事業評価外部有識者委員会(2010年9月)の概要

1.日時:

平成22年9月16日(木) 14時00分〜16時00分

2.場所:

独立行政法人国際協力機構(JICA) 本部113会議室

3.出席者:

浅沼委員長、朽木委員長代理、澤田委員、高梨委員、中田委員、野坂委員、本間委員、村田委員、山谷委員、横尾委員、およびJICA関係者(黒田理事、評価部、その他関係部門)。なお、外務省がオブザーバーとして参加。

4.議事概要:

委員会の発足・開催にあたり、冒頭、JICA黒田理事より挨拶がなされた。

(1)委員自己紹介および委員長、委員長代理の選任について

各委員の自己紹介に続き、委員の互選により浅沼委員が委員長に選任された。また、浅沼委員長により朽木委員が委員長代理に指名された。

(2)JICA事業評価の現状と課題ならびにJICA事業評価制度改善への取組みについて

事務局より、事業評価の現状と課題について資料1に基づき説明を行った。さらに、JICA事業制度改善について3つの論点(評価の質、フィードバック、アカウンタビリティ)に基づき事務局より現状・取組み課題を説明のうえ、各委員からご意見や問題提起があった。

各委員の主な意見、提言は以下のとおりである。

1)評価の質の向上

  • それぞれのODA実施環境や目的には時間差があり、後で条件が変化した際に現在の基準でそれを評価してしまうのは良くない。ブラックボックスのような条件について予測可能であったかどうかを後から追求するのではなく、そういった条件をコントロールするためにJICAがツールを有しているかを検証することが重要である。
  • 技術協力、マイクロクレジット、ローンなど支援形態が異なる場合に、同一の手法で評価はできないだろう。
  • 簡易評価を内部で選択的に行う場合に、どのように内部人材を育て、評価基準と手法についてシンプルなものを確立するかという辺りからスタートするのが現実的だろう。
  • 評価人材のマンパワー不足について、JICA職員、専門家、コンサルタント、そして相手国政府など、評価キャパシティを全体的に身につけてもらい、また、質の高い外部評価者を日本だけでなく海外からも入れていくということも考えられる。
  • 開発分野に新しい評価人材がなかなか入ってこないが、契約手続をより簡素化したり、案件を束ねて類似案件・類似地域については大型化してまとめた形で発注したりして、新たな人材が入ってくる魅力あるものにする必要がある。
  • 従来の評価手法が妥当しない場合、今までどおりの形式的な評価ではなく、より質の高い、新しい評価手法を研究することに時間やお金をかけて良い。
  • 開発事業は一定の割合で成果と課題があることが当然であるという、打率のような考えを前提とした評価を行うことが重要である。
  • 予算とワークロードの関係について、「評価戦略」のようなものを作成し、簡易評価と詳細評価の適応基準を再考すると良い。
  • 評価の質の向上に関し、すべてを同じように行うのではなく、選択と集中が必要である。評価の対象とする協力金額基準の再検討とともに、途上国の全体計画やプログラム、実施エージェンシーを評価することや、セクターやプロジェクトのタイプでまとめて評価することも検討しうる。
  • 今までの学会などの成果として様々なサーベイや論文が公開されているので、JICA研究所や外部者の協力も得て、その研究結果を取り入れると良い。
  • 日本で遠隔マネジメントすることによって、海外の研究機関やシンクタンク等の評価人材を活用すると良い。
  • 評価者の行う評価に対し、プロジェクト実施者が意見できる制度を取り入れてもらいたい。

2)フィードバックの強化

  • プロジェクトのモニタリングや中間評価でずれが出てきたときに修正可能なところはどんどん修正していくべきである。
  • プロジェクト立案において、過去のプロジェクトの教訓はとても重要な要素であり、教訓がよく活用されるかがその成否を決めるため、教訓の参照を義務付ける仕組みがあるとよい。
  • フィードバックの強化に関して、フェーズ1からフェーズ2に移行するタイミングで、ある程度厳密な評価がきちんと反映されるような仕組みが必要であると思う。

3)アカウンタビリティの確保

  • フィードバックの強化のために評価を検討するということと、アカウンタビリティ確保のために評価を考える仕組みを検討するということには方向性のずれがあり、整理が必要である。
  • アカウンタビリティについて、案件の成否に誰が責任を持つかということを考えることでフィードバックの方向性が大分変わる。
  • 同じ予算で評価案件数が倍増しており、評価の質の低下が非常に懸念されるが、評価の質の維持があってこそのアカウンタビリティである。
  • 評価の報告書は、一方では一般の人に分かりやすいようにすることと、他方、専門家向けにしっかりしたものを作るということを、どこかで仕分けなければならないのではないか。
  • コンプライアンスを逃げ道に使わずに決断することが大事である。コンプライアンスの悪い面も評価の考えの中に入れるべきである。
  • 裨益者自らが自分たちの評価を行うベネフィシャリーエバリュエーションというものがあり、自分たちが評価したものを対外公表するということを進めていくべきである。そのうえで、外部評価を2次評価として行うのが良いのではないか。
  • アカウンタビリティをオーナーシップという観点からきちんと詰めていかないと、グレーゾーン多くあいまいになる。
  • 評価の定量化について、プロジェクトは多元的な影響を受けるため、評価は総合的に勘案しないと、ベネフィシャリーの像が歪んでみえてしまう。

5.次回会合

JICAより、以下の通り次回会合の予定を説明した。

  • 次回会合は今年12月頃に開催し、現在取りまとめ中の事後評価結果の概略ならびに事業評価年次報告書のドラフトについて提示したい。
  • 本日ご議論いただいた事業評価の改善策については、既にJICAとしても現状に基づき検討を始めているところである。次回会合では各委員からのご指摘内容を踏まえた案をJICAより提示のうえ、更なるご助言を頂戴したい。

以上