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【草の根技術協力事業】インドネシアとつくばをカカオで繋ぐ:東京フード株式会社(茨城県つくば市・現地渡航で関係者との再会)

2023年3月2日

茨城県つくば市の食品メーカー「東京フード株式会社(以下、東京フード)」とつくば市は、草の根技術協力事業「安全・安心品質でのカカオ加工技術を活かしたつくば市・ボアレモ県の食農産業の共同振興事業」を2018年2月から実施、2021年12月に事業終了を迎えました。コロナ禍の影響で渡航制限が続きましたが、終了後にようやく渡航制限が緩和、2022年11月末に同社とJICA筑波で現地を訪問しました。ここでは案件の内容や訪問の様子に加え、東京フードさんと現地のつながりや今後についてもご紹介します!

【1】東京フード株式会社とインドネシアのつながり

東京フードは、市場ニーズを的確につかむマーケティング力と、親会社である月島食品工業(株)の油脂加工技術をベースに、つくば市の食品メーカーとして独創的な製品を提供しています。同社とインドネシアとの繋がりは半世紀以上前に遡ります。太平洋戦争末期、月島食品工業の創業者・橋谷亮助氏はゴロンタロ州で農業指導を行っており、橋谷氏は現地農民の温かさとひたむきさ、真面目さに感銘を受けたそうです。日本帰国後もインドネシアでの体験を忘れず、1981年に同国からの留学生に学費の支援を行う「橋谷奨学会」を設立しました(奨学会は月島食品工業の関連団体として現在も活動を継続)。時を経て、2016年にこの奨学会のOBの一人(インドネシア人)が、カカオを通じて「橋谷氏のつくった会社と一緒に仕事がしたい」との思いから、東京フード社に声を掛けたのが始まりです。

【2】インドネシアの現状と課題

カカオ豆はカカオポッド(白い部分)に包まれている。取り出した後、発酵・乾燥を行う

カカオ豆は約5日間かけて発酵させることで風味が引き立ち、最終製品のチョコレートにした時の高貴な香りは心を浮き立たせます。インドネシアは、コートジボワールとガーナに次ぐ世界3位のカカオの主要産地(2019 年時点)であるものの、現地で生産されたカカオは今までほとんど発酵されていませんでした。理由は、発酵した豆を目利きする体制がなく、発酵してもしなくても現地でのカカオ豆の買い取りの値段が変わらないためでした。買取価格も低く、カカオ農家の生計向上の取り組みが必要です。

【3】カカオの付加価値及びカカオ農家の生計向上

カカオに虫がつかないように、個別にビニール袋を被せて保護

現地組合にチョコレート作りを指導

ゴロンタロ州ボアレモ県では20軒ほどの農家が、ボアレモ県産カカオの付加価値を高める本事業の趣旨に賛同し、東京フードから技術指導を受けています。発酵されたカカオ豆は、品質の良い順にAA、A、B、Cの4段階で評価され、評価に応じたインセンティブを付けて買い取られています。草の根事業を通じて、農家の発酵に対するモチベーションが向上し、発酵したカカオ豆の収穫量は年々増加しています。
また、東京フードはボアレモ県所有の加工場を使用して、農家が中心となって構成された現地組合約20人にカカオ豆の加工とチョコレート作りを指導しています。プロジェクト開始後間もない時期には、現地の方がつくば市を来訪、産業フェアでインドネシアのカカオから作ったチョコが紹介されました。しかしチョコレート作りに関する食品衛生、品質管理や保管方法といったさまざまな技術を現地組合に指導し、チョコレート作りを本格化しようとした矢先、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年2月以降は現地渡航が出来ない状況となりました。

【4】現地に根付いた信頼の輪

ボアレモ県農業局へのご挨拶
(地元誌にも掲載されました)

現地渡航が出来ない状況が続きましたが、オンラインによる技術指導といった柔軟な対応が進められました。そして、草の根技術協力事業は2021年12月末で、現地に渡航できないまま事業終了を迎えました。しかしながら、その後現地渡航が可能となり、2022年11~12月にようやく、東京フード社とJICA筑波で現地を訪問することができました!農家はカカオ発酵の取り組みに引き続き意欲的に取り組んでおり、また現地組合がチョコレート作りの技術を身につけ、「将来的にローカル市場でチョコレート販売という目標を描いている」といった、たくさん
の現地の嬉しい生の声を聞き、同社の取り組みが現地で根付い
ていることを改めて実感致しました。

【5】今後の展望

「つくばe-Choco」(つくば市HPより)

東京フードは、草の根事業で収穫されたカカオ豆を用い、つくば市の企業と連携し新商品の開発を積極的に行っています。ボアレモ県産カカオの独特の酸味を生かして約10種類の新たなチョコレート製品の販売を行い、2020年度には「つくばe-Choco」 が、つくば市を代表する優れた物産品の「つくばコレクション」に認証されました。半世紀以上前から続く東京フードと現地の絆は、長い年月を経た今、実を結んでいます。同社は引き続き、カカオ農家の生計向上と多くの人々に喜ばれるチョコレート作りを目指していきます。