事業評価外部有識者委員会(2013年1月)の概要

1.日時

平成25年1月21日(月)14時00分から17時00分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA) 本部 役員特別会議室

3.出席者

浅沼委員長、朽木委員長代理、高梨委員、野坂委員、平林委員、本間委員、山谷委員、横尾委員、及びJICA関係者(渡邉理事、評価部、その他関係部門)。

4.議事概要

委員会の開催にあたり、冒頭、JICA渡邉理事より挨拶。その後、浅沼委員長により議事進行。

(1)開発効果向上に向けた事業計画改善への取り組み〜開発課題体系の把握と評価指標〜

無償資金協力に関し、協力の効果を「客観的」かつ「定量的」に分かりやすく示すため、代表的な開発課題6分野における標準的な運用・効果指標の参考例を整理した。評価部より本取り組みについて説明し、以下のとおり委員から意見や助言をいただいた。

本指標例は、開発課題の中から目的を設定し、その目的達成のための最適な手段を選び、その中からプログラムを策定し、プロジェクトを形成、実施するという流れを示したもの。目的、手段という政策の基本的な枠組みの中で、論理的に問題への対応方法を再考するのは非常に有益である。

指標の設定やデータの入手方法についての本指標例のユーザー向けガイディングの充実が必要。また、指標の設定、データの入手及びボトルネック・アナリシスを検討する場合は、相手側組織の能力強化を図るべく必ず協力相手側と一緒に行うべき。これにより事業の持続性の確保にも繋がる。

これまで未整備であった無償資金協力においてわかりやすい指標が整理されたと評価する。他方、運用、効果、基本、補助などの定義や使用方法につきJICA職員及び関係者間に周知徹底すべき。

今回の指標例の作成を踏まえ、JICAが実施する事業の位置づけを課題に対し、明確化することになった。そのような意識をJICA職員一人一人が積み上げていく必要がある。また、単に数値を埋めるだけではなく、数値の相関関係を見ながら、課題全体から個々の事業を見ることを職員により意識づけるための人材育成も重要。

プログラムアプローチの観点も踏まえ、指標例にある課題体系も一定期間ごとに見直し、柔軟に変更することが重要。国別の開発課題についても記載したほうが良い。

本指標例に取り上げられている事例は、どちらかと言えばエンジニアリング的な視点から作られた指標が多い。他にも料金体系に関する指標等も重要であり、これはさらに遡ればいかに対象セクターを組織化するかといった問題にも繋がる。

本指標例は、計画段階と実施現場の融合を図る一つの手段になるのではないか。

無償資金協力のプロジェクトはうまく整理されたが、所期の目標である開発課題を解決するレベルまで達成したかどうかが測れるのかどうかについて疑問が残る。つまり、無償資金協力のみのハードの協力は、中間目標やサブ目標以上のレベルまでは達成できない限界やリスクがあり、これをどのように整理するかが今後の課題。

(2)テーマ別評価、事後評価の結果概要

評価部より、今般実施した事後評価の結果概要並びにテーマ別評価に関する報告を行った。委員との意見交換の概要は以下の通り。

1)テーマ別評価:「技術協力プロジェクトにおけるベースライン調査の現状分析」、「地方電化の社会経済的効果指標の考察」

公共資金を用いた開発支援に近年特に求められてきた点は3つある。一点目は透明性、二点目は実施主体だけではなく相手側組織も含めた説明責任、三点目はコストに見合う価値があるかどうかである。このような環境の下、今回のJICAの取り組みは非常に機を得ている。

案件形成時における短期の事前調査では全てを把握し計画することは難しい。従って、プロジェクト開始後一か月以内に改めて現地カウンターパートとともにプロジェクトデザインをレビューし、必要あれば変更する、という柔軟な手順の導入が必要。

ベースライン調査を実施しないとプロジェクト形成は困難である。一方で、全てに厳格に適応するといった細かい指針を出すと、現場や途上国政府の担当者レベルで混乱することになるので、その点は現実的見極めが必要であろう。

地方電化は都市部に比べ必要な経費は大きい。電力事業体の財務を圧迫するものになるので、政策として推進するのであれば別勘定にするといった検討も重要。

対象国、地域の視点や、日本の成長戦略との関連性も踏まえ、地方電化事業を日本としてどのような戦略を持って実施するか、という点が重要。

2)2011年度事後評価の結果概要

評価部より「2011年度事後評価の概要」に関する説明を行い、以下のとおり各委員から意見や助言、提言があった。

計画時や実施期間中にもプロジェクト完了後の姿に留意した方策を整えるべき、という教訓はもっともであるが、現実には協力を必要とする相手方カウンターパートほど、開始時点ではこちらの想定以上に能力が低い場合も多く、非常に難しい課題である。

テーマ別評価「ベースライン調査」や今回の事後評価結果においても、計画段階が重要であるという点は既に共通の認識である。3スキームによる連携も視野に置いた上で、計画段階でしっかりとした事業計画を立てることが重要である。

持続性を担保する方法として、相手国政府に事業を自分達の政策として継続実施させることが重要である。しかしながら、プロジェクトレベルでの対応は難しいため、戦略的に国を選んだ上で、そのような政策分析や研究を在外事務所やJICA研究所等が取り組むと良い。

妥当性の評価判断について、より詳細な分析が必要。効率性については経済性も含めて考えると良い。また、事後評価で用いているDACの5つの評価項目は、一つ一つ独立したものではなく構造的にリンクしていることを理解すべき。

毎年同じようなものが教訓としてどうしても出てきてしまうが、事業評価によって得られた提言や教訓などの結果を、事業部門での案件形成段階にいかに活用、反映させるかという点に、踏み込んでいくべき。

以上