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第2回議事概要

2002年12月 第2回:議事概要

1. 日時: 平成14年12月4日(水)10:00〜12:00

2. 場所: 国際協力銀行 パレス大会議室

3. 出席者: 武田委員長(本行専任審議役)、外部委員1)、内部委員2)、事務局。なお、外務省がオブザーバーとして参加。

1)外部委員(敬称略、50音順)
池上 清子 国連人口基金(UNFPA)東京事務所長
今田 克司 CSO連絡会事務局長
高梨 寿 海外コンサルティング企業協会(ECFA)主席研究員
千野 境子 産経新聞論説委員
三輪 徳子 国際協力事業団(JICA)企画・評価部調査役
牟田 博光 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授 (欠席・書面コメント提出)
山越 厚志 日本経済団体連合会国際協力本部 アジア・大洋州グループ長 (欠席)
弓削 昭子 国連開発計画(UNDP)駐日代表 (欠席)
渡邊 耕三 三重県総合企画局政策推進システムチームマネージャー
2)内部委員
角谷 講治 総務部長
長谷川 純一 開発業務部長
荒川 博人 開発第1部長
木山 繁 開発第2部長
山田 裕 開発第3部参事役(代理出席)
枦山 信夫 開発第4部長
田中 裕 開発セクター部長
森 尚樹 環境審査室参事役(代理出席)
種田 博 プロジェクト開発部長(事務局長)

4. 議論の概要:

事前に各委員に配布された別添資料(PDF/779KB)に基づき2001年度評価結果に基づくフィードバック事項の抽出、国別・セクター別業務改善策の整理、今後のフィードバック計画についての事務局案が紹介された。各委員から事務局案への修正を求める声はなかったが、フィードバックの改善点等、以下の各テーマについて活発な議論が行われた。

(1)円借款の改善に資する評価・フィードバックの在り方

今次委員会で事務局から発表された評価結果やフィードバック事項に関し、これだけたくさんの評価作業を行うことは大変な時間・手間と思うが、やっていかなくてはいけない。
全事業をDAC5項目に沿った一貫した手法で評価したことは良く、これからも継続していくべき。
個別事業の評価及びその円借款業務へのフィードバック・反映に加え、今回初の試みとして国別・セクター別評価の概評が行われたことをふまえ、既にスリランカの国別業務実施方針作成に反映している。
評価の結果指摘された問題への対策を検討する際に、SAF(有償資金協力促進調査)を拡充すべきである。

(2)フィードバックに関する改善点

ドイツKfWの評価レポートではマイナス面も紹介し、評点をつけると共になぜ悪い結果になったかも分析している。JBICの評価レポートにも同様に問題点等が紹介されており、この点昨今円借款のマイナス面ばかり強調されがちだが、日本だけでなく他ドナーもODA業務において同じような問題を抱え苦労していることを紹介し、他ドナーの援助と円借款の相対化を図るべきではないか。
コスト、計画期間等共通の情報を一覧的に纏めるなど、統一性を高めると対外的により判りやすくなる。
新たな試みとして日本国民と借入国側国民とに対し、円借款理解度アンケート調査を実施して、継続的にモニタリングしてみてはどうか。
事務局から、過去には世銀・JICA等と合同で評価を行った実績はあること、来年3月に開催される世界水フォーラムでは、ADBと連携・調整した上で、各々の評価結果を発表し有為な教訓を導きたいと考えていることを追加説明。
行内へのフィードバックについて、審査時の担当者にヒアリングすることも、実務的な教訓提言の抽出やフィードバックを促し、行内業務の質向上に寄与する。
評価結果から抽出する教訓は、一般的すぎてもspecificでもなかなか利用され難いため、業務で利用できる有益な教訓を導き出すための工夫が重要。
事務局から、当時の担当者へのヒアリングは幾つかの事業で行っているが、体系的には行っていないこと、今後の課題として、行内の担当者に限らず、担当していたコンサルタント等からもヒアリングすることを検討中と追加説明が行われた。
何のために円借款業務を実施しているのかが国民に見え易くするため、海外経済協力業務実施方針に記述のある円借款の基本姿勢(重点分野)から整理して、output/outcomeを測る各種指標を提示する形してはどうか、円借款はこうすると国民のためになるという指標を考えることが重要。
これだけの案件数をコストをかけて評価しても、円借款の理解促進という観点からは生産効率が悪い、今後はこれ以上のコストをかけず、役に立つ評価に取組んでもらいたい。

(3)ホームページ上での事後評価結果公表・フィードバックについての改善点

説明責任を果たす過程では内部と外部の対話が必要であるが、日本では評価報告書をホームページに掲載するだけでは反応がなかなか出てこないため、ホームページに情報を載せる側がもう一歩踏み込む工夫が必要である。
大学と連携し、評価報告書を教材として評価ケーススタディーを行うといった重層的な仕組みが有効ではないか。
質問票やアンケートを組み合わせる案が寄せられた(ホームページに評価報告書を掲載したことを関心を持ってくれそうなメンバーを抱えている開発学会・評価学会等に依頼して、各学会のメーリングリストで宣伝してもらい、そのメールに質問票を添付し回答フォームを返信するという例、評価報告書を郵送配布する際一緒にアンケート用紙を添付して国民の意見・感想を集めるという例)。
事務局からは、既に本行OBの大学教授が実際に評価を授業に取り入れている例があると追加説明がなされた。

(4)プロジェクト評価に係る第三者意見徴求の改善点

第三者はプロジェクトの全容を知らないので、評価の専門家であったとしても結果的に質の高い評価は出来ない場合が多く、新しいテーマや、評価手法の開発等、まさに専門性が問われるものについては外部専門家の知見を活用する理由も成り立つが、全ての評価を第三者に依頼する必要はない。
第三者意見については、評価手法・内容の妥当性についての意見を求めるのか、プロジェクトの妥当性についての意見を求めるのか等を明確にすると良い。
JBICが採用しているDACの評価5項目のうち、妥当性、効率性、効果を内部の者が評価することは良いと考えるが、インパクト及び自立発展性の評価は難しく、評価者の力量にかかっているところが大きいため、外部有識者のノウハウを活かす形にしてはどうか。
持続性・自立発展性については、intervene(介入)する側がinterveneし続けると抜けられなくなるという矛盾を抱えた項目であり、他の4つの項目とは異なるので、NGO等外部のノウハウも使いつつ、local empowermentを行うことが重要である。

(5)評価の評価

内部評価が持つ重要性を肯定しつつ、内部で実施する評価の質を如何に担保するか、その質について対外的な説明責任を如何に果たすのか、そのための仕組みは必要である。
公平性が担保できる学会等に依頼し、第三者の視点から、プロジェクトの評価だけではなく、実際にJBICが行った評価手法・内容について評価を行い、改善を図るとともに、評価手法・体制の妥当性を担保していくのも一案である。

(6)借入国側を巻き込んだ評価

評価の教訓、特に持続性・自立発展性の確保に関するものは、例えば使用料の確実な徴収、運営維持管理予算の確保など借入国側が真剣に努力すべきものが多いが、問題点を借入国側に認識してもらい同じ失敗を繰り返さないために、評価の過程に借入国側を組み込んだり、借入国と政策対話を行うことが重要である。
借入国側を評価に組込むことで、JBICが事業の最後までしっかり見ていることを借入国側にアピールすると同時に、納税者である日本国民に対してもJBICが借入国側を見ていることを知らせるべき。
事務局より、持続性・自立発展性確保に対する借入国側の問題意識は高まっており、例えばJICAとの連携でODAプロジェクト評価セミナーに招聘した借入国側担当者からは「ぜひJBICの評価活動に加わり勉強したい」との意思表明があること、このようなセミナー生とのネットワークを利用しながら今後は借入国側をもっと評価に組込んでいくこと、今回の評価を通じて住民参加による維持管理の改善を図る必要性が確認された地方給水事業の例が追加説明された。

(7)インタビュー調査について

受益者の声も反映させるという視点で、インタビューが評価に組み入れられていることは望ましい。
住民・受益者インタビューについては、その地の有力者を通じて行わざるを得ないことは実務的であるが、その結果が一般民衆の真意とは限らないこと、何をもって世論・住民の声とするかは答えがないことから、時に疑ったりしながら、色々な声を時間をかけて聞いてみるしかない。
インタビュー調査はやり方次第では非常に危険であり、どのような条件下で、どのような手法で実施されたのか、必ず記述するべきである。

(8)インパクトの評価、プロジェクトレベルを越えた評価

各国優先分野・国家開発計画と円借款の目的とが合致していたか否かを示すより明瞭な指標が必要である。
JBICが採用しているDACの評価5項目のうちインパクトについては、個別のプロジェクト単位ではなく複数のプロジェクトをまとめた形で評価する方が良いのではないか。
例えば保健医療分野は、人を介することで複数のセクターと関わっており、セクター毎の評価も理解するが、セクター同士の横の連携を考慮したインパクト評価が必要ではないか。
事務局から、今後テーマ別評価で一つのプロジェクトを超えたレベルのインパクトを測定する試みとして、ベトナム北部交通インパクト調査を企画していることが紹介された。
部分最適の集合が全体最適になるとは限らないので、個別プロジェクトを超えた評価の重要性が高まっていると共に、PRSPのような国全体の開発戦略を見据えた上からの体系だったアプローチが重要である。

(9)その他提言・質疑応答

工期遅延によるコスト増加にどう対処しているか、また対処すべきか、第三者評価ではこの点について言及があったか、との質問がなされた。これに対し事務局から、借款に含まれている一定の予備費だけでは対応できない場合、一義的には借入国予算で対応するが、日本政府と協議の上借入国の要請に基づき追加借款を供与することもあること、工期遅延を防ぐ工夫と共に柔軟に借款の期限を設定することも有用であることが紹介された。
パキスタンのテレックス事業が技術の進歩と共に利用されなくなった例が紹介されていたが、このように技術が陳腐化したり、効果が見込まれなくなった案件については、途中で事業実施を中止することも必要である旨提言がなされた。これに対し事務局から、過去には事業実施を中止した例もあり、また事業スコープを柔軟に変更している例もあることが紹介された。
工期が遅延する事業が多いとのことだが、遅延の幅はどの程度かとの質問がなされた。これに対し事務局から、通常であれば1、2年から数年の遅延であるが、中には工事が困難な地下鉄事業や洪水被害を受けた道路事業などで、全体の完成までに10年近く要したものもある旨紹介がなされた。
効率性は具体的にどう見ているのか、円借款は国際競争入札が一般的であり効率性は確保されていると考えられるが、同じ効果を得るためによりinputが少なく済んだとか、同じinputで最大のoutcomeが得られた、という観点も含まれているのか、という質問がなされた。これに対し事務局から、効率性・効果を定量的に把握する試みとして、できる限り内部収益率の再計算を行っている旨回答がなされた。

5. 委員長総括

会議の最後に委員長より次の総括が行われた。
時間的制約の中で議論しているため、外部委員の疑問・提案に対して内部委員・事務局で回答が尽くせていない点がある。そのため、委員会で全て満足できる形とすることは困難であるが、今後も議論を発展させていきたいと考える。今回議論を尽くせていない点については、事務局で纏めて整理をした上で次回会合においても議論させて頂きたい。

以上

1.出席した外部委員の方々

1.出席した外部委員の方々

2.出席した内部委員

2.出席した内部委員

3.(左から)千野委員、高梨委員、今田委員、池上委員

3.(左から)千野委員、
高梨委員、今田委員、池上委員

4.(左から)渡邊委員、三輪委員

4.(左から)渡邊委員、三輪委員