「一村一品」世界に挑む者たちが語る、日本市場への想いとリアルな手応えーJICAインターンが出展者の本音を聞いてみました
2026.04.30
2026年3月10日から13日までの4日間、アジア最大級の食品・飲料展示会「FOODEX JAPAN 2026」が東京ビッグサイトにて開催されました。JICAは中央アジアで実施している「一村一品(OVOP: One Village One Product)プロジェクト」の一環で、各国の出展者とともに合同ブースの出展を支援しています。
各国の地域産品を日本市場に紹介し、実際に現地で生産された付加価値の高い商品が日本市場で流通することで、その利益を生産者に還元することを目指しています。また、会場でのビジネスマンとの商談を通して、市場のニーズを把握し、今後の商品改善(より売れる商品の開発)に活かすこと、加えてこのような出展の機会を通し、日本と各国が繋がり、プロジェクト終了後もビジネスが継続するような仕組みを作ることを目指しています。
本記事は、JICAインターンがブースを訪問し、現地のカウンターパートの方々にお伺いした話をもとに、出展者の視点から見たFOODEXのリアルな声をお届けするレポートです。後半では、JICA専門家の視点から見たFOODEX出展の意義や、3日間を通じて得られた成果についてもご紹介します。
ドゥイセンハノブ・エルメック (Duissenkhanov Yermek) さん
担当ブース:カザフスタン
所属:国家企業家会議所「アタメケン」対外商工会議所
ピンク色のラベル付きの瓶は、キャメルソーン(ラクダ草)という植物から採れるはちみつ。手前にはハーブティーが並んでいる。
「カザフスタンの起業家を代表して、私たちの製品を日本のビジネス関係者に紹介するために来ました。はちみつはすでに日本に輸出していますが、ラクダミルクのパウダーやシーダーナッツ(杉からとれる実)製品など、まだ日本では知られていない商品もあります。これらを知ってもらうのが今回の挑戦です。目的は、3つあります。健康的な製品を紹介すること、日本の方々に知ってもらうこと、そして輸出入の交渉を始めること。すでに前者2つは達成できたと思います。初日だけで15枚の名刺をいただきました。イベント後に連絡を取り、商談につなげていきたいです。また、去年ははちみつで輸出の実績ができたので、今年は別の商品でも実現したいです。」
ナルギザ・エルキンバエバ (Nargiza Erkinbaeva)さん
担当ブース:キルギス
所属:公益法人「OVOP+1」・最高経営責任者 (CEO)
「言葉の壁はやっぱり大きなチャレンジですね。もっと日本語が話せたらいいのにって思います。でも、専門家の皆さんが助けてくれて、本当にありがたかったです。」
「去年もFOODEXに参加しました。今年はポスターのデザインを少し改善したり、新しい商品を増やしたりして、去年よりも準備を整えてきました。たとえば、キルギスのラズベリーハニーや、タジキスタン・ウズベキスタンからの新商品も加わりました。ウズベキスタンからは政府関係者を含む大きな代表団も来てくれて、心強かったです。去年はジョージアが一緒に出展できなかったけど、今年は一緒に参加できてうれしいです。少しずつ、みんなで成長しているのを感じます。」
素材と品質にこだわったジャムのようなはちみつ。左から、シーバクソン、ラズベリー、カシスを使ったフレーバーハニーが並ぶ。
プロトブ・シュフロブ(Protov Suhrob)さん
担当ブース:タジキスタン
所属: JICA一村一品プロジェクトスタッフ
「私たちは、100%ナチュラルでオーガニックなタジキスタン産の商品をたくさん開発してきました。ビジネスって、『何かをつくって、それを売ること』ですよね。だからこそ、私たちの製品を世界に紹介して、タジキスタンという国の名前をもっと知ってもらいたい。そして、もちろんビジネスとして収益も得たいと思っています。でも、それだけじゃないんです。私たちは地方の女性たちと一緒にものづくりをしていて、彼女たちの生活向上にもつながる。社会的なインパクトも大きいんですよ。」
OVOPショップ「TOJIKZAMIN」でも取り扱われている、「奇跡の果実」とも呼ばれるシーバクソンを用いた商品。左からシーバクソン石鹸、シーバクソンオイルリップバーム、100%シーバクソンオイル、右下がスキンクリーム。
「FOODEXでは、まだ大きなチャレンジには直面していませんが、やっぱり最終的には契約を取ることが一番の目標です。経験を積むのも大事だけど、それだけでは経済的な成果にはつながらない。だからこそ、興味を持ってくれる人、契約につながる相手を見つけたいんです。また、原口さんやチームの皆さんと一緒に、中央アジアのネットワークを築けているのも心強いです。たとえば、私たちの蜂蜜も、日本の企業が興味を持ってくれていて、原口さんのビジネスマッチングのおかげで、輸出の可能性が見えてきました。」
原口 明久さん
担当ブース:キルギス
所属:JICA専門家(キルギス「一村一品運動を通じた中央アジアにおける地場産業振興プロジェクト」チーフアドバイザー)
「FOODEXに参加した理由は、いくつかあります。まず、キルギスでは蜂蜜やジュースの輸出を進めていて、年間3億円の売上を目指しているんですが、去年は1億3000万円ほどでした。観光シーズンに売上が偏ってしまうので、冬の収益を補うためにも輸出を強化したいんです。それから、カザフスタンやウズベキスタンでは、まだ『自分たちの商品は素晴らしい』という思いだけで売ろうとする傾向がある。でも、それじゃ売れない。だから、まずはキルギスに連れてきて、現場を見せて、次にこういう国際展示会で、ビジネスマンから直接『値段が高い』『パッケージが弱い』といったリアルな声を聞いてもらうんです。」
キルギスのOVOPショップの様子。スリッパやぬいぐるみ、コインケースなど、様々なフェルト商品が並んでいます。
中央アジアは二重内陸国。物流のハードルが高いんです。例えば、ジャムを3000本作ってもコンテナの10%も埋まらない。混載すればいいけど、今度は日本側の税関で商品ごとに税率が違って、手間もコストもかかる。やりたがる人がなかなかいないんですよ。それでも、今回のFOODEXでは、そういう課題に向き合いながら、出展者たちが確実に成長しているのを感じました。何を持ってくるべきか、どうアピールすべきか、みんなが少しずつ理解してきていますよ。」
「名刺を15枚集めたって?いや、それじゃ足りない。300枚集めて、フォローアップして、ようやく1〜2件が契約につながるかどうか。だから、最初は少量を飛行機で送って、少しずつ広げていくしかないんです。私たちのプロジェクトは、売上を成果指標にしています。地域の方々が作った商品が売れて、お金が入る。それが一番のモチベーションになるし、出稼ぎに行かずに済むようになる。そうやって地域が元気になっていくんです。」
FOODEX初日にJICAのインターンとして合同ブースを訪問し、各国のカウンターパートやJICA専門家の皆さまにお話を伺いました。出展者の皆さんは、それぞれの国の地域産品を日本市場に届けることで、各国の地域開発・生産者支援につなげたいという強い想いを持ち、言語や物流、商談の壁に直面しながらも、前向きに挑戦していました。
今回のインタビューを通じて見えてきたのは、FOODEX出展には少なくない壁がある一方で、「現場でしか得られない気づき」や「次につながる出会い」があるということです。一つひとつの反応が、地域の未来を変えるきっかけになるかもしれない、そんな熱意と思いが、ブースの中に確かにありました。
本記事が、FOODEXへの参加を検討されている日本企業やバイヤーの皆さまにとって、出展者側のリアルな声を知る一助となれば幸いです。
(JICAインターン 相原 陽菜子)