SDGs目標年に世界を担う世代に向けJICA筑波が国際協力の現場体験を提供

~「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」が終了~

2020年9月17日

7月下旬から9月上旬にかけJICA筑波が実施した2020年度の「大学生・大学院生向け国際協力理解講座」がすべて終了しました。参加した大学生・大学院生の皆さんは、国際協力や農業開発の現場を体験し、これからの学び、進路を考えるにあたり大きな学び、気づきを得たようです。
 JICA筑波としても、参加学生の皆さんの声から、今後の講座や事業に役立つヒントをいただきました。これからも、SDGs目標年の2030年には日本・世界を担うことになる世代に向け、役立つ講座を企画・実施していきます。

講座全体の概要

2020年度は、「国際協力実務講座(初級編)」、「稲作技術向上」、「「小規模農家の生産向上のための野菜生産技術」の3つのコース(実務講座1、農業コース2)を実施。のべ28名の大学生および大学院生が参加しました。

実務講座(初級編)は、国際協力に関心のある学生から広く希望者を募り、国際協力の現場で働くJICA職員や開発コンサルタント、NGO、民間企業等による講義(協力事業の概要や実施の際の思いなど)やグループワークを通じ、国際協力の基礎知識を養うこと、そして更なる学びや進路へのきっかけづくりとすることを目指し実施しました。

農業コースでは、JICA筑波に農業技術研修のため滞在する開発途上国の行政官・技術者の研修の一部に大学生・大学院生が参加し、ともに専門知識や技術を学びました。参加学生は、開発途上国の研修員との交流を通じて、研修員の母国の状況を知り、また日本国内の国際協力の現場を体験することができました。

「国際協力実務講座(初級編)」

実務講座_アイスブレイク

実務講座_講義

実務講座_職員との交流

実務講座 PCM手法

実施期間:2020年8月24日(月)~8月28日(金)
参加者数:23名

<概要>
新型コロナウィルスの感染拡大状況に鑑み、ほぼ全プログラムをオンラインで実施。1日・希望者のみJICA筑波へ訪問し、対面とオンラインでJICA筑波職員との意見交換も行いました。主な実施講座は次の通りです。

・国際協力概論(ODA・JICA事業概要説明、援助事業計画策定、農業・農村開発分野におけるJICAの協力事業)
・ODAがつなぐ多様なアクター(民間企業、NGO、ボランティア)からの講義、経験共有
・案件形成、事業マネジメントのためのツール(PCM手法)
・国際協力キャリアについての講義、ディスカッション
・国際協力分野におけるキャリア開発(自分らしいキャリアの発見)

<参加学生の声(一部)>
・今回の講義で得た新しい知識は数えきれません。しかし、そのほとんどが基礎的なことでした。そのため自分は国際協力の基礎も知らないということに気づかされました。仕事面から精神面まで、大切なことを学びました。今回学んだことを活かして、キャリア選択をしたり、自分にできる協力をしたりと経験を積み重ねていきたいです。周りに国際協力に関心を持つ仲間がいないため、たくさんの仲間と話せただけで貴重な経験でした。この経験を無駄にしたくないです。

・今まで国際協力について講座やワークショップ形式でお話を聞く機会がなかったので、とても新鮮で、この経験は私の人生の中でも忘れることのない経験の一つです。本講座は初級編ということでしたが、さらに中級・上級の国際協力についての知識を身につけるため、今後も国際協力についての講座やインターンシップには積極的に参加したいと考えています。そして実際に国際協力に携わるときにはここでの経験を思い返しながら活動していきたいと思います。

・「国際協力という分野における自分の関わり方」について多くの情報を得ることができ、また現場で実際に活躍されている方々のお話をお聞きできたことで、自身のキャリアにおける「国際協力」との関わりが以前よりも具体化できました。さらに自己分析や他学生との意見交換を経て得られた多くの気づきもふまえ、今後の進路選択に役立てていきたいと思います。

農業コース①「小規模農家の生産向上のための野菜生産技術」

小規模農家_キャベツの病斑観察

小規模農家_土壌調査

実施期間:2020年7月27日(月)~ 31日(金)
参加者数:2名

<概要>
開発途上国の研修員とともに、講義・実験・ほ場での実習を実施。主な実施項目は次の通りです。

・練床の生成
・採取実習(ニンジン、トマト、タマネギなど)
・日本の農業普及のしくみと各国の仕組みについての講義
・圃場で採取された病原菌の顕微鏡による観察
・土壌分析実験

<参加学生の声(一部)>
・本講座では研修員と交流する機会が沢山あった。それぞれの国の農業、そしてそれを支える制度の問題点を直接聞くことが出来たのは貴重な経験となった。特に印象に残っているのは、農業従事者以外の国民が農業への関心を無くしている問題だ。その背景にあるのは、普及制度が確立されていなかったり、別の産業に重きが置かれていたりと様々な原因が考えられるが、農業の発展は農業従事者以外の人々も関心がなければ実現しない。研究を行うにあたって、農家だけでなく他の市民はどういった問題意識があるのか、どのような農業を望んでいるのかといった観点から見てみるのも面白いのではと考えた。

・今まで農学の授業をいくつか受講したことはあったが、農学部の学生ではないので農業実習を体験することはできなかった。実際の農業生産や農業試験のきめ細やかな工程は、今回のような実習でしか知ることができない。今回の農業実習の経験から農業生産のイメージを膨らませて、今後の研究テーマ(開発経済)の設定や分析結果の解釈に役立てたい。

農業コース②「稲作技術向上」

稲作技術_稲刈り

稲作技術_脱穀

稲作技術_病理実験

実施期間:2019年8月31日(月)~9月4日(金)
参加者数:3名

<概要>
開発途上国の研修員とともに、講義・実験分析・ほ場での実習・調査を実施。主な実施項目は次の通りです。

・収量調査(五斜線法、坪刈り)
・稲穂の分別方法、成分分析
・バインダーやコンバインによる収穫実習
・脱穀機による脱穀実習

<参加学生の声(一部)>
・短い期間で全員からお話を聞く事はできませんでしたが、現地の農家と直接接する機会のある研修員の方からそれぞれの国の現状をお聞きすることが出来ました。フィールドワークの経験もない私にとっては、これは初めての経験で、いつも論文や書籍からの二次情報に頼ってばかりだったので、現状を知るという意味では本当に有難い機会でした。

・将来開発経済学者として農村の実地調査を行う際に、今回理解した収量調査の知識を活かしたい。例えば化学肥料補助金や農家への農業指導など、特定の政策を評価するには農家の収量を調査することが不可欠である。仮に将来、開発プログラムのデザインに参加することになった場合には、今回のような収量調査の客観的な手順を意識してプログラムを設計したい。