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ラオスの民事訴訟法改正からみる、法の支配の推進について

2025.09.05

成果

ラオスの民事訴訟法が改正され、ラオスで初めて、民事訴訟に『請求権』『要件』という重要概念が導入され、また、判決に『争点』を記載すべきことが明示され、それらに関連する手続が同法に導入されました(2024年12月11日国民議会承認、2025年8月11日官報掲載)。

日本の貢献

この法改正にはJICA 法の支配発展促進プロジェクト(フェーズⅠ及びフェーズⅡ)からも数年にわたり支援を行い、日本の検察官及び弁護士出身の専門家がこの法改正へ向けた会議に関わってきました。
この民事訴訟における新しい考え方は、これまでJICA法律プロジェクトにおいて、日本の専門家とともに、ラオス政府を中心としたメンバー(最高人民裁判所、最高人民検察院、司法省、ラオス国立大学、弁護士会所属)が議論を通じ、研究や文献作成を続けてきたものです。専門家もその考え方の重要性を改めて会議で提案し続け、認められ、ラオスの法律に取り入れられました。

これまでの課題

これまでのラオスの民事訴訟法では、事件の背景事実(出来事)全てを審理対象として詳細に確定し、判決を出すということを行なってきました。しかし、これでは対象が広すぎるため裁判官の負担が重く、事件の整理が難しく、ゆえに迅速な裁判を実現することも難しくなります。そして、判断対象が絞られていないため、法律に基づく事件解決がなされづらくなります。

解決策の検討

これを踏まえ、JICA法律プロジェクトでは、訴訟におけるこのような負担を軽減し、個人の判断ではなく法律に基づく判断がなされるよう、ラオス政府と共に活動してきました。新しい民事訴訟法では、日本での考え方と同様に、法律に書かれている「請求権」を裁判での検討の中心に置き(例えば、お金の貸し借りの契約なら民法の貸金返還請求権)、その請求権を発生させる「要件」(例えば、お金の貸し借り契約なら、要件1「お金を借りて返還する約束をしたか」と要件2「お金の受け渡しがあるか」など)を考え、当事者間に争いのあるポイント・「争点」のみ(例えば、「約束はしたけど実はお金を受け取っていない」「いや渡したはずだ」ということが争いになっていれば要件2が争点)に絞り、これを中心に事件を検討し、判決を書くことになります。
この手続が定着すれば、裁判官と訴訟の当事者は、本当に検討しなければならないことにだけ集中することができるようになります。すると、裁判官の負担も軽減され、裁判手続がスムーズに進むことが期待できます。
そして、法律の求めている請求権・要件から考えることで、法律に基づく裁判が行われるようになり、これはJICA法律プロジェクトの推進する法の支配の考え方を推し進めるものです。

JICA法律プロジェクトは、引き続きラオスの法の支配の発展に貢献していきます。

民事訴訟法改正セミナーの様子

民事訴訟法改正セミナーの参加者

民事訴訟法改正セミナーで講義を行う澤井専門家

民事訴訟法改正セミナーで講義を行う阿讃坊専門家

民事訴訟法ドラフト検討会議の様子

民事訴訟法ドラフト検討会議の参加者

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