スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい! -JICA海外協力隊×スポーツ- 第2回:大越幸之介さん(セネガル・レスリング)

2021年8月2日

「スポーツで世界を、日本を、盛り上げたい!」
JICAでは海外協力隊事業など、1960年代からスポーツを通じた国際協力を様々な国で実施してきました。スポーツは楽しさや熱狂、感動をもたらし、多くの人々を惹きつける力があります。対象とする人・地域や、その目的に応じて多様な取り組みが可能なため様々な力を持ち合わせています。国際協力の現場でスポーツ指導に携わった大越さんは、そのようなスポーツの力をどのように考えているのか、実際のセネガルでの体験談をもとに語ってもらいました。

一番左が大越さん

第2回:大越幸之介(オオコシコウノスケ)さん(セネガル・レスリング)
【隊員データ】
隊員区分:青年海外協力隊
派遣国:セネガル 職種:レスリング
活動期間:2019年12月~2021年3月
*世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年3月下旬より一時帰国となりました。
配属先:国立スポーツ教育センター

セネガルでの生活

 セネガルは、大西洋に面したアフリカ大陸西部にある国です。そんなセネガルの首都ダカールより東へ約70km進むとティエスという町があり、そこで生活していた大越さん。まずは現地の食事や生活、セネガルの方々の人柄について聞いてみました。

市場のある通りの様子

現地語学訓練期間にみんなで食べた伝統料理「チェブジェン」

 スーパーマーケットや市場があり、日々にぎわっているティエスでの生活は、治安もよく、バス・タクシーもいつでも使え、苦労なく生活できたそうです。スーパーマーケットではじゃがいも、玉ねぎ、アボカドなどが売られており、なんとスイカは1玉100円ほど!物価の安さに驚きですね。
「チェブジェン」と呼ばれる伝統料理は、「チェブ=お米」、「ジェン=魚」を意味する、セネガルの米料理。赴任直後の現地語学訓練期間(現地派遣後に行われる、現地で使用する生活言語の研修期間。大越さんはウォロフ語を学習。)にセネガルの方がふるまってくれたそうです。これをみんなで大皿で食べるのがセネガル流!
 「テランガ」というおもてなしの精神があり、誰でもウェルカムでフレンドリーな方たち。食事の後には「アタヤ」と呼ばれるお茶を飲むティータイムがあり、多い人は1日に3度も誘われたことがあるらしい。そういう時間と心にゆとりのある文化、ステキですね。
 そんなセネガルでの生活で驚いたことは、イスラームの礼拝。1日5回メッカの方角に向かってお祈りをする姿に刺激を受けたそうです。

現地での活動

 2代目のレスリング隊員として国立スポーツ教育センターに派遣された大越さんは、週に2回、6歳から16歳までの子どもたちを対象にレスリング指導に携わりました。人数は男女それぞれ15名ほど。誰でも自由に参加できるクラブであったため、参加者や人数はその日次第でした。その中でも「レスリングが強くなりたい」と熱心に取り組む生徒には、ユース五輪出場を目指して技術的な指導をできたことが印象に残っているそうです。
 日々の指導で大変だったことは、年齢や技術に差のある子どもたちを同時に2時間指導すること。そこで、セネガルの公用語であるフランス語やジェスチャーを使ったり、時には他のコーチにウォロフ語に翻訳してもらったりしながら、端的に分かりやすく伝えるよう工夫したそうです。一貫した指導を行うことが難しい中、年齢ごとにクラスを分けようと検討を始めましたが、次の方向性が見えた矢先での帰国となりました。
 また、セネガルではレスリングの国内大会がなく、まだまだマイナーなスポーツ。そのため、遊び感覚でレスリングの“楽しさ”を体験してもらうことで、競技普及にも努めていました。

【画像】配属先のボランティアコーチとともに子どもたちへレスリング指導

セネガルのスポーツ事情

 流行りのスポーツはサッカーやセネガル相撲!サッカーは、ヨーロッパの海外リーグでも活躍する選手がおり、性別を問わず人気のスポーツ。セネガル相撲は、迫力ある伝統的な格闘技で、試合には多くの方が観戦に来る国民的娯楽スポーツ。相撲と言っても日本のものとは異なり、打撃(パンチ)も可能で、選手は様々なアクセサリーを身に着けて試合に挑むそうです。大会によっては大金が得られることもあり、強くなろうとする子どもたちもいるのだそう。とはいえ、スポーツは遊びの中でするものという印象が強く、子どもたちは色々なスポーツに日々触れるのが当たり前なのだそうです。

【画像】セネガル相撲の試合

スポーツの力

 スポーツには老若男女、「誰でもつながれる」コミュニケーションツールとしての力があります。スポーツを通して互いにコミュニケーションをとりながら、感情を共有したり、1つの目標に向かったりすることができます。また、スポーツには「する」だけでなく、見る、支える、といった各人に応じた多様なかかわり方があります。このことは、誰もが共有できるスポーツの素晴らしさであり、そのようなスポーツは多くの可能性を秘めているのではないでしょうか。

スポーツを通じた国際協力の意義

 日本のレベルの高いスポーツを国際協力の現場で教えることも意義のあること。また、それ以上に「半学半教」の精神で、お互いに教え合い、学び合うことが国際協力の醍醐味だと語る大越さん。
 現在は大学院に進学し、スポーツコーチングを学んでいるそうです。今後も子どもたちのスポーツ指導に携わりながら、セネガルでの経験を社会に還元していき、「半学半教」の精神で自身も学び続けていきたいと熱く語っていただきました。

【画像】大越さんが指導するレスリングクラブの選手との集合写真

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
JICA横浜では、企画展「スポーツのチカラ」を開催中。JICA横浜全体もリニューアルし、2021年6月から「楽しみながら知る」、「寛(くつろ)ぎながら見る」ことができる空間に生まれ変わりました。ぜひみなさんも足を運んでみてください!(文責:JICA横浜 仁木・佐野)

*インタビューは2021年6月29日にオンライン上で実施しました。