2004年7月 第5回:議事概要
1. 日時 平成16年7月20日(火)14:30〜16:30
2. 場所 国際協力銀行8階A・B会議室
3. 出席者
(1)外部委員(敬称略、50音順)(議事概要での○印は外部委員のご発言) | ||
池上 清子 | 国連人口基金(UNFPA)東京事務所所長 | |
今田 克司 | CSOネットワーク共同事業責任者 | |
今松 英悦 | 毎日新聞社論説室論説委員(欠席) | |
高梨 寿 | 海外コンサルティング企業協会(ECFA)主席研究員 | |
谷崎 義治 | 三重県総合企画局政策企画分野評価システム特命担当監 | |
三輪 徳子 | 国際協力機構(JICA)企画・調整部事業評価グループ長 | |
牟田 博光 | 東京工業大学大学院社会理工学研究科教授 | |
弓削 昭子 | 国連開発計画(UNDP)駐日代表 | |
吉村 隆 | 日本経済団体連合会国際経済本部員(川口委員の代理出席) |
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(2)内部委員(議事概要での※印は内部委員の発言) | ||
武田 薫 | 専任審議役(委員長) | |
辻 一人 | プロジェクト開発部長(事務局長) | |
入柿 秀俊 | 総務部次長 | |
山田 順一 | 開発業務部次長 | |
青木 桂一 | 開発第1部次長 | |
中尾 誠 | 開発第2部総務班課長(代理出席) | |
廿枝 幹雄 | 開発第3部第2班課長(代理出席) | |
原 昌平 | 開発第4部総務班課長(代理出席) | |
松澤 猛男 | 開発セクター部次長 | |
北澤 正智 | 環境審査室次長 |
4.議事概要
武田委員長の挨拶、外部委員・内部委員の紹介に続き、事前に各委員に対し事務局より配付された資料に基づき、評価業務の改善に向けた取組み、フィードバック委員ご提案への対応状況、「事後評価業務評価」:提言とJBICアクション・プラン、及び海外経済協力業務実施方針・中間評価結果(平成15年度対象)(案)について、事務局より説明が行われた。その後、当日欠席された今松委員からのコメントの紹介に続き、主に以下の諸点について、出席委員より活発な発言・議論が行われた。
・MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)との関連
○ |
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※ | ご指摘の通りである。 |
・第三者性強化と内部評価システムの強化
○ | 「個別評価における第三者性強化」が進められている一方、過去のフィードバック委員会においてもJBIC内部の評価システムの重要性が指摘されている。第三者性強化とどのように整合性を取りながら内部の評価システムの強化を図っていく方針であるのか伺いたい。 |
※ | 第三者評価では、第三者の意見を尊重しつつも、内部とも十分議論を行い、合意に達しない場合はJBICの意見を併記する等、第三者評価者に任せてしまうのではなく、JBIC内部の評価システムと緊張関係を持たせることとしたい。 |
・人材育成実績の評価
○ | 海外経済協力業務実施方針に係る中間評価では「人材育成支援への取り組み」について「実績が計画を上回った」とのことだが、量的な実績に加え、いかに人材育成の効果があがったかを質的に示すべき。 |
※ | 海外経済協力業務実施方針に係る中間評価及び業務運営評価ではインプットの評価が中心となっている。ご指摘の通り、人材育成を含め、実際の結果としてどうであったか、オールジャパンあるいは円借款協力全体として効果はどうであったか、MDGsにどの程度貢献したか等、「施策レベル」でのアウトカムやインパクトの評価としてどう実施していくかは今後の課題。 |
・MDGsとの関連
○ | MDGsについて、2005年にはミレニアム宣言から5年後のレビューがサミット・レベルで行われるということで、各国が準備を進めている。日本は、MDGs達成に国別及び全体でどのように貢献したか国際社会から注目されており、最大限のアピールが求められている。円借款についても、どういう形でMDGs達成に貢献してきたのか、特に主要な供与国について貢献度を示すことは可能と思われるところ、2005年のレビューに向けて充分な準備を行っていくことが重要。 |
※ | MDGsへの貢献(特にアウトカムのレベル)を整理することは今後の課題である。 |
・外務省評価との関連
○ | 政策・施策レベルの「外務省による評価」にJBICの「事業レベルの評価」がどういう形で反映されているのか伺いたい。 |
※ | 現在、政策レベルは外務省、施策レベルは外務省とJBICの両者、事業レベルはJBICが評価を行っている。政策及び施策レベルの外務省の評価報告書についてもJBICはコメント等を通じインプットをしているが、事業レベルの評価はJBICによるものがそのまま使われている。 |
・受益者インタビュー
○ | 受益者インタビュー対象者の選択基準、実際の選定手続き、及びインタビューの実施方法については難しい面もあるが、どのように行っているのか、また如何にインタビュー対象者のバランスを確保しているのか。 |
※ | 事後評価の全事業を対象とした受益者調査はまだ始めたばかり。受益者調査については、審査前の案件形成の段階で必要に応じSAFスキーム等により現地の専門家やNGOに依頼してインタビューを行う等、入り口の段階に加えて、事後評価についてはテーマ別評価でより詳しく行う等、出口の段階でも工夫していきたい。 |
・平和構築
○ | 新ODA大綱の柱である「平和構築」は今後重要性を増すであろうが、JBICの取り組みを教えて頂きたい。 |
※ |
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・開かれた円借款業務
○ | 国民参加や広報の結果、本当に円借款に対する理解が深まったのか、あるいは、国民の支持が増えたのかという点について、どのように評価しているのか。 |
※ | 容易ではないが、今後の課題である。 |
・教訓・提言の横断的レビューの必要性(「事後評価業務評価」における提言2)
○ | JBICの評価結果をより役立つものにするためには、蓄積した評価結果をデータバンクと捉え、様々な角度から横断的にレビューし、円借款業務に役立つものに工夫していくべき。 |
※ | 世銀、USAID等の外国ドナーの個別事業は、欧米の大学でケース・スタディとして扱われ、テキストとして出版されている例も多い。円借款事例や事後評価結果についても、将来的に国内外の大学や研究機関で教材として活用してもらえればと思っている。 |
・JBIC内部の人材育成の必要性(「事後評価業務評価」における提言3)
○ | 外部の第三者が作成した評価報告書について、きちんとクオリティ・チェックができる内部スタッフを育成する必要がある。 |
※ | ご指摘の通りである。第三者に「丸投げ」するようではいけない。 |
・途上国のキャパシティ・ビルディングの必要性(「事後評価業務評価」における提言5)
○ | 途上国の評価能力を高め、途上国自身が評価に必要なデータ等を整理しておくことが、JBICの評価業務の充実に役立つこととなる。 |
※ | 途上国に円借款事業に関連するデータ整備をしてもらうだけでなく、各ドナーで別々のデータを求めることを避け、日本が優位性を有する統計データ整備能力を活かし、ガバナンスの改善に役立つような支援も必要と考える。 |
・一貫した評価の各段階でのメリハリ
○ | 「事業事前評価」では「妥当性」、「事業事後評価」では「事業目標の達成度(有効性)」、「事業事後モニタリング」では「インパクト」をより重点的に評価する等、DAC5項目の重点がそれぞれの検討段階で変わってくるという理解でよいか。 |
※ | ご指摘の通りである。他方、例えば、事後評価が事業計画時点から20年近くたっている案件もあり、変化の激しい開発途上国の経済社会の中で、事前のみならず、事後においても妥当性を見直す必要性はある。また、中間レビューでは、事前評価の段階で目標と設定した効果が、事業完成後どれだけ発生する見込みであるのか等について検討する必要がある。 |
・中間レビューの導入と事後モニタリングの充実
○ | 「中間レビュー」と「事後モニタリング」について、第三者性をどのように確保していくのか。 |
※ | 第三者や途上国を充分に巻き込んでいきたい。日常的な案件監理は海外事務所や開発各部が行うが、中間レビュー等では違った視点で補完していく。 |
・大学連携
○ | 大学と連携して評価テキストの作成に着手したとのことだが、途上国の大学と連携を行うのか、あるいは、国内の協力協定を締結した大学との連携なのか。 |
※ | 当面、日本の大学との連携を想定しているが、将来的には途上国の大学を含めた形に発展させたい。 |
・レーティング
○ | レーティングはアカウンタビリティの観点からわかりやすい一方、援助が必要な国とレーティングが良い国とは一致しないという面もある。レーティング方法はどのようなものか。 |
※ | 国毎にレーティングを行うのは困難だし誤解を招く。個別案件毎にDAC5項目に沿って、出来るだけ客観的・定量的に実施したい。試行を始めたばかりであり、レーティングの結果については次回報告させて頂く。 |
・効率的な評価
○ | 評価の質及び量の拡充という流れがある一方、独法となったJICAでは「効率的な評価」が課題となっている。JBICではどのように考えているか。 |
※ | 評価の質及び量を充実しつつ、効率的に行うのはなかなか難しい課題であるが、JICAを見習っていきたい。 |
・民間セクターとのレッスンの共有
○ | コンサルタント、コントラクターといった民間セクターに対しても、評価によるレッスンの共有やフィードバックのメカニズムを考えて頂きたい。 |
※ | 評価結果を当行のホームページに掲載することに加え、わかりやすい形での民間セクターへのフィードバックの可能性についても検討したい。 |
・「卒業に近い国」に対する考え方
○ | ODA対象からの卒業に近い中進国についてJBICの方針を説明願いたい。 |
※ | 中進国については、本年度より環境や人材育成事業に加え、貧困削減に資するインフラについて支援を行うことができるようになった。国全体に裨益するような大規模インフラへの支援は必要性が高くない段階に達していても、貧困削減に直接裨益する支援は引き続き必要な国も多くあり、ニーズに応じて円借款を供与・実施していく。 |
・円借款スキームと新たな商品開発
○ | 評価作業を踏まえて円借款の現行スキームの妥当性を検討し、新たな円借款協力の形態(無利子借款、無償との混合借款等)を開発することが必要ではないか。 |
※ | 当面は、外務省の無償資金協力やJICAの技術協力との連携、国際機関との連携を更に強化することを通じて援助効果を高めていきたい。 |
・事業事前評価の一層の充実
○ | なぜ、その国で、その事業に対する支援が必要なのか、体系的に整理し、事業事前評価の段階からわかりやすい形で説明を行うべき。 |
※ |
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・フィードバック委員会のあり方
○ | 本委員会は年2回、限られた時間内での開催であり、踏み込んだ議論を行うことが難しい。例えば、「事後評価業務評価」については、もう少し早く議論を行う場があってもよかったのではないか。また、「事後評価業務評価」のJBICアクション・プランについては、「検討中」あるいは「対応済」との説明であるが、具体的にどの程度まで達成できたか、対応にあたって何が難しかったか等が分かりにくい。 |
※ | 前者については、牟田委員のご尽力で本日の委員会にようやく間に合ったもの。後者については「検討中」とあるのは実行するか否か検討中という意味で、「対応済」とあるのはこれから実行するとうい意味。結果は次回ご報告したい。 |
○ | 平成16年度改定予定の新実施方針について、フィードバック委員会等外部をどのように巻き込んで策定していく予定か。 |
※ | 本年9月末までの実績をもってこの2年半の業務実績について評価を行い、その結果に基づき、新実施方針のドラフティングを行なう。その後、別途外部委員の方々に見て頂き、パブリックコメントも求めることになる。かかる手続きを踏むと新実施方針につき外務大臣の承認を得るのは来年3月末になろう。 |
・大学連携
○ | カリキュラム作成に着手したとのことだが、内容及び活用方法について説明願いたい。 |
※ | 評価方法論やケース・マテリアル作成について、大学と交渉を行っており、再来年度に講座を立ち上げることを想定している。対象者は、開発問題に係わる人々や留学生であるが、英訳して開発途上国の大学でもコースを立ち上げる等発展させたい。成功例や失敗例が途上国のガバナンス改善につながればと考える。 |
・ドナー連携
○ | MDGsへの貢献や円借款協力の妥当性の観点から、他国援助機関や国際機関とのパートナーシップをどのように進めようとしているのか。 |
※ | 世銀、国連等との連携は当然であるが、援助として有償資金協力を行っているフランスやドイツの援助機関と業務協力協定を結んでおり、今後とも連携を強化していく。 |
・レーティング
○ | レーティングを導入した結果はどうであったか、実施してみて大変だった点等につき説明願いたい。 |
※ | 次回報告させて頂くが、主観的裁量の余地が少なくなるよう工夫しているところ。 |
・JBICの「事業レベル」評価と「外務省による評価」の関係
○ | JBICによる「事業レベル」の評価だけではなく、「施策レベル」の評価も、外務省による評価に反映させるべきではないか。 |
※ | ご指摘の通りである。 |
5.委員長総括
委員の方から多岐に亘るご意見、ご質問を頂戴し厚く御礼申し上げる。時間が限られているため、この場で全てについて議論を尽すことは出来なかったが、本日の議論をJBICの円借款業務・評価業務に十分反映させていきたい。
以上
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