jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

第3回議事概要

2003年7月 第3回:議事概要

1. 日時 平成15年7月3日(木)15:00〜17:00

2. 場所 国際協力銀行8階 AB会議室

3. 出席者

1)外部委員(敬称略、50音順)(議事概要での○印は外部委員のご発言)
池上 清子 UNFPA(国連人口基金)東京事務所長
今田 克司 CSO連絡会事業開発担当オフィサー
高梨 寿 海外コンサルティング企業協会(ECFA) 主席研究員
谷崎 義治 三重県総合企画局 政策企画分野評価システム特命担当監
千野 境子 産経新聞論説委員
三輪 徳子 国際協力事業団(JICA)企画・評価部調査役
牟田 博光 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授
弓削 昭子 国連開発計画(UNDP)駐日代表
 
2)内部委員(議事概要での※印は内部委員の発言)
出席した外部委員の方々
武田 薫 専任審議役(本委員会委員長)
角谷 講治 総務部長
村田 修 開発業務部次長(代理出席)
荒川 博人 開発第1部長
木山 繁 開発第2部長
田辺 輝行 開発第3部長
枦山 信夫 開発第4部長
林 薫 開発セクター部長
畑中 邦夫 環境審査室長
種田 博 プロジェクト開発部長(事務局長、本委員会進行役)

4.議事概要

武田委員長の挨拶、新委員の紹介に続き、各委員に事前に事務局より配布された資料を参照しつつ、事務局より主に第2回委員会(2002年12月)以降の事後評価フィードバック状況、及び第2回委員会における委員ご提案への対応状況について補足説明。その後主に以下の諸点について委員より活発な発言、議論が行われた。

(左から)池上委員、今田委員

フィードバック・セミナー参加所感/評価結果のフィードバック

3月にバングラデシュで行われたグラミン銀行向け円借款事業のインパクト評価フィードバック・セミナーに参加した。同評価はシャプラニールが実施したもので、NPO法人に第三者評価を委託した初の事例。本フィードバックセミナーには2つの段階があり、1つ目はインパクト調査に参加した村の人々への調査結果のフィードバック、2つ目は、政府関係者やNGO等のマイクロファイナンス担当者へのフィードバックである。前者については、国際協力の分野においては一般的に、住民からのデータ収集には熱心であるが、調査結果の共有には重きが置かれていなかったため、このような取組みは非常に良いことと実感した。後者については、仮説を立てていたマイクロファイナンスと教育水準の向上・女性のエンパワーメントとの関連性が必ずしも明らかにならなかったとの調査結果を示した。その事実を率直に関係者に伝えたことで、次の調査では別の指標を用いて検証を試みることが可能になったという点で、フィードバックは有意義であったと考える。また、NGO(BRAC)が実施し成功していることを踏まえ、マイクロファイナンス++アプローチに対して、円借款が供与出来れば、最貧困層に対するインパクトを検証出来るのではないかと考える。
6月にJBIC本店で行われた、フィリピン及びスリランカの水道事業のフィードバックセミナーにパネリストとして参加した。特にフィリピンの事例はアジア最大の水道事業民営化に関する多角的な評価であった。地域を東西二つに分けて民営化しているが、片方のみが成功している点は非常に興味深い事例。また教訓としては、無収水(non revenue water)が2つの民営会社とも60%以上あり、その理由は漏水と盗水とのことであり、民間ではあまり施設のリハビリが実施されていない事を示している。本セミナーでは評価結果の途中報告とのことであるが、今後は貧困層にいかに水を供給するか、また、Regulatory Officeの調整機能のあり方につき把握することを期待する。
三重県の政策評価には2つの目的があり、1点目は県民に行政を分かり易く説明すること、2点目は職員の意識改革である。円借款でも同様の対応がなされているのではないかと思うが、事後評価結果を次年度の予算に反映させたり、評価がしにくい事業につき評価できるように形成していくという努力も必要である。

評価の評価

第三者評価は中立性は確保されるものの、評価者ごとに見解は異なり、どれが正しいということは言えない。内部評価にしろ外部評価にしろ、評価者以外の複数の評価有識者が複眼的に見ることで評価の質を向上させることができる。
「評価の評価」といっても、同じ内容の評価を上乗せするのでは意味がない。メタ評価のあり方については、本委員会の任務に重なり、連携が望ましい。国民に対するアカウンタビリティを果すためにも、NGO等から個別プロジェクトへの批判があることも認識した評価の評価を考えるべきではないか。
経験上、第三者評価はアカウンタビリティー確保には役立つものの、必ずしも質が高いとは言えず課題となっている。その点において、平成13年度に実施した、JICAの「評価の評価」は、日頃問題として認識している点を指摘され有意義であったので、JBICにも推薦したい。
評価の評価はどこまですべきか。「評価のフィードバックの評価」を考えてみるのはどうか。
ODA 専門家だけでなく、評価の専門家にも関与頂き、評価の方法論から議論することで、評価の質が多まるのではないか。

中間評価/プロジェクト・ライフを通じての評価

事後評価の結果が後続の事業に反映されるのは良いことであるが、懐妊期間が長い円借款の場合は特に事後では手後れになる可能性がある。評価のあり方としては、完了した事業の評価だけでなく、事前・中間評価及びモニタリングを実施し、事業を成功に導くことが重要であるのではないか。従って、中間評価にも重点を置くべきではないかと考える。本委員会も「『事後』評価フィードバック委員会」でなく「評価フィードバック委員会」とした方が良いと思う。
インフラの物理的完成をもって事業完了とするのではなく、事業効果の効果発現をもって完了ととらえ中間評価を設定すれば、より中間評価の意味が高まるであろう。
委員からご指摘のあった中間評価については、「中間評価」という言葉自体は使っていないが、事業の途中段階でも何らかの問題なりが生じた際には、レビュー/分析を行いその対応について検討し策定している。また、ある案件の事後評価や中間段階での調査を他の同セクターの同種の案件にフィードバックしている。例えば、インドネシアのジャボタベック圏鉄道事業の事後評価・フィードバックについて今年3月ジャカルタでセミナーを開催し、その内容につき検討・共有した。その議論と結果を生かしながら、6月には後続の鉄道セクター事業の現況と課題につき議論するワークショップをジャカルタで開催し、広範なステークホルダーと議論・共有した。
また、SAFスキームのSAPIの例としては、フィリピンの植林事業で中間段階での調査を行い、課題を整理しその結果をドナー、フィリピン政府、NGO、アカデミア等とのワークショップで議論し共有した。これを踏まえ現在新規植林事業の形成を行っている。これらの例からもわかるように、個別案件の中間評価・事後評価は継続的なプロセスの一部であり、新規案件に係るダイアログのもとにもなっている。
JBICでは年に1回案件棚卸しを実施しており、全てのオンゴーイング案件につき問題点があれば対処方針案を作成している。これを如何に改善していくかが課題ではあるものの、システムとしては中間評価に近いのではないかと考える。ただし、1件ずつ中間評価として実施するにはマンパワーの問題があり、容易ではない。
案件棚卸しは開発部が担当しており、事後・事前評価のように独立した部署が実施しているわけではないところ、今後は評価の重点を中間段階に移すような組織としての取組みが必要かもしれない。
評価は点ではなく線・面で行われるべきもの。JBIC内部で評価のフィードバックがプロジェクト・ライフの様々なポイントで行われていることは理解したが、常に評価を行いながら日常の本来業務に評価結果をフィードバックし活かしていくということを、職員がどれだけ意識しているかという点が重要。中間段階や事後段階の評価報告書はそういった日常業務の積み重ねが外に出る部分と、アカウンタビリティ確保のための第三者評価の結果や広報として必要な情報が外に出る部分があると考えればよい。

評価報告書(アンケート)/広報

(左から)三輪委員、牟田委員JBICは評価報告書に対するアンケートを700部送付しており、回答が来た20件については好意的な内容が多かったとのことであるが、回答数が少ないと言わざるを得ない。アンケート用紙を同封するのみでなく、電話を掛ける等、何らかの積極的な形で回収率を上げる必要がある。加えて、JBICが実施する他に、フィードバック委員が外の声を集めることも可能であると考える。委員が集めた意見をフィードバック委員会で発表するなど、委員会のあり方も含めて検討可能である。
他のドナーの場合、教訓等やフィードバックが如何に行われたかが明らかでないが、JBICの場合は評価報告書にまとめられており、報告書の質は近年格段に向上していると考える。今後は、援助活動における問題等の情報を被援助国やドナー間で共有するなどのharmonizationが重要であろう。
JBIC のODA活動については業務の性格上JICAと比較して一般の国民に見え難いので、HPの改善、タウンミーティングの開催等、国民へのアピールを拡大する余地はまだ十分にあると考える。
JICAの場合はアンケートを800部郵送するとともにHPに掲載し、80部程度回収したが、好意的な意見が多数であった。国民は、評価そのものよりもJICAの活動自体、評価の善し悪しよりも如何に評価をしているか、という点に関心があることがアンケートを通して分かった。
アンケートについては、回答していない人の意識も忘れてはならない。
UNDPでも評価活動と広報活動が別々に実施されているが、評価フィードバック活動にも広報のテクニック(メディアの活用、メッセージ性やイメージ等)を活かし、効果的に周知される様検討を行うべきであろう。
中間評価を実施している点は良いと思うが、外からは見え難いので、今後は実施していることを外部にも情報提供すべきである。また、大規模案件については、「目標達成に向け問題なく進捗している」といった内容を公表していく仕組みを作っても良いのではないか。

プロジェクト・レベルを越える評価/ミレニアム開発目標を意識した評価

現在ミレニアム開発目標(MDGs)と関連して、インドネシアでの道路や橋等のインフラ案件が妊産婦死亡率低下に貢献しているかについて、証明の試みとして、UNFPAとJBICで調査を行う計画を立てている。これまで人々が認識していた関連性をモデルを用いて検証したい。
以前の委員会でも発言したが、「MDGs達成のために日本のODAがどの程度貢献したのか」というような、ある国への日本のODA全体の評価が重要であると考える。MDGsは社会開発関連の目標が多いが、日本のODAによるインフラ整備などが、その目標達成につながったことをもっと積極的に示し、日本のODAの存在感を高めるべきである。MDGを国際社会で決められたからと受け身で捉えずに、積極的に捉えて日本のODAについて国際社会での理解がより深まるように活用することも必要ではないか。
国民が知りたいと考えているのは、個別案件の結果よりも全体としてどのように円借款が役に立っているかということであろうが、外部要因があり、分析が難しいところ、現段階ではそれに答えられていない。また、対象(経済全般、貧困層、日本の国益)によっても求めている説明は異なるであろう。
外部委員が指摘されたharmonizationやPRSPに如何に参画していくかという点は非常に興味深いものであった。特にサブサハラ地域に対しては、新規円借款の供与がないところ、貢献を示すことは難しいが、案件につながらなくとも知的支援活動は続けていくべきと考えており、今後は知的支援に対する評価も検討していくべきであろう。
実施方針にMDGsを如何に取り組むべきか否かが今後の検討課題として残されている。DFIDは既に目標値を定めているが、ドナー間で評価手法を統一する必要があるだろう。

海外経済協力業務実施方針評価

(開発業務部より、試行的に実施した海外経済協力業務実施方針中間評価の結果について報告)

ODA大綱の見直し、中期政策、国別援助計画の見直しといった一連の流れの中で、JBICの実施方針を位置づけでゆく必要があるのではないか。
評価の中間点の置き方に検討が必要なのではないか。
前回の実施方針に係る「第三者評価委員会」において、案件の質の問題は記述で補うべきとの指摘をいただいたことから対応をしている。

5.委員長総括

円借款評価について様々な視点からご意見をいただき感謝している。本委員会の外部委員については当初お願いをしていた任期は今回をもって満了となるが、JBICでは皆様からいただいた意見をしっかり受け止め、円借款のオペレーションに活かして行きたいと考える。

(以上)