教育だより第29号(2020年7月発行)より

新型コロナウイルス禍の新学力改善モデル-マダガスカルの子どもたちを救うみんなの学校-

マダガスカルの学習の危機とみんなの学校(TAFITA)

マダガスカルは、アフリカ南東部に浮かぶ、人口約2,200万人、日本の約1.6倍の面積を持つ島国です。この国には、約25,000校の小学校があり、約370万人の生徒たちが元気に学んでいます。しかし、残念なことにほとんどの生徒が読み書き・計算ができません。マダガスカルは、「学習の危機」の状態にあります。対策として、政府やドナーは、協力して大規模な教育開発政策の改善に取り組んでいますが、生徒の低学力の問題は解決されていません。この厳しい状況を改善するため、マダガスカル政府から日本政府に要請され、開始されたのが「みんなの学校:住民参加による教育開発プロジェクト(TAFITA)」です。

TAFITAの新学力改善モデル

TAFITAは、既存の小学校運営委員会内の情報共有と住民参加を促進することにより、住民と教員がともに教育改善を行う協働の枠組みを構築しました。さらにその枠組みをネットワーク化した組織として、小学校運営委員会連合を設立したことにより、1県1650校17万人の生徒に対する一斉学力改善活動を可能にしました。この活動は、教師と住民が協働で行う3か月間の補習活動です。

この補習活動では、インドのNGOが開発したTaRL(Teaching at the Right Level)という効率的な読み書き・算数の改善手法を取り入れ、教員に伝授しました。活動前後に実施したテストの結果比較で、生徒17万人の正答率が算数で3割、読み書きで2割改善されました。ここに、「生徒一人当たりの単価が0.15ドルの、教師と住民が協働で行うTaRLを用いた地域一斉補習活動」というTAFITAの 新学力改善モデルが誕生したのです。

新型コロナの対策と新学力改善モデル

TAFITAの新学力改善モデル普及活動は、新型コロナウイルスの影響で学校が閉鎖したために中断してしまいましたが、モデルの一部が新型コロナ対策に使われることになりました。マダガスカル教育省は、TaRL手法を用いた補習方法を国営放送の教育テレビ番組(KiLASY POUR TOUS)で放送し、学校に行けない子どもたちの学習を支援しています。さらに、TAFITAの新学力改善モデルは、学校閉鎖で学習の遅れた生徒の学力キャッチアップに最適なモデルでもあります。今後、全力で、全国の生徒の学力キャッチアップを支援していきます。

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住民総会の様子

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TaRLの手法を用いた補習活動で学んでいる様子

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教育テレビ番組(KiLASY POUR TOUS)での放送の様子

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