jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

地球の未来をみんなでつくる−JICAの環境・気候変動対策への取り組み

開発途上国では、人々の生活基盤である環境の破壊が進み、ますます貧困が深刻化していくという悪循環が起きています。私たちはかけがえのない自然環境を刻々と失いつつあり、環境と調和の取れた持続可能な社会と開発を実現する必要に迫られています。

JICAは、人類すべての生命を取り巻く地球環境の保全へ向けて最善を尽くすため、環境・気候変動問題に対する取り組みを幅広く実施しています。

1.自然環境を守る

世界では、大規模な開発や資源の大量消費の結果、森林の減少、砂漠化、生物の絶滅など自然環境の破壊が急速に進んでいます。例えば、森林伐採、火災、農地転用、焼畑農業の増加などにより、毎年、日本の国土面積の3分の1に当たる約1,300万haの森林が減少しているといわれています。また、絶滅の恐れのある野生生物は1万8,000種を超えています。

私たち人間の生活は、食料・水・空気など地球上の生態系に依存しています。生態系のバランスの崩壊は人々の生活に大きな影響を及ぼします。特に、開発途上国の貧困層の多くは、自然資源に依存した生活を営んでいるため、自然環境の破壊は貧困層の生活をさらに悪化させる結果をもたらします。

パラオのサンゴ礁を守るためにモニタリング能力の向上を図る

パラオのサンゴ礁を守るためにモニタリング能力の向上を図る

地球上で急速に失われつつある森林、野生生物、湖沼・湿地・マングローブ林などの人類の生存基盤である自然環境を保全し持続的に管理する必要に迫られています。

JICAは森林情報の整備、管理計画の立案や地域住民の生活改善などの活動を行うとともに、森林再生のために多くの国で植林を行っています。環境劣化と貧困の悪循環を解消し、環境と調和した社会の形成を促進するため、JICAは「自然環境の維持と人間活動の調和を図る」ことを目的に自然環境保全の協力を実施しています。

具体的なプロジェクトは、【見える化サイト「自然環境保全」】へ

2.環境問題への対応力を強くする

かつては先進国の課題といわれた水質汚濁や大気汚染、未処理廃棄物などの環境問題は、いまや開発途上国にも及び、生物のみならず人類の生活や健康を脅かすとともに、健全な経済活動を阻害する要因ともなっています。環境問題への取り組みは生態系や人の健康に影響が出てからでは手遅れです。必要なのは、予防に重点を置いた取り組みであり、そのためには環境問題への対応能力の強化が重要です。

環境問題は、複数の要因が重層的にかかわり、かつ空間的な広がりをもつことが多いことから、短期間で解決を図ることが困難という特徴があります。環境問題を最小限に抑え、発展を続けるには、人類の活動全般から発生する環境への負荷を適切に抑制し、本来あるべき環境を維持するための方策として「環境管理」が重要となっています。

ジャカルタの河川に流れ込む大量の廃棄物。JICAは下水・廃棄物のプロジェクトにより、インドネシアの衛生状態改善を目指す

ジャカルタの河川に流れ込む大量の廃棄物。JICAは下水・廃棄物のプロジェクトにより、インドネシアの衛生状態改善を目指す

JICAは、開発途上国の発展状況やその地域に適した多様な支援を行っています。その際、環境管理にかかわる組織や個人の対応能力の強化が不可欠との認識から、近年は、環境管理能力の開発(キャパシティ・ディベロップメント)に関する取り組みをいっそう強化しています。

具体的なプロジェクトは、【見える化サイト「環境管理」】へ

3.気候変動対策を地球全体で考え、そして、行動する。

気候変動問題は、自然生態系や社会・経済を含む人類の生活基盤全体に影響を及ぼします。公正な経済成長や貧困削減、人間の安全保障に対する大きな脅威となるものであり、世界全体で取り組んでいくべき重要な課題です。近年、気温や海水面の上昇などに伴う沿岸低地の水没、干ばつ・集中豪雨・洪水等の異常気象・自然災害の増加、食料生産・水資源の減少などの気候変動の悪影響と考えられる現象が各地で報告されており、今後より広範な地域、分野で深刻化すると予測されています。

ウランバートルにおける最終処分場。JICAの技術協力プロジェクトでは廃棄物問題及び大気汚染問題に取り組んでいる

ウランバートルにおける最終処分場。JICAの技術協力プロジェクトでは廃棄物問題及び大気汚染問題に取り組んでいる

(1)全世界一丸となった温室効果ガス削減への取り組みを支援

近年、開発途上国からの温室効果ガスの排出量が増加しており、近い将来、先進国全体の排出量を上回ると予想されています。気候変動がもたらす悪影響を最小限に抑えるためには、先進国のみならず、途上国を含めた温室効果ガスの排出削減の取り組み、つまり「緩和策」の実施が不可欠です。

貧困削減など解決すべき課題が山積する途上国にとっては、温室効果ガスの削減と生計向上や経済開発といった開発便益を両立させるアプローチが重要となってきます。JICAは、再生可能エネルギーの導入、省エネの促進、都市公共交通システムの整備、廃棄物管理、森林管理や植林支援などの分野で協力を実施しているほか、省エネ法の整備、低炭素型の都市づくりなど、政策策定や戦略づくりのための支援も幅広く行っています。

(2)気候変動の悪影響から途上国の人々を守るために

気候変動の悪影響を最も受けるのは途上国の特に貧困層であり、人間の安全保障の観点からの取り組みが非常に重要です。気候変動の悪影響を少しでも軽減するためには、社会全体を見直し、気候変動の悪影響に適応できるような体制を整えていくことが必要です。

JICAは、護岸や堤防整備、飲料水供給施設の整備、水資源の適正管理、生態系保全、乾燥耐性に優れた作物の導入/品種改良、感染症対策分野での能力開発など、その国のニーズに応じた「適応策」支援を展開しています。また、気象観測や気候変動予測、影響評価などに基づいた、地域ごと、国ごとの適応策の立案、実施支援も進めています。こうした協力は、今後ますます重要になってくると考えられます。

気候変動の問題は、エネルギー、運輸・交通、森林、水資源、防災、農業、保健・衛生など、途上国が抱えるさまざまな課題に密接に関係しています。途上国にとって気候変動問題はまさに開発の問題そのものといえます。

JICAは、これまで積み上げてきた持続可能な開発への支援の経験を土台に、国際的な議論を踏まえ、内外の関係機関との連携を図りながら、政策レベルから具体的な事業実施への支援、研究などさまざまな切り口から、開発途上国における気候変動対策の支援に取り組んでいます。

詳しくは、【気候変動パンフレット】へ