(報告)「中小企業×海外展開×SDGs」をテーマにセミナーを開催!(3月3日・栃木県)

2021年3月26日

JICA筑波は、3月3日、栃木県、JICAと「業務連携・協力に関する覚書」を締結している株式会社足利銀行・株式会社栃木銀行・足利小山金庫の後援を受け、「中小企業×海外展開×SDGs」をテーマとしたオンラインセミナーを開催しました。ポストコロナを視野にいれた海外、特に開発途上国でのビジネス展開を検討中の栃木県内の企業、SDGsに貢献する事業を検討中の行政・金融機関等、大学、市民団体等より、40名以上のご参加をいただきました。当日の様子をご報告します。

基調講演「SDGsを企業経営に取りこむ3つのメリット~来るポストコロナ時代を先駆ける~

タイトル

タイムテーブル

基調講演の講師としてお迎えした株式会社かいはつマネジメント・コンサルティングの髙梨氏からは、民間企業が、SDGsを企業経営に取りこむメリットとして、主に以下の3つがある、と説明がありました。

① 顧客増:SDGsの観点からの調達先見直しや認証取得などを通じて、自社のサプライチェーンを健全化し、取引先やエンドユーザーの評判を維持・向上できる。

② 投融資増:SDGsの観点を経営に取り込み、非財務情報を強化することで、ESG投資やESG融資を呼び込める。また、SDGsの達成に取り組む金融機関も増えており、SDGsに特化した金融商品も販売されている。

③ 採用増:「SDGs」や「サステナビリティ」を意識した事業を行っているか、仕事を通じて社会貢献できるか、を就職・転職時の企業選択基準に挙げる就活生・ミドル人材が増加しており、SDGsを企業経営に取り込むことで有能な人材を採用できる。

髙梨氏からは、SDGsに取り組み、さらに海外への事業展開に進んでいく際のヒントとして、進出先として人気のASEAN諸国、特にインドネシアやフィリピンのSDGsの達成状況や課題となっている分野・テーマの調べ方、同国で求められているSDGsビジネスについてもレクチャーがありました。

JICA・ジェトロ・栃木県の民間企業海外展開支援の取り組み

引き続き、JICA・ジェトロ・栃木県それぞれが、民間企業の海外展開支援の取り組みを説明しました。まず、JICAが行う「中小企業・SDGsビジネス支援事業」について、JICA筑波連携推進課 渋澤職員が紹介しました。民間企業の海外部門担当者が海外進出を考えると、「経験・ノウハウがない」、「事前調査の資金や人材が不足」といった課題につきあたることが多いのでは。この事業は、開発途上国政府とのネットワークをもつJICAを活用いただくことで、現地での情報収集調査をより行いやすく、ビジネスモデルの策定・検証への支援も受けることができる、というものです

ジェトロ栃木の川崎所長は、ジェトロの海外展開支援施策として、販売戦略について専門家からのアドバイスを受けられるサービスや、世界各地にある相談窓口を紹介しました。海外ビジネスの基礎を習得できるオンラインでの研修もあり、2020年度は受講者が多かったそうです。その他、貿易投資相談や海外ブリーフィングサービス等、企業の方にとって有用な支援情報をご紹介頂きました。

また、栃木県からは、県内企業のSDGs達成に向けた主体的な取組を促進するために、2020年度に創設された「とちぎSDGs推進企業登録制度」について、公益財団法人栃木県産業振興センターよりご説明いただきました。

JICA中小企業・SDGsビジネス支援事業 採択企業による活用事例紹介

ツルオカ

セミナー後半では、JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に応募・採択され、実際に海外での調査や事業を実施されている栃木県内の2つの企業に、事例紹介いただくとともに、海外展開に踏み切った理由や狙い、今後の展望などをお話いただきました。

株式会社 ツルオカ (ご発表者:総務部 RECYINT事業企画室室長 堤 庸佐様;写真右下) 

創業91年目となる金属リサイクルを行う株式会社ツルオカ(栃木県小山市)は、鉄スクラップを加工した製品の製造・販売を行っており、「RECYNT(リサイント)」という原料調達から加工、製品製造までの一貫した独自のリサイクルシステムをもっています。

同社はこのシステムを、自動車の解体処理ニーズがあるフィリピンに導入し、再生材を活用した鋳鉄ウェイトの生産をはじめとした、資源効率を向上させるサーキュラー・エコノミー型のグローバルなサプライチェーンを強化できないかと考えました。地元の取引先銀行である足利小山信用金庫様のご紹介で、JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業(基礎調査)」を知り、ご応募いただきました。

ご発表いただいた堤室長のお話では、「基礎調査/案件化調査/普及・実証・ビジネス化事業」という3つのメニューから企業のニーズに合わせた支援が選択でき、費用面を含め充実したサポートを受けられることや、JICAの委託事業として、フィリピンの政府機関をカウンターパートとして活動することができることを魅力に感じてくださったそうです。

オグラ金属

オグラ金属株式会社 (ご発表者:取締役 経営企画室長 小倉 健一様;写真右)

自動車や鉄道車輛の部品などを中心に、鉄、アルミニウム、ステンレス製品を主力として生産販売をおこなうオグラ金属株式会社(1922年創業、栃木県足利市)は、宇都宮大学農学部、オーエムシー㈱と共同で「LED電照栽培システム」を研究・開発しました。この赤色のLEDをあてると、菊などの花卉の品質が向上する、というものです。

同システムを知ったJICA筑波担当者の強い後押しを受け、事業に応募。2020年からベトナムのダラット地域で、市場調査や試験栽培案件化調査を行っています。コロナ禍で調査に影響は出ましたが、現地にいる協力者や開発コンサルタントと協働し、オンラインで指示を出し機器の設置、ベトナム側の県の副知事との画面越しの対談などを実施、工夫を重ねながら事業を継続いただいています。

株式会社ツルオカ様、オグラ金属株式会社様、いずれの企業とも、自社製品・技術を、海外、特にアジア地域で試してみたい、いずれは販路を開拓したい、というお考えがありました。その思いに共感した銀行などの支援があり、JICA事業をうまく活用いただいて、アイデア・ビジネスモデルの実現可能性を、実際に現地で試していただいています。両社の今後の展開が楽しみです。

セミナーの最後には、国際開発ジャーナル社の屋代様から、「JICA事業への応募や事業参加のために必要な企画書作成や契約交渉、現地での市場調査や行程の段取りなどをサポートする開発コンサルタントを外部人材として登用することも一案」として、マッチング相談窓口を紹介いただきました。

長時間にわたるセミナーにご参加くださった皆様、ご発表くださった皆様、ありがとうございました。2021年度も同様のセミナーを開催予定ですので、お楽しみに!JICAの民間連携事業、事業の海外展開にご関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、以下担当者までご連絡ください。

JICA民間連携事業(栃木県担当)
独立行政法人国際協力機構筑波センター(JICA筑波)
連携推進課 渋澤・岡﨑 tbictpp@jica.go.jp