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【草の根技術協力事業】地域の人づくりを目指す! ~茨城県で生活改善の工夫等を学ぶためエルサルバドルから 4 名が来日研修~

2023年3月9日

SDGsロゴ5

2023年2月19日~3月4日、中南米エルサルバドル共和国のコンチャグア市役所職員4名が、日本で実践された「生活改善活動」における工夫や普及手法を学ぶ目的で日本に滞在しました。茨城県つくば市の「NPO法人国際農民参加型技術ネットワーク(IFPaT:イフパット)」がエルサルバドルで実施する「JICA草の根技術協力事業」の一環での来日です。本研修では、つくば市SDGsパートナーズとの意見交換、スポGOMI(注:スポーツごみ拾い)実践活動、筑波ふれあい市での生活改善グループとの対話、青年クラブの仲間づくりを通した地域づくりの視察、島前ふるさと魅力化財団や地域から学びを得た島前高校生との意見交換等を、地域の方々のご協力を得て実施しました。

【1】コンチャグア市の現状と課題

【画像】コンチャグア市は人口約5万人、中米エルサルバドル国の東南端の町です(右地図の赤い地域、画像はWikipediaより)。ホンジュラス、ニカラグアと3ヵ国海域が入り組むフォンセカ湾に面し、住民の多くが漁業や海辺周辺の観光業の他、自給用穀物栽培やインフォーマルセクター(行政の指導下外)の経済活動に従事しています。同地域では援助慣れによる住民の依存体質、長い内戦の結果生じた集落内の社会連携の欠如が地域開発の障壁となっており、住民の主体性醸成と地域づくりの担い手としての若者層の意識付けが喫緊の課題となっています。この課題に対して、コンチャグア市役所は行動を起こし、青年層と女性支援の「人おこし」を通した地域おこしを行っています。

【2】日本研修での学び(プラットフォーム構築、地域活性化に向けて)

つくば市・SDGsパートナーズ会員と共に

スポGomi活動の実践

青年クラブ・生活改善グループの活動変遷についての意見交換を行いました。

筑波ふれあい市の様子

高校生の視点からビジョン形成に役立った要素を多々伺えた意見交換でした。

昭和の暮らし博物館にて

また滞在中には、昭和の暮らし博物館にて、モノがない時代の丁寧な暮らしの方法や、家族の家事分担について学びました。

本研修の一環でつくば市の持続可能都市戦略室、つくばSDGsパートナーズ会員企業の方々が取り組む活動について学び、コンチャグア市の地域活性化を推進していくことを目的とした意見交換会を行いました。終始和やかな雰囲気で意見交換が行われ、エルサルバドルとつくば市におけるSDGsの取り組みから新たな気付きを見出しました。市が率先してプラットフォームを構築することを通じ、住民同士が互いに楽しく学び合える結節点を担うことの重要性の気づきを得ました。  
また今後コンチャグア市役所が、青年層を巻き込んで地域活性化を推進していくための具体的な方法の一つとして、同じく本研修で参加した『スポGOMI活動』が効果的と皆さん口を揃えて仰っていました。スポGOMI活動とは各チームに分かれて、制限時間内でゴミを正しく分別した上で重さを測って競い合うというゴミ拾いを競技化した取り組みです。スポGOMIの魅力は参加者が楽しく競い合いながら、スポーツを通じて環境問題と地域づくりへの動機付けが同時に行われることです。今後コンチャグア市でも、ぜひスポGOMI活動を広めていきたいとのことです。
生活改善の面に関しては、50年前から青年クラブや生活改善活動を通じて仲間づくりを通した地域おこしを継続されてきている(株)ライス&グリーン石島での講義で「リーダーという存在は命令をしたり、強制したりするのではなく、人々の間に同じ目線で身を置き、お互いに教え合い学び合う存在だということ」を学び、コンチャグア市でファシリテーターを担う彼女たちに取って、とても重要な点であることを再確認しました。加えて、現代の下妻市青年クラブの方々に、実際現地で実践している「幸せツリー」のワークショップを演習させて頂き、先進農家さんの考え方や、意見を引き出す方法なども学べました。
筑波ふれあい市の皆さんからは、生活改善グループとしてレジもない時代から様々な工夫を重ねた活動変遷のみならず、自分で稼ぎ始めることで家族内での存在感や自己肯定感も増した事を語って頂きました。そのプロセスには常に本橋生活改良普及員さんがおられ、行政による寄り添い活動や女性が輝ける場を整える重要性を研修員は再確認しました。
島根県の隠岐島前魅力化プロジェクトの皆さんとのオンラインでの意見交換も経て、研修員は「国語や算数などの学習だけでなく、人生そのものを、地域全体が学校となり地域内外の大人から学びを得るというのが、高校生の視野を広げる事に非常に効果的と気付いた」と述べ、実践具体案を考察しました。

【3】コンチャグア市からエルサルバドル全土へ

JICA筑波への報告会

研修最終日には、JICA筑波で研修での学びの報告会を開催しました。コンチャグア市役所の皆さんは、本研修で多くの学び・気づきを得られたということで、喜々として発表する姿がとても印象的でした。特に彼等が今後コンチャグア市で住民との活動を実施していくにあたり、「共感すること」「住民たちと同じ目線に立って、共に課題を解決していく」ことの重要性を改めて確認したとのことです。
コンチャグア市でのJICA草の根技術協力事業は2024年5月で終了を迎える予定ですが、事業終了後も同市が青年層のビジョン形成と女性支援を軸にした活動を継続して行い、生活改善活動のロールモデルとして、エルサルバドル全土に活動を展開していくことを期待しています。