事業評価外部有識者委員会(2012年8月)の概要

1.日時

平成24年8月7日(火)13時30分〜16時00分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA) 本部 役員特別会議室

3.出席者

浅沼委員長、朽木委員長代理、澤田委員、高梨委員、野坂委員、平林委員、本間委員、山谷委員、横尾委員、及びJICA関係者(渡邉理事、評価部、人間開発部、その他関係部門)。

4.議事概要

委員会の開催にあたり、冒頭、JICA渡邉理事より挨拶。その後、浅沼委員長及び朽木委員長代理により議事進行。

(1)事業評価にかかる問題認識とJICAの取組状況について

事務局より、第1回の委員会で提起した事業評価の「評価の質の向上」、「フィードバックの強化」、「アカウンタビリティ確保」の3つの課題に関し、「これまでの委員会における主要な議論・検討内容の再確認、及びJICAの取り組み状況(結果や現状)を総括するとともに、継続検討中の事項について説明した。委員との意見交換の概要は以下のとおり。

総論

  • 2年前の問題意識から始まり、現在までの取り組みをまとめて見ると、多くの面で動きがあり大いに評価できる。
  • 個別事業の事前から事後までの評価の仕組みは確立してきたが、今後は、JICA全体としての制度や仕組みの見直しにも貢献していくことが求められる。

「評価の質の向上」について

  • 『新JICA事業評価ガイドライン』が策定されたほか、方法論的な確立やマニュアル作成は達成したので、今後はそれを実施し、実際の評価の質を向上していく必要がある。
  • 現地事務所が内部評価に積極的に関わることは非常に重要。実際に事業を実施し、様々な情報を有しているとともに、カウンターパートと密接な関係にあることから効果的な事業評価の実施が可能となると考える。他方、事務所のリソースが限られている中、対象案件の選定等について制度を如何に改善していくかが引き続き重要な課題。

「アカウンタビリティ確保」について

  • これまでは、アカウンタビリティ確保の観点から評価を如何に行っていくのかが議論の中心にあったが、かかる体制が構築・整備されてきた今回は、如何に評価結果を活用し、事業そのものを改善するかという前向きな部分に重点が移ってきた。

「フィードバックの強化」について

  • 事業部との連携を更に強化し、プロジェクトの良い点、悪い点、検討すべき点をフィードバックするという好循環に結び付けていくべき。
  • フィードバックを検討するにあたっては、個々のプロジェクトレベルに留まらず、JICA内部の案件形成・監理上の問題等の原因を把握し、JICAがそれらに如何に対応していくかという「マネジメントレスポンス」を構築の上、次の案件形成、ひいてはJICA全体の業務改善に貢献していく必要がある。

その他

  • 評価を行う際には、相手国全体に対するインパクト、方向性、マクロ経済との整合性、効果を見ることが重要である。
  • 評価結果をフィードバックして次のプロジェクトに活かすという視点と、外部あるいは国に対してアカウンタビリティを確保することは異なるので、位置づけを整理して事業評価に取り組んでいくことが重要である。

(2)事業部門による評価結果の活用について

事務局より「基礎教育協力の評価ハンドブック」(人間開発部による取り組み例)に関する説明を行い、以下のとおり各委員から意見や助言、提言があった(なお、本ハンドブックは、客観的に成果を示すことを目的とし、案件の各段階における留意点及び改善策、具体的な案件の類型ごとのロジックモデル、標準的に使用すべき指標等をまとめたもの)。

  • 全体的に非常によくまとめられている。中身の洗練度も高く、学術的にも完成度が高い内容であることを評価する。本ハンドブックがさらに教育分野での日本のODAのモデル・オブ・モデルとして、発展していくことを期待したい。また今後は、教育以外の分野における汎用性を高めるべく、共通項を見出していって欲しい。
  • 本ハンドブックを活用することにより、新しくプロジェクトを立ち上げる際にもフィードバックの視点を意識することが可能となる。
  • 日本の技術協力プロジェクトは、成果が数値に表れないところに意義もあり、人と人が面と向かい合って、互いに考えながら進めていくという点に価値があるのも事実。他方、それが故に、ある意味では統一感がないという問題は否めないため、成果指標を標準化しようという本アプローチは評価したい。
  • 技術協力プロジェクトと成果重視の考え方を結びつける方策として、プロジェクト関係者全員でそのプロジェクトの結果がどういうものかを共有し、その共通の目標に向かって取り組んでいくという「Result Based Management」が有効と考えられる。
  • 他方、本ハンドブックは、難易度が高くボリュームも多いので、活用度をさらに高めるべく分かりやすさの観点で改善の余地がある。また、本ハンドブックどおりに評価することが目的化すること、過度のマイクロマネージメントが行われることがないよう留意が必要。

(3)その他、情報共有

事務局より、1)平成24年度外務省行政事業レビュー(無償資金協力)の結果概要、2)本年度公開予定の事後評価、3)テーマ別評価、等に関する報告を行った。

委員からは、「評価の役割は評価をすることが目的ではなく、次の成果に繋げていくことが肝要」、「評価件数を増やすために評価予算等の投入を増やすよりは、評価の手法を改善していくべき」、等の意見があった。

以上