事業評価外部有識者委員会(2017年1月)の概要

1.日時

2017年1月24日(火)14時00分〜16時15分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA)本部 会議室

3.出席者

高橋委員長、朽木委員長代理、澤田委員、高梨委員、中田委員、野坂委員、本間委員、森田委員

4.議事概要

JICA前田理事より開会挨拶の後、今期委員委嘱期間(2016年9月〜2018年9月)の初回会合につき、高橋委員長が委員により互選、朽木委員が委員長代理に指名された。今回は2議題に関し議論が行われ、主な助言、提言、意見はつぎのとおり。

(1)(議題1)「事業評価年次報告書2016」案について

国民への説明責任に関するもの

  • 「事業評価年次報告書2016」案は全体的にわかりやすく構成されている。援助関係用語を簡潔に表現する等、援助関係者以外にもわかりやすい記載となってきているが、今後もこの継続を期待したい。
  • 外部評価案件の事例紹介について、施設建設などハード面の協力を中心とした事業だけでなく、技術協力などソフト面の協力にも力を入れていることが伝わる案件選定になっている点はよい。
  • これまで委員が継続的に指摘してきた対外情報発信(学会、大学、セミナー等)に努めている様子がうかがえる。一層の発信を期待する。

事後評価結果の分析と学び、教訓活用に関するもの

  • 個別事業の説明責任として、個別事業の効果を指標で計測することは良いことである。その次のステップとして、その事業が国や地域全体にどういう影響を与えたのかなど、マクロ的な事業効果をどうやって評価していくかも重要ではないか。
  • 今回取り上げた港湾セクターの横断分析、教訓は有用。民間企業(開発コンサルタント等)向けのセミナー等でも共有して欲しい。
  • ルワンダのインパクト評価の事例は、紛争、大虐殺を経験した同国の社会統合や民族融和の変化への影響を定量的に評価できたという点が興味深い。
  • 日本センター事業で実施された5S・KAIZENは、スタンフォード大学等にて日本人以外の研究者が注目して研究を進めており、JICAでもインパクト評価によって効果を見るのも一案。
  • 紛争影響国・地域における横断的な評価は、厳しい条件下での日本の貢献を示す良い事例。UNや世銀、ADB等のドナー連携が効果発現の観点から有益という分析結果もあるが、今回の記載スペースでは情報量が限られている。来年度以降の課題でよいが、厳しい条件下で他ドナーといかなる連携を進めたのか、背景などもう少し詳しく記載してもよい。

(2)(議題2)プロセスの評価(注)

  • 案件の形成過程等動態的側面に着目したことは有用な視点だが、客観性については問題意識がある。
  • 協力事業の過程についてオーラルヒストリーとして事実を記載する意味はあるが、エスノグラフィーという手法の限界も意識したうえで、評価を補完するものという認識が必要。
  • プロセスの評価は、事業評価の主軸にはならないが、従来のDAC評価5項目だけでは見えなくなるものがあると考える。国民が本当に知りたいのは最終的な援助のアウトカムであり、評価5項目がカバーできないところをプロセスの評価で補完しようとしている。国際基準であるDAC評価5項目の観点で測れないところに、ドナーと被援助国とのインタラクションがあり、それに関わった人々のキャラクターがプロジェクトにどのような影響を与えたか、これらの関係性をみるにはプロセスの評価は有効。
  • 一方、エスノグラフィーの面白いところだけ読まれてしまっては意味がない。DAC評価5項目による評価は重要なので、プロセスの評価との比重・関係性を間違えないように気を付けながら、将来的にDAC評価5項目とプロセスの評価の相互補完性を確立する必要がある。
  • 世銀のGlobal Delivery Initiative(GDI)をはじめとする国際潮流も同じ方向性であろう。

(注)「プロセスの評価」は、人類学のフィールド調査の記録手法であるエスノグラフィーを用いて、開発プロジェクトの実施プロセスを記録する手法。従来のDAC評価5項目以外の観点で、開発事業の効果発現のプロセスの確認と分析を行うもの。

(補足)事業評価年次報告書2016は、2017年3月末以降JICAウェブサイトで公開予定です。「プロセスの評価」についても同報告書に記載予定です。