専門性も活かせそうな「果樹栽培」を、と考えていたところ、茨城県水戸市で「なし」「ぶどう」「りんご」など多種類の果樹について学べる環境での募集があった。

吉倉さんのパートナーの出身地が近いこと、これまで勤めていた国際耕種株式会社に地域おこし協力隊の活動をしながらも所属できるということなど、様々な縁もあり、茨城県の水戸市に「地域おこし協力隊」として移住した。

持続可能な地域づくりを目指して

水戸市で、農家の皆さんから様々なことを学び、実際に農作業をしていくなかで、「水がきれいじゃないと美味しい果樹ができない。」「温暖化の影響で作物の病気が増え農薬散布も欠かせない。」といった、これまで気がつかなかった「食」と「環境」との関わりがどんどん見えてきた。

「国際協力の現場での経験や環境分野の専門性を活かし、『地産地消』や『食の安全』を突き詰め、『自分にしかできない農業』をやっていきたい。」と吉倉さんは語る。柔らかい口調だが。国際協力の現場にいた頃から「持続可能な地域づくりを目指す」という吉倉さんの軸は変わっていない。

農業を通じた異文化交流も

水戸市内の畑でブルーベリー剪定作業

現在は、地域おこし協力隊の活動の傍ら、国際耕種株式会社の仲間と共に、茨城県つくば市の地方創生プロジェクトとして採用された「ふるさと菜園事業」※2の運営支援にも関わっている。単なる市民農園ではなく、長年、開発途上国の研修員への野菜栽培指導(JICA筑波の研修員受入事業)に携わってきた経験を活かし、外国人住民も含む参加者や地域住民が交流をしながら野菜栽培を学ぶ取組みを始めている。

水戸市の農家さんたちと(一番後ろが吉倉さん))

「ふるさと菜園事業」は、インド人の参加者が本場インドのカレー作りを紹介するなど、国籍を超えた人と人とのつながりの場にもなりつつある。「いずれ水戸市でも、農家の皆さんと一緒に、こういった活動ができたら」と吉倉さんは抱負を語る。

今日も吉倉さんは、水戸の果樹園で就農を目指し、奮闘している。