【中小企業・SDGsビジネス支援事業】ネパールでシイタケ栽培の可能性を見出す:株式会社北研(栃木県壬生町・第1回現調査報告)

2023年6月7日

SDGsロゴ 9

突然ですが、皆さんが普段食べているシイタケがどのように栽培されているかご存知でしょうか?実はシイタケの栽培方法は丸太を使う「原木栽培」とおが粉(木くず)を固めた培地=菌床を使う「菌床栽培」の2つに分けられます。栃木県壬生町に所在する日本で有数の菌床メーカー「株式会社北研(以下、北研社)」の2022年度中小企業・SDGsビジネス支援事業「ネパール国高温耐性シイタケと生産者ネットワークによるキノコ産業育成のためのニーズ確認調査」が採択され、この度、5~6月に第1回現地調査でネパールのキノコ市場の現状を視察してきました。

【1】ネパールの現状と課題

図:カトマンズの位置(Wikipediaより)

ネパールの首都のカトマンズではキノコ類(ヒラタケ、マッシュルーム等)の消費が盛んですが、高級食材として人々に愛されるシイタケについては、6~9月の4か月間はシイタケ栽培ができない気温まで上がってしまうため、流通市場からシイタケが無くなってしまい、市場の需要量に対して生産者の供給量が追い付いていないことが課題として挙げられています。その原因としては、一般的なシイタケ品種は20℃以下でしかキノコができないため、ネパールで自然の環境を利用した自然栽培においては夏にはシイタケ栽培ができないことにあります。

【2】北研社の高温耐性品種

北研の生産支援プログラムイメージ(HP より)

北研社は日本の自然栽培農家のニーズを満たすために様々な環境で栽培することができるシイタケ品種を開発してきました。その中には低温、中温、高温それぞれの温度帯に耐性があるシイタケ品種があります。これらの知見を活かして、真夏に自然栽培ができる高温耐性シイタケ種菌を使った菌床をネパールで製造し、約100のシイタケ原木栽培農家に販売、農家をネットワーク化してブランドを確立し、産業として育成することを目指すビジネスモデルを検討しています。

【3】種菌の品質向上に大きなニーズ

スーパーで流通しているシイタケ

上写真シイタケの生産者

北研社の取り組みの紹介

今回の第1回現地調査においては、主にネパールのキノコ栽培者・種菌製造者の視察、マーケット等の市場調査、政府関連機関への訪問などを実施しました。調査の結果、キノコ栽培者の生産規模の大型化、近代化志向の高まりによって、予想していたよりもマーケット・スーパー等へのシイタケの供給量が多いことが分かりました。しかしながら、いまだに“シイタケはつくれば売れる”のが現状で、供給量は追い付いておらず、キノコ栽培者の生産性の向上及び安定化の課題に対して、北研社が有する質の高い菌床栽培技術が、課題解決の一助となり得ることを改めて確認することができました。

【4】今後の展開

キノコのモニュメントをバックに撮影

本事業は2023年11月末までの調査を予定しており、第2回現地調査は7~8月頃の実施を予定しています。次回の渡航においてはネパール側パートナーの絞り込み等、ビジネスモデルの策定をより意識した調査を行う予定です。本事業のビジネス化が、将来的にはネパール国内市場への安定供給、ひいては小規模シイタケ農家の所得向上に寄与することが期待されます。JICAでは引き続き、北研社の取り組みを支援していきます。