jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

事業評価外部有識者委員会(2021年2月)の概要

1.日時

2021年2月17日(水)10時00分~12時00分

2.開催方法

オンライン(Zoom)開催

3.出席者

高橋委員長、源委員長代理、石本委員、今田委員、木内委員、黒崎委員、功能委員、近藤委員、竹原委員、舟越委員
(JICA)中村理事、評価部長他

4.議事概要

今回の議題は、1)テーマ別評価の実施状況、2)開発協力事業の新たなマネジメント方式に関する検討状況、3)事業評価年次報告書2020(案)の3点。今次委員会での助言等を踏まえ、実施予定の各種テーマ別評価、新たな事業マネジメント方式における評価のあり方を検討、事業評価年次報告書を更新・公開する。委員の主なコメントは、下記のとおり。

(1)テーマ別評価の実施状況

2020年度案件として「保健医療セクター(感染症対策)におけるJICA協力の開発効果のインパクトと途上国の経済社会開発」を実施中、また2021年度案件として「誰一人として取り残さないという考え方を踏まえた「社会的弱者」の評価手法(仮称)」及び「Human Well being/Happiness の評価手法 (仮称)」に取り組む。

コメント

  • 保健医療セクター(感染症対策)のテーマ別評価は、コロナ禍にも関連し、既存の協力によるナレッジ蓄積と今後の活用を図る良い取り組み。
  • 「社会的弱者」と「Human well-being/Happiness」の評価手法の検討は、チャレンジングなテーマ。その指標の設定については、指標のみが独り歩きすることには留意すべき。単に事業の成果を測る指標の提示ではなく、どのような効果を得るためにどのような介入が必要か、その効果を確認するためにどのような指標が望ましいか、結果をどのように次の類似案件に繋げるのか、といったプロセスを検討することがより重要。
  • 調査実施においては、評価の専門家に加え、社会的弱者等の当事者が加わることも一案。従来のやり方・体制にとらわれず調査を進めて欲しい。

(2)開発協力事業の新たなマネジメント方式に関する検討状況

個別の案件単位ではなく、SDGsゴールへの貢献を念頭に、課題解決に向けた大きな纏まり(クラスター・イニシアチブ)で事業を実施することについて、JICA課題部を中心に検討が進んでいる。

コメント

  • 評価には、独立行政法人として受ける評価である「中期目標の業績評価」、個別案件ではなく特定の課題を纏まりとして評価する「クラスター・イニシアティブの評価」、個別案件としての「プロジェクト評価」があるが、それぞれの目的に合わせ、手法やアプローチは異なる。現在行っている個別案件の「プロジェクト評価」をいかに「クラスター・イニシアティブの評価」にフィードバックし、改善に繋いでいけるかが重要。
  • 「クラスター」等の言葉は、国内外でも多様に解釈される可能性がある。プラットフォームを国際機関等外部アクターに広げていく想定なら、概念整理や明確な定義付けが必要。

(3)事業評価年次報告書2020(案)

  • JICAの事業評価年次報告書は良く出来ていると思うが、評価による教訓蓄積とフィードバックの結果、ODA事業がどのように年々良くなってきているのか、より一層のアピールできると良い。JICAの事業評価に係る思想・哲学等を踏まえた軸を打ち出し、JICA評価の全体像を俯瞰ができるよう、今後の工夫に期待。
  • 「海外投融資の事後評価」に関して、本来の目的である「途上国の人々の貧困削減にどう貢献しているのか」との視点も含めた複層的な評価を期待する。また、海外投融資は開発協力事業と異なると言いつつ、評価基準はDAC評価項目が採用されている。「融資や出資等の特徴を合わせた視点」を設定したとあるところ、同基準の特徴的な点等についても、可能な範囲で記載が望ましい。
  • 「途上国の評価能力向上に向けた課題別研修」に関連して、このような研修受講者等をJICAの事業評価に参加させる、といった対応も検討しては如何か。
  • コロナ禍による制約のため、机上調査のみで実施した評価について、目視せずに評価して本当に良いのかは難しい課題。またコロナで事業実施上の影響を受けた事業を、今後どのように評価していくのかも考えていく必要がある。

(4)委員長まとめ

  • 評価年報については、年々内容も充実してきているが、記載の分かり易さという観点とは別に、その年のJICAの事業評価の重要な対応をしっかりと記載すると良い。本年度の場合、それは、DAC評価基準の改定に伴うJICA事業評価基準の改定と思料。特にCoherence(整合性)の考え方は重要。
  • JICA事業評価の目的は、「相手国の人々の役に立っているかどうか」に関して、個別の事業評価結果(良い事業、成功した事業)等から確認し、国民等に説明する(説明責任)こと。この姿勢をより前面に出していけると良い。
  • 「開発協力事業の新たなマネジメント方式」の検討は、JICAにとっても大きな改革であり、重要な検討かと思料。個別案件の評価のみならず、全体としての評価を実施し、途上国の人々に役に立っているということを確認することは大変重要。
  • 世界では、自国第一主義等の考え方も出て来ているが、国際協力は、覇道ではなく王道を進んで行くべき。それが、相手国の人々のwell-beingに繋がるのだろうと考える。

以上