jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

事業評価外部有識者委員会(2017年9月)の概要

1.日時

2017年9月7日(木)13時30分〜15時30分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA)本部 会議室

3.出席者

高橋委員長、朽木委員長代理、近藤委員、高梨委員、野坂委員、本間委員、山谷委員
(JICA)前田理事、評価部長他関係部

4.議事概要

今次会合では、1)DAC評価5項目に基づく事後評価を補完するプロセスの分析と世界銀行等が中心となって進める国際的ナレッジマネジメントの動き(GDI:Global Delivery Initiative)に関するJICAの取組み、2)蓄積された事後評価結果を基にした統計分析の進め方、について議論し意見・助言を得た。

(議題1)プロセスの分析と国際的ナレッジマネジメント(GDI)への取り組みについて

  • プロセスの分析は、その事業がどのようにして、なぜそうなったのか、を追及する点わかりやすく、DAC評価5項目に基づく通常の事後評価では見えてこない視点も見えるため、事業評価を補完する良い取り組み。
  • ケニア・ニャンザの保健プロジェクトのプロセスの分析の調査結果は重要な視点ではあるが、協力の結果、地域全体としてどうなったのか、プロジェクトの成果はどうだったのかなど、当初の事業目標が達成されたのかどうかという点を押さえたうえで、はじめてプロセスの分析の結果が他の事業にもフィードバックできるのではないか。(注:当該事業は、プロセスの分析とは別に事後評価実施済み。)
  • プロセスの分析に際しGDIの分類(Taxonomy)を活用する場合は、時間軸の概念を入れて分析してみるのはどうか。分類カテゴリー間でどの要素とどの要素がどういうシークエンスで有機的につながるのか、そのような時間軸の概念を取り入れることで、分析の深化につながるのでは。GDIについては、いつも日本が世界銀行の後をついていく、というのではなく、日本の強みを生かした差別化も検討すべき。一方、時間軸を入れて分析するためには、欠けているファクターも多いので議論が必要。
  • プロセスの分析やGDIは、新しい観点でありよい取り組みだが、組織としての継続性が重要な課題。新し取り組みはよいが、どうやって継続していくか、JICAだけではなく古くて新しい問題。インスティチューショナルメモリを担保する必要がある。

(議題2)事後評価に基づく統計分析について

  • 事後評価結果を基にした統計分析はよい試みで続けていくべき。その際、できるだけ客観的なデータを使うことに留意が必要。JICA事業の基本方針を念頭に置きながら分析を進めることによって、JICA協力方針の裏付けとしても活用可能となるのでは。
  • 統計データ解析は数値として出るので説得力がある。他方、定性分析は含まれないので、実際の現場感覚とどれだけ違うのか、簡易な方法で現場の意識も調査して統計分析結果との比較をすることにより、より現実的な活用が可能となる。円借款だけではなく、無償や技協も統計分析の対象とすること、統計に基づく定量分析の結果をどのように評価に活用していくのか、などが今後の課題。
  • 今回の統計データ解析は、現場でコンサルタント等が感じていることとほぼ同じ印象。ただし、先方負担事項の不履行や、税金還付の問題など今回の統計分析対象外になっている要素もある。実際の事業実施においては、受注者である民間企業がリスクを負わされている面もあるのが現実。支払遅延や税金の問題、民間企業の努力や悩みなど、統計分析では表面に出てこないがODAに関する本質的な問題もあるが、これらは今回の統計分析の提言や教訓として提起されずにきていることに留意が必要。
  • 分析の要因として、その時代の政策なども考慮すべき。援助と効果の因果関係を分析するために統計分析を用いて相関関係をみてみるということは理解するが、因果関係を包括的に理解するためには定性的分析やプロセスを分析していく必要がある。定量的にデータ化できる変数だけ用いて分析しないと正しい理解はできないという態度は危険。社会や文化、政府の歴史が背負っている、定量データに転換しにくい要素があるので、それらの理解を大事にしていくべき。

その他

  • 評価はアカウンタビリティだけではなく、将来の実践につなげるPDCAサイクルの中で改善を続けることに意味がある。一般向け発信については、改善の努力を継続していると評価。説明責任(アカウンタビリティ)の観点から、今後も一般の方々にわかりやすい説明を続けていくことは大事。一方、学習と改善の観点からは、より専門的なレベルで次元の違う発信をしていくべき。一般国民向けとのメリハリをつけ、プロフェッショナルの方々に事業評価の結果を活用してもらうための別の努力も必要ではないか。
  • 評価のための評価ではなく、外部にも評価のフィードバックをして事業の改善につなげてほしい。港湾事業に関する開発コンサルタント等向けセミナーでは、港湾建設事業の需要予測、ロケーション、開発状況に関する評価から得られた教訓など、JICAとコンサルタントの間で意見交換がなされた点は評価している。

以上