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事業評価外部有識者委員会(2019年2月)の概要

1.日時

2019年2月5日(火)14時00分~16時00分

2.場所

独立行政法人国際協力機構(JICA)本部会議室

3.出席者

高橋委員長、朽木委員長代理、石本委員、今田委員、黒崎委員、功能委員、近藤委員、堀内委員
(JICA)植嶋理事、評価部長他関係部

4.議事概要

JICA植嶋理事より開会挨拶後、今期委員委嘱期間(2018年10月~2000年6月)の初回会合につき、高橋委員長が委員より互選、朽木委員が委員長代理に指名された。
今次会合では、事業評価年次報告書2018原稿を基に、2017年度の事後評価結果と分析、JICAの事業評価全般について議論し、意見・助言を得た。主な意見や助言は、以下の通り。

(1)全般

  • JICAの評価に関しては、日本のいろいろなセクターの評価の中でかなり精緻かつ透明性にも富んだものをしっかりやっていると理解している。
  • 事業評価のみならずODA全体の国際協調に関して、同報告書巻頭言には「開発途上国の発展のために果敢に挑戦して行きたいと考えています」とある。10年前には「途上国の開発政策にアラインする」といった言い方が主流であったが、最近は日本側の政策があらゆる面で出てきている。アフリカ支援を例にとっても、日本(JICA)が単独でできることは限られているので、やはり「日本としてこうしたい」という姿勢だけではなく、当該国の開発戦略(どのように発展して行くのが望ましいのか)について国際的に議論し、日本としての役割を担って行く、というのがあるべき姿ではないか。
  • 個別案件のみならず、国際環境への影響ということも含めてクオリティを測定すべきだということが、JICAの評価としては非常に重要なテーマであると考える。
  • 単にプロジェクトの結果・実績を論評するだけでは評価の意味はあまりない。評価によって提言されたことが、如何に次のマネジメント・アクションとして活かされ実行されているかという点を見る必要がある。是非、マネジメント・アクションを明確にして、評価をより効果のあるものにして欲しい。

(2)JICAとコンサルタント業界との情報の非対称性

  • JICA職員は国連やDAC等での国際場裏でのソフト面の情報も蓄積・活用しているが、それらの情報がコンサルタント業界にしっかり流れていないのではないか。ECFAの会員は2,500名程度あり、日本援助の顔・声であり、質の高い援助の実施者であるのに対し、JICAは国際場裏で集めた情報をしっかりトリックル・ダウンしていないのではないか。コンサルタントとJICAに意識の乖離があるように見受ける。
  • コンサルタントは主に理系の方が多いこともあり、事業のハード面の完成に重きを置いている一方、JICA側は、制度や財務などソフトな視点も重要視しており、コンサルタントとJICAとの間の意識の乖離があるのではないか。これも、JICAとコンサルタントとの情報の非対称から来ているのではないか。
  • コンサルタントはハード専門だけでなくソフトも対応している。マスタープランの評価などを案件終了3年後とか5年後にやっているが、それは余りにも短絡的というか、組織だとか制度だとか法律だとか、そういうものはそんな短期間に成り立つものではないので、もっと長期的に見なければいけないし、コンサルタントもそういうふうな目で見てやっている。

(3)JICAの事業評価と業績評価との関係

  • 同報告書の理事長巻頭言に、事業評価の実施による「戦略性の強化」が謳われているが、事業評価結果分析とJICAの「戦略性の強化」との繋がりが見えてこない。報告書全体から、JICAとして前年度と比べて、何がどうだったのかの全体的なメッセージが伝わってこない。個別のレーティングも重要ではあるが、もう少し突っ込んだ言及を期待したい。
  • 同報告書で決定的に不足しているのは、理事長巻頭言で謳われているような方針について、実際にどういったアウトカムがあったのかが言及されていない点である。中期目標や理事長の経営方針に対して、アウトカムがどうであったか書かれるべき。日本の援助政策に整合性があったか、その考えが背後にあったうえで、外部に対して事業評価結果を出すべきではないか。
  • JICAの中期計画に照らした評価とは何か。事業単位、プログラム単位、スキーム単位であれ、中期計画に沿ったレールがあり、そのレールの上を走っているのか、それとも外れているのかが分かる書きぶり、要するに評価と事業が二人三脚で歩いている書きぶりが必要。

(4)外部評価と内部評価との比較

  • 今年度の報告書から、内部評価と外部評価を合わせて統計分析している点は興味深く、画期的なことである。
  • 過去に内部評価がお手盛りにならぬようという議論があり、内部評価の第3者評価を導入したとのことだが、報告書記載内容からは外部評価の方が甘く(高く)、内部評価の方が辛い(低い)と見て取れる。寧ろ外部評価こそお手盛りではないかという誤解を生みかねない。
  • 外部評価の案件は総事業費が10億円以上であり、内部評価は2億円以上10億円未満である。外部評価は総事業費が大きいほど評価が良くなる傾向があり、その差によって外部評価が良くなったと考えられるが、これにかかる解釈が示されていない。この解釈を丁寧に記載する必要がある。
  • 他方、外部評価の方が甘く(高く)、内部評価の方が辛い(低い)傾向は、評価者のバイアスと、評価対象の違いにあるかもしれない。外部評価の場合は、(JICAとの契約を得たい)コンサルタントへの請負でやっているため評価が甘くなるという、業務発注のバイアスが考えられ、内部評価の場合はJICAの同僚に高い評価を出さないというバイアスが考えられる。しかしこの点は(外部評価と内部評価の区切りである)10億円を境とした不連続の有無で回帰分析を行えば検証できる。

(5)紛争影響国・地域での評価

  • 紛争影響国・地域での事業実施が難しいのは、UNDP等の国際機関でも同じ。ただし、日本政府による渡航勧告はかなり厳しいのでJICAはより難しい対応に迫られているのだろう。危険地域では遠隔操作で事業を実施せざるを得ない点は、紛争地域といっても様々あり、一律な基準は難しいが、評価で考慮されるべき点と考える。
  • 紛争影響国・地域でJICAが「平和構築アセスメント(PNA)」を継続的に実施していることが同報告書で触れられているが、この点は高く評価する。

(6)その他

  • イノベーション案件については、高いレーティングを求められるのは難しいとあるが、そうした成功の保証がないものに取り組んでいくこと自体を評価する方法がない。評価手法は確立していないものの、こうした挑戦に対し、評価できる仕組みがあれば良いと思う。
  • 定量的指標の設定について、目標値が適正に設定されているのか一般の人には判断が難しい。読み手に誤解を与えない適正な目標値設定をお願いしたい。
  • 個別具体的な事業の一つ一つの評価結果を吟味するのは難しい側面もあると思うので、同報告書に「総合的・横断的な評価」を実施しているとあるので、そのことをもう少し前面に出しても良い。
  • 毎年課題のある案件(D評価)の分析と記述内容は議論になる。JICAにとって有益な教訓を得ていくという意味では、A、B評価の記述は減らしてD評価の記述を増やすべきではなかろうか。
  • 例えばジェンダーの視点での評価で代表されるように、JICA内の通常の評価とは別の評価もあると考える。コラムのような形で結構なので、可能であればそれも紹介されることを期待する。

(参考)事業評価年次報告書2018は、JICAウェブサイトで公開中

以上