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COVID19(新型コロナウィルス)禍に負けずタイで野菜を自家栽培する取り組みを栃木県・福岡県企業が強力タッグで後押し!<株式会社関東農産(栃木県那須町)・株式会社アイエム(福岡県前原市)>

~SDGsゴール1,2,9,17への貢献~

2020年9月11日

関東農産(栃木県)の郡司社長(中央)・真鍋営業本部長(右)JICA筑波渡邉所長(左)
(2019年 中小企業・SDGsビジネス支援事業 採択時)

新型コロナウィルス、COVID-19の影響により、経済活動が停滞し主要産業の観光業が影響を受け、失業率も高まったタイ。都市部のパニックにより買い占めが発生する等、社会に大きな打撃を与えていました。このような状況を踏まえ、タイ政府は、食糧危機回避のため、自家栽培野菜の自給率向上を目指し「食料安全保障進のための自家栽培野菜を植える国民運動」(以下、「国民運動」)を展開。JICAはこの国民運動の「対象世帯の90%が野菜の自家栽培を行う」という目標達成をサポートするため、栃木県・福岡県の日本企業と密接に連携し、野菜の自家栽培に必要な物資支援(有機肥料100㌧寄贈)を緊急支援として実施。寄贈先16県の全世帯数中、実際に植付けを行い、食料供給の安定がもたらされた世帯数は約223万世帯に及んでいます。SDGsゴール1,2,9,17に貢献し、コミュニティ間の結束強化にもつながる野菜の自家栽培は、今後の展開・効果が注目・期待されています。

コロナ禍でタイ政府が展開する自家栽培野菜を植える国民運動

こんなに野菜とれたよ!

2020年3月以降、新型コロナウィルス、COVID-19の影響により、経済活動が停滞し主要産業の観光業が影響を受け、失業率も高まったタイ。都市部のパニックにより買い占めが発生する等、社会に大きな打撃を与えていました。そうした中、今後訪れるかもしれない食料危機を回避するため、タイ王国内務省コミュニティ開発局は、自家栽培野菜の自給率向上を目指し、この国民運動を展開。これは、故プミポン氏前国王が提唱していた「足るを知る経済(充足経済)の哲学」に基づき、首都バンコクを除く76県の郡、行政区、村及び関係自治体、コミュニティリーダーなどが一丸となり、全ての対象世帯で食料安全保障を実現するためのキャンペーンです。キャンペーン対象世帯は約1300万世帯に及び、2020年4月1日から6月30日の期間実施されました。

JICAの支援:プロジェクトと緊急物資支援

タイでの寄贈セレモニーの様子(2020年6月)

JICAは、この国民活動を実施したタイ王国内務省コミュニティ開発局とともに、地域格差を是正するプロジェクト「コミュニティ起業家振興プロジェクト」に2017年から取り組んでいます。今回の国民運動に対しても、「対象世帯の90%が野菜の自家栽培を行う」という目標の達成をサポートするため、日本企業と密接に連携し、野菜の自家栽培に必要な物資支援(有機肥料100㌧寄贈)を緊急支援として実施しました。現地では6月15日に寄贈セレモニーが開催され、タイ国内のメディアにも多数掲載されました。

日本の企業がタイの「With コロナ」を大きくあとおし!

タイ国内16県に届けられた有機肥料

コミュニティ皆で助け合い、野菜栽培に取り組んでいます

こどもたちも野菜や栽培を学びます

この有機肥料100㌧の寄贈の協力を行ったのは、栃木県那須町の企業・株式会社関東農産と、福岡県前原市の株式会社アイエム、そして関東農産・アイエムが現地企業と設立した合弁企業のOne Star Emerald Co.Ltdの三社です。

関東農産は2019年度、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業に応募し採択され、タイ中部ロッブリー県で、有機培土の現地生産に向けた調査を進めています。

社長の郡司祐一氏は「良質な育苗培土により農業生産が拡大すれば、生産物の生産性と品質が向上し、開発課題である農家収入の増加と農産物の市場競争力の強化に繋がる。当社の強みを活かしてタイの農業発展に貢献したい」と意気込みを語っています。

今回の協力についても、真鍋和裕氏(同社取締役研究開発部長兼One Star Emerald社取締役)から「コロナ禍でも、家庭菜園を通し食の安全・安心に改めて関心を持ってもらい、地域コミュニティの輪の広がりや絆を強くしてもらえることに貢献出来たら嬉しい。また、このプロジェクトが一過性のものだったのか、継続的な効果や地域に何かを芽生えさせる効果があったのかも、ゆくゆくは見極めることも大切」との熱く力強いコメントが。

6月の寄贈式では、タイ王国内務省コミュニティ開発局から3社への謝辞、そして「寄贈された有機肥料はこの国民運動に取り組む国民人一人へしっかり届け、活用し成果に繋げたい」との言葉がありました。有機肥料はタイ国内16県(北部7県、東北部1県、中部8県)に寄贈され、16県の全世帯数中、実際に植付けを行い、食料供給の安定がもたらされた世帯数は約223万世帯に及んでいます。

今後の展開

配布された有機肥料を使った野菜栽培の様子

野菜を育てる国民運動を通じて、タイでは「コロナで収入は激減したが、自ら野菜を育てることで自然に寄り添う暮らしを改めて学び直す機会になった」(パトムターニー県の女性)といった声が多くあがっており、国民が農業や食料安全保障の大切さに気付くきっかけにもなっているそうです。地域コミュニティで作った野菜を分け合ったり、大量に収穫できた場合は近所の市場で販売し小遣いにしたり、といった動きにもつながっています。

この国民運動は、2020年7月から12月まで、フェーズ2として継続しており、コミュニティ間の結束強化も醸成する野菜の自家栽培には、更なる取り組みの展開、また活動がもたらす効果に注目が集まっています。