【実施報告】第3回パネルディスカッション: 「日本」社会のこれからと学校の役割 ~子どもが日本の学校に通った体験から~

2022年4月6日

2022年2月26日、第3回パネルディスカッション:「日本」社会のこれからと学校の役割~子どもが日本の学校に通った体験から~(主催:JICA横浜主催、共催:神奈川県教育委員会、後援:ジャパンSDGsアクション推進協議会)を開催しました。

今回は外国につながりのあるお子様の保護者3名をお迎えし、子どもを日本の学校に通わせた経験から体験したことや感じたことをお話しいただき、学校関係者2名とともに、これからの学校の在りかたについてディスカッションを行いました。

第1部 子どもが日本の学校に通った体験から  

左からジャスタスさん、メラニーさん、ベティさん

第1部では、外国につながりのあるお子様の保護者、ジャスタス・チェプクオニ・キップランガトさん、高橋メラニーさん、ミヤ・ベティさんの3名から、子どもを日本の学校に通わせた体験から感じた自国との違いや困ったことなどをお話しいただきました。

ジャスタスさんは、学校で使う子どもの準備物を他の親と同様に用意できなかった経験から不安を感じるようになったことや、他の子どもが我が子をどのように捉えているのかが分からず、怖かったこと等、親として子どもを助けることができないと感じている、という話がありました。
 
メラニーさんは、学校から配られるお便りが多く、どれがより大事な内容のものなのか分からなかったり、話し言葉と書き言葉の違いから理解が難しかったり、困ったことがあったとのことでした。例えば、お便りの重要度により紙の色を分ける、といったことが対応の手助けになるのではないかとのアイディアを話してくださいました。
 
ベティさんから、子どもだけでなく親も気軽に参加できる学校のイベントがあれば、他の家庭の保護者や子どもと交流する貴重な機会になる。そして、誰が見ても分かりやすい内容でお便りが書かれているとよい、とアイディアをいただきました。

第2部 これからの学校の在りかたを考える

【画像】第2部では、学校で働く粟根幸子さん、教育委員会で働く石井陽子さんを交え、外国につながりのある子どもが共に学び、共に育つ地域の学校の推進に向けて「これからの学校の在りかた」を考えました。3人の保護者の方々の話を受け、学校としてできることやこれまでに実践したことのある工夫などについて、お二人からお話しいただきました。

パネルディスカッションを通して、粟根さんからは「地域の人を結ぶことも学校の役割である。学校から企画し、お誘いしていくことで、地域にいらっしゃる沢山の人材を繋げていけるように取組んでいきたい。」と力強い発言がありました。石井さんからは「外国の文化を知るだけではなく、対話を通して地域の人や周囲の人が考えていることを知ることが大切だと改めて感じた。学校は可能性を秘めている。」とお話しいただきました。

おわりに 

最後に、神奈川県教育員会の笠原陽子教育委員から総評をいただきました。
・皆さんの議論を聞き、「聞く」ことの大切さを改めて実感した。外国とつながる子どもを一括りにするのではなく、一人一人の違いをよく観察し、対応を変えていくことが重要だと感じた。

・学校の中で気軽に話せる人がいることが大事。関わる方々は「支援をしてあげる」“サポーター”ではなく“パートナー”になってほしい。

・保護者の方々のお話を聴き、日本の学校が当たり前としてきたことの中には、見直すべきところもあると感じた。学校からのお知らせは一方通行になってしまっていて、どの保護者にとっても何が大事か分かりにくい可能性がある。全ての人にとって分かりやすい情報を伝えていく工夫が大切。

・学校の先生方は非常に多忙で、学校が全てを担うことには限界がある。だからこそ、学校、行政、地域それぞれが担うことを整理し、子どもと保護者を支えていくことが大事になる。

・大人は自分の先入観や固定観念で物事を見てしまうが、子どもはもっと自由で解放的なところがある。学校が多様なものの在りかたを提供し、子どもが違いに触れ、肌で感じ、色々な生き方や価値観を知ることは、子どもたちが生きる上での軸となり、全ての子どもにとって大事であると強く感じた。

・教師が一緒に楽しむ姿勢を見せていくことが、教育の質の向上につながるのだろう。

今回、50名以上の方々(教員、教育委員会、大学院生、NPO団体等)にご参加いただきました。終了後のアンケートでは、参加者の皆様から「保護者の貴重な声が聞けて良かった」、「すぐに取り組めるヒントをいただいた」などのご感想が寄せられました。

日本の学校で当たり前に行われていることについての気づきや、これからの学校の在りかたを考え直す機会となりました。参加された皆様、ありがとうございました。私たちは、引き続き神奈川県教育委員会と連携し、外国につながりのある子ども支援に取り組んで参ります。