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第9回議事概要

2006年7月 第9回:議事概要

1.日時 平成18年7月26日(水)14:00〜16:00

2.場所 国際協力銀行 8階会議室AB

3.議題 2005年度事業評価結果及び2006年度事業評価計画

4.出席者

(1) 外部委員(敬称略、50音順)(議事概要での○印は外部委員の発言)
池上 清子 国連人口基金(UNFPA)東京事務所所長
今松 英悦 毎日新聞社論説室論説委員
澤田 康幸 東京大学大学院 経済学研究科 助教授
高橋 清貴 特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
調査研究・政策提言担当/恵泉女学園大学人間社会学部 国際社会学科助教授
田中 秀和 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部国際部長
林 寛爾 日本経済団体連合会
国際第二本部アジアグループ長兼国際協力グループ長
三竹 育男 横浜市水道局浄水部西谷浄水場課長補佐
三輪 徳子 国際協力機構(JICA)企画・調整部事業評価グループ長
牟田 博光 東京工業大学大学院 社会理工学研究科長
弓削 昭子 国連開発計画(UNDP)駐日代表(欠席)

(2)

内部委員(議事概要での※印は内部委員の発言)
荒川 博人 専任審議役(委員長)
入柿 秀俊 プロジェクト開発部長(事務局長)
内田 勤 総務部次長
廿枝 幹雄 開発業務部企画課長(代理出席)
鴫谷 哲 開発第1部2班課長(代理出席)
北野 尚宏 開発第2部次長
澤井 克紀 開発第3部次長
原 昌平 開発第4部2班課長(代理出席)
青木 桂一 開発セクター部次長
大竹 智治 環境審査室第2班課長(代理出席)

(3)

事務局
古賀 隆太郎 プロジェクト開発部開発事業評価室長
和田 義郎 プロジェクト開発部課長(評価企画班及び事後評価班)

5.議事概要

 荒川委員長の挨拶、外部委員及び内部委員の紹介に続き、2005年度事業評価結果及び2006年度事業評価計画について事務局より説明が行われた。主な意見、質疑応答は以下の通り。

(1) 評価体制・手法拡充
過去の評価結果に基づくレーティング
「過去の評価結果に基づくレーティング」は、今後のレーティング制度のあり方に反映されていくものであり、その結果に期待している。
「過去の評価結果に基づくレーティング」を今後の業務にどのように反映させていく予定であるか。
現在世界銀行にて作成されている国別援助戦略(CAS;Country Assistance Strategy)では、result based CASといった形で、5年後の成果目標を計画段階で掲げている。日本政府の「骨太の方針」においても、ODAにおける成果重視という方向が強く打ち出されており、本行としても「過去の評価結果に基づくレーティング」の結果を踏まえ、今後策定される国別実施方針において成果目標等を盛り込むことも検討に値しよう。また、過去レーティングによると、幾つかの案件において過去に犯した失敗を繰り返しているものもある。本行にて実施される支援内容を改善していくためには、業務のパフォーマンス評価を行うことが必要であり、過去レーティングにはそのような効果もある。
レーティング手法
効率性のレーティングでは、アウトプットは参考扱いとの説明があったが、昨今の成果主義の議論を踏まえると、アウトプットは考慮していく必要があり、それにより成果主義へのアプローチといったことも進めやすくなる。
事後評価では、アウトプットにより導き出されたアウトカムを有効性・インパクトで可能な限り定量的に分析しているが、事後評価でインパクトをより一層定量的に把握するためには事前評価でのインパクトの測定が重要。受益者調査リファレンスを整備する等、事前評価の充実を図っていきたい。
ADB、世界銀行等マルチのドナーのレーティング制度に基づき、JBICの事後評価案件のレーティングをふり直し、レーティング制度のcomparabilityを評価するといったことが必要。
他ドナーの制度との比較は重要であり、ウェイト付け等評価基準の比較や世銀の基準でレーティングすると結果に差がでるのか等を検討していきたい。
事前評価の段階で、受益者が700人と想定されていたところ、1000人に水増しするといったことはないか。また、この対象国であれば、レーティングはAとして問題ないのではないか等、恣意的に評価がなされる可能性がないか。また、各評価専門家にて付与されるレーティングで評価者によって評価にばらつきがでることはないか。
基本的に、一つのセクター・国で一人の評価専門家が評価業務を実施しており、基本的には恣意的な評価はできないが、より評価基準を客観的なものとすることにより、どの評価専門家が評価を実施したとしても同一のレーティングとなるよう制度改善をしていく必要がある。
その他
一般財政支援は、被援助国において実施されるプログラムを現地政府等と共に検討していく必要があり、評価においても連携が必要。一般財政支援の合同評価について、JBICとして今後どういった形で評価を実施していこうと考えているのか。
一般財政支援の評価手法については、OECD-DACのPOVNET等における議論を踏まえ、日本の独自性も打ち出しつつ引き続き手法の検討を進めていきたい。
大学等を活用した多面的な評価業務は今後も進めるべき。また、大学等の知見を活かし、事前評価の段階においても分析を行うことにより、果たして現地住民が裨益するのかといった点を把握することが重要。
事後評価を進めていると、事前段階の分析がどのようになされたのかを把握するのが困難であり、事後評価が十分にできないといったものもある。こうした事態を回避するべく、事前評価段階のデータ整備等も検討していく予定。
妥当性の低い案件が出てこないよう、案件形成段階における事前評価を充実すべき。またレーティングがDとなった案件のフォローを積極的に進めるべき。
策定された計画値が妥当なものでなかった場合には、計画値の妥当性を分析した上で、計画値を調整することが必要。
ツーステップローン(TSL)、一般財政支援(GBS)、セクターローン、商品借款等ノンプロ案件の評価をどのように実施するか検討が必要。TSLについては、インパクト・持続性を検討する上で、サブプロジェクトからの回収状況を詳細にわたって分析していくことが特に重要である。
妥当性の評価は、現状はODA大綱、先方政府の開発計画等との妥当性を確認するものであり、妥当性があるのは当然となっている。それでなければ要請されず、採択されない。また、過去レーティングの結果、妥当性が低い案件がほとんどなかったということは、妥当性分析のための基準に弁別機能がなく、意味のないものになっているのではないか。今後、案件のデザインの妥当性等新しい基準を盛り込み妥当性を分析する必要がある。
(2) ODA改革
ODA改革の議論を踏まえて、有償、無償、技協の評価方法のフォーミュラを統一させていく必要があり、ひいては国民の声にも対応することとなる。JBICにそのリーダー的役割を期待したい。
JICAとJBICとの間で評価の力点が異なる。ODA改革の議論を踏まえて、評価制度を統合していく際には、どういった視点から評価制度を構築していくか検討が必要である。
JBICとしては、統合後における評価制度をより充実したものにするべく、無償、技協の関係機関との協議を行っていきたい。一方、有償・無償・技協というモダリティが、外務省にて策定される国別援助計画を共有していないという問題がある。今後、国別援助計画の策定・評価を踏まえて、どのように支援フレームワークを策定していくかを検討することが重要。
(3) インパクト評価の充実
OECD‐DAC評価部会では、社会開発関連の案件で受益者の存在が抜け落ちた形で評価が実施され、評価結果が相応に高いものになっているものの、裨益対象者数といった観点からは当初予定よりも低いというevaluation gapの問題が議論されている。こうした議論に対応すべく、より精緻なインパクト評価を実施しようとしているJBICの試み及びその結果の外部発信には期待している。
(4) 国内外への広報
今までは、世界銀行調査局にて行われているようなアカデミックなインパクト評価は、マルチのドナーからバイのドナーに対して手法紹介等がなされていたが、JBICのインパクト評価について、JBICのようなバイのドナーからマルチのドナーに対して、評価手法のインプットを行うことは、新たな試みであり、是非こうした活動を広報活動の一環として取り組んで頂きたい。
市民感覚の分かりやすさを意識した広報が重要。評価報告書2006の作成にあたっては、地図等のみならず、ODA支援制度をより分かりやすく説明することに加えて、一般国民の馴染みのあるODAによって敷設された設備から供与されるサービスが幾らといった形で単価比較を行うことも一つの方法である。
(5) 被援助国のオーナーシップ及びキャパシティビルディング
現在の途上国支援における国際的潮流とされているharmonization/ alignment/ownershipを事後評価の妥当性分析などにおいてどのように反映していくのか。
現地実施機関のownershipを醸成させるためには、先方政府における評価システム等を改善していく必要がある。これに対応すべく、現在実施している合同評価等を積極的に行っていくことにより先方政府のキャパシティビルディングを行うと共に、評価結果から抽出された教訓・提言を今後の支援方針策定、更には現地実施機関等にフィードバックさせていく必要がある。
外務省等では、評価業務を現場に落とすべく、現地タスクフォース等の検討がなされていると聞いているが、JBICではこうした流れに対して、どのように対応していく予定であるか。
より現地サイドに業務をシフトしていくという強い国民の声があることについて認識をしているが、本行としては、自分の国で自国にて実施された案件を評価するということが最も望ましく、それがマラケシュ宣言の流れをくんだものであると考える。しかしながら、現時点での途上国の評価体制は、未だキャパシティビルディングが十分でなく、本行を含む援助機関が評価を実施せざるを得ない状況。こうした状況を改善すべく、本行にて実施されている合同評価等を活用していく必要がある。

以上