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- 事業評価外部有識者委員会(2020年1月)の概要
1.日時
2020年1月30日(木)14時00分~16時00分
2.場所
独立行政法人国際協力機構(JICA)本部会議室
3.出席者
高橋委員長、朽木委員長代理、石本委員、今田委員、川口委員、黒崎委員、功能委員、近藤委員、舟越委員、山谷委員
(JICA)鈴木理事、評価部長他
4.議事概要
議題は、1)DACの評価基準改定(報告)、2)事業評価年次報告書2019案(審議)の2点。1)では新DAC評価基準の考え方と今後のJICA事業評価への活用について、2)では事後評価結果と分析、新たな評価手法、JICAの事業評価全般について議論した。
主な意見・助言は、以下の通り。
1)DACの評価基準改定
- DACの評価基準(従来5項目)が改定され、各項目の再定義と共に、6項目目のCoherence(仮訳:一貫性・整合性)が追加された。Coherenceには、内的一貫性(仮訳)と外的一貫性(仮訳)があり、他のスキームとのシナジー効果や連携、同じコンテクストで活動する他の支援パートナーや他ドナーとの補完性・協調性が含まれる。
- SDGsの「誰も取り残さない」の精神をJICAの評価基準の中にも適切に反映すること、及び新DAC評価基準の各項目の定義・理解・評価手法等を明確に整理の上、混同しないことが重要。
- Relevance(妥当性)の一部がCoherenceになるという整理であれば、評価項目が追加されても、これまで積み重ねた評価の統計データは問題なく活用可能と考えられる。
- Coherenceの中では、外的一貫性が特に重要と考えられる。この項目をしっかり達成する上で、従来よりもプラニングプロセスや説明責任がワンステップ増えるかもしれない。
- 世界や日本は変化しており、資金的にも、技術的にも日本が世界で優位に立っていた時代は過ぎ去っている。日本のバイの援助機関であるJICAの在り方を真剣に考える必要がある。評価もDACの評価項目を踏まえることに留まらず、JICA独自のものを創り出して世界に示してゆくことを期待する。
- 本日の議論を踏まえ、JICAの事業評価への反映のあり方について改定作業を進める。
2)事業評価年次報告書2019(案)
- 今年度の年報の特徴は、製本版の配布を行わず、Web版での作成・公表としたこと。紙面構成上、事例の掲載件数は従来よりも少ないが、実施された外部事後評価及び内部事後評価の案件を一覧表として掲載し、全案件を個別の事後評価報告書にリンクさせることで、利便性と発信力の強化が図られた。年報の構成は、前半が評価結果、後半が新たな教訓と学び。今回は特に、後半を厚くしている。
- PDCAサイクルにおける教訓の活用事例として、マレーシアの有償案件「高等教育基金借款事業」に係る記載は示唆に富む。日本は、開発援助を通じてつながりを深めている途上国のみならず、マレーシアのような中進国や援助卒業国等との関係を継続して築き続けることが大事。「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現を、中身のあるものにしていく上でも重要。
- JICAの事業評価は、第三者によって事前・事後の比較で中立的に行われているとのことだが、軍政や独裁的な国家も世界に存在する。かかる体制下の国家等においても、JICA事業の評価が公正な手続きの下で適切に行われていることを、分かりやすく、一般国民に伝える工夫と配慮を一層重ねて欲しい。
- JICAとその他DACメンバーの国・機関との評価制度に関する国際比較の結果、JICAの強みは、プロジェクト評価を網羅的に行っていることにある。課題は今後更にJICA全体の戦略へ評価結果の活用を図ること。JICAの技協・有償・無償の3スキーム支援による相乗効果等の観点は、今回の国際比較に表れてこないが、他機関への比較優位を有すると考えられる。評価の蓄積を、JICA全体の援助方針・戦略に反映していって欲しい。
- GDI等、国際的なナレッジ・プラットフォームへの参加・貢献については、JICAのみならず、大学や他のアクター等とも協力して、日本の存在感をアピールすべく、そのファシリテーターとしての役割もJICAに期待したい。
- 事業評価が行われた案件は、実際に事業実施に至った案件であるが、実施に至らなかった事業も特に民間では多い。こうした事業実施に至らなかったケースも、JICA事業の更なる改善に活用されるよう工夫を試みて欲しい。
- 個別案件の評価結果は良く分かるが、横断分析で採り上げた評価事案の意義や、JICA全体の施策との関係を示すことが重要。3スキームによる相乗効果の分析も期待したい。
3)総括
- DACの評価項目として、Coherenceの考え方が独立して入ったことを契機に、JICAの評価基準等に関して更なる検討を深めて欲しい。
- 事業評価結果を踏まえたJICAとしての全体像や、同一組織での3スキーム実施による全体的効果(相乗効果)を示してゆくべき等の委員からの意見は、特に重要と思料。
- 評価制度の国際比較も興味深かったが、こうした調査結果を見る際には、「相違点」のみならず「共通点」も見ることが重要。
- JICAの事業評価の主たる目的は、各事業の「開発効果の評価」にある。外務省のODA評価では、また別の観点もあろうが、JICA事業評価においては、相手国の「開発効果に対する評価」を基軸とすることが、JICA自身の行政行為の正当性保持ということもあり、持続的な評価になると考える。
以上
(補足)「事業評価年次報告書2019」は、2020年5月以降、JICAウェブサイトで公開予定です。
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