事業評価外部有識者委員会(2013年8月)の概要

1.日時

平成25年8月9日(金)14時00分から16時45分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA)本部 役員特別会議室

3.出席者

浅沼委員長、朽木委員長代理、澤田委員、高梨委員、中田委員、野坂委員、平林委員、本間委員、横尾委員およびJICA関係者(渡邉理事、評価部、その他関係部門)。

4.議事概要

委員会の開催にあたり、冒頭、JICA渡邉理事より挨拶。その後、浅沼委員長により議事進行。

(1)PDCAサイクルにおける教訓活用マネジメントの強化策

今年度のテーマ別評価として、PDCAサイクルに教訓が確実にフィードバックされる業務フローの検討および開発課題別の代表的指標・教訓レファレンス、分野横断的な事業リスクの整理を実施中である。評価部より本取り組みについて説明し、委員から以下のとおり意見や助言をいただいた。

  • 取り組み自体は、非常に良いことである。一方で本当に使えるような教訓を抽出するためにはかなりのエネルギーを割くことになろう。日常的な業務の中で得られる教訓をフィードバックし、プロセスを見直して次に引き継ぐ作業こそが重要である。
  • 教訓は相手国や他者に期待するような内容ではなく、JICAの裁量の範囲で対応できる内容にするべきである。
  • 教訓のみを並べた場合、それに対し誰もレスポンスせず、アカウンタブルでなくなる可能性はないか。マネジメントとして教訓が深刻なのか、深刻ならばそれにレスポンスする必要があるのか、そのレスポンスをするのは誰なのかということを、PDCAサイクルのマネジメントとして取り入れていくことは有効である。
  • 本システムをよりユーザー・フレンドリーなものにするためにも、何らかのインセンティブをつけるような方法も検討可能ではないか。特に、失敗事例の活用についてもよりインセンティブをつけるようなメカニズム、さらには、トップレベルからのコミットメントが必要である。
  • 事業リスクの管理は、今後JICAにとっても最も重要な事項となるだろう。リスクがもたらす負のインパクトにいかに対処していくかという考え方からすると、この成果品は非常に可能性があるのではないか。
  • 新規に案件を形成する際に、過去の教訓から学んだということが記録として残るような仕組みを持つべきである。そのためには、プロセスの記録が重要になってくる。例えば先方の予算措置について、誰が、いつ、どこで、誰と議論して決まったのかということが追跡できるような仕組みを持つべき。
  • 教訓の活用と言うのであれば、在外事務所でプロジェクト形成に携わっている企画調査員等に直接アプローチをするべきではないか。例えば、過去の多様な事例を用いて問題を議論するようなセミナーなどは、1つの代替策となるのではないか。

(2)「新JICA事業評価ガイドライン」の改訂

評価部より、今般改訂を検討している事業評価ガイドラインの骨子(案)について説明を行った。それに基づき、委員から以下のとおり意見や助言をいただいた。

  • 本ガイドラインが一般公開されることを考えると、「事業評価とは何か」と言った説明がないとわかりにくい。また、計画時、実施中、完了後など異なる場面で事業評価があるということを前提に書かれているが、各段階においてどのような考え方で評価を実施するのかを記載するべきである。
  • 評価を行うことによる期待は、開発効果をより大きくする、最大化することであろう。開発効果とは何か、どういうものを目指すのかという根源的なところについても本ガイドライン内で何からかのニュアンスが出せればよい。
  • 事業評価の目的として「アカウンタビリティ」と「事業改善」を挙げているが、最も重要なのはLessons Learned、いわゆる事例を共有していくことである。事例の共有は外部に対するレポーティングという側面も入る。アカウンタビリティ、事業改善、Lessons Learned、それから外部に対するレポーティング、これらの4つが事業評価の目的であり、それが柱であると述べた方がよいのではないか。
  • アカウンタビリティには、国民や納税者に対するアカウンタビリティも含んでいると思われるが、このガイドラインの柱からはその点がわかりにくい。
    途上国と日本がともに歩むとことが、間接的に国益に繋ながる1つの外交ツールだということがわかるような表現が目的に入っていてもいいのではないか。
  • 本ガイドラインは、事業評価のガイドラインであるべきだが、事業実施のガイドラインと評価のガイドラインが混在していると思われるので、少し整理したほうがよい。書かれていることは非常にすばらしいことで、ぜひこれを実施してほしい。
  • 日本では評価という言葉が、プランニングとレビュー、エバリュエーションと混同されて使われている。また、あらゆる段階において「評価」という言葉が使われており、そのため誰が評価をするのか、その評価に基づいて誰が判断をし、責任を取り、アクションを取るのかがわからなくなっている。JICA事業には事業主体の責任があることからも、評価部のやることは何かを明確にするべき。

(3)報告事項、その他

評価部より、1)技術協力プロジェクトの工程簡素化と事業管理・評価方法の改善について、2)テーマ別評価、等に関する報告を行った。

委員からは、「現行のJICAの体制で、全体をモニタリングするというのは難しいのではないか」、「適切なモニタリングは簡単ではないものの、相手国政府のキャパシティ・ビルディングを図るための有効な機会であると考えるべき」、「簡素化かつ効率化の実施により、予算の削減が可能。その予算を現地リソースの活用に充ててはどうか」、等の意見があった。

以上