都市開発・地域開発

JICAの事例紹介

スリランカ コロンボ都市交通調査プロジェクト

地球環境にも配慮した総合的な都市交通政策策定を支援

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コロンボ市の交通渋滞は年々悪化している

スリランカの中心都市コロンボ市で近年、深刻化している交通渋滞を緩和するため、JICAはコロンボ都市圏を対象に総合的な都市交通政策の策定を支援しました。

悪化する交通渋滞

スリランカは北海道の0.8倍程の土地に約2,000万人が暮らすインド洋に浮かぶ島国です。同国の首都は、コロンボ市の郊外にあるスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ市ですが、実質的にはコロンボ市が政治・経済の中心として機能しています。

コロンボ市および近郊の交通は道路網への依存が高く、コロンボ市の位置する西部州では2002年から2010年の間に自動車登録台数は倍増しました。他方、西側が海に面しているという地形的な制約や、コロンボ港から放射状に延びる道路を結ぶ環状道路の整備が遅れているために効率的な道路網が形成されていない、といった課題を抱えています。そのため、特に朝夕の通勤通学時間帯には激しい交通渋滞が生じており、大きな経済的損失を招いています。

環境にも人にも優しい都市交通

プロジェクトではさまざまな交通実態調査を行い、現状を正確に把握したうえで将来のコロンボ都市圏の交通状況の予測を行いました。その結果、何も効果的な対策が講じられない場合は、自家用車等の利用が進み、都市内移動における全交通手段のなかで公共交通が占める割合は、2013年の58%から、2035年には41%に減少するということが判明しました。

これを受け、プロジェクトでは、増加する需要に応じるために、最低限の道路整備を提案する一方で、公共交通の利用を一層促進する必要性をスリランカ政府に訴え、自動車交通の抑制策やモノレール/バス高速輸送システム(BRT)等の新たな公共交通機関の導入についても提言を行いました。

プロジェクトで提案した計画を実施した場合、効果的な対策を講じなかったケースと比較すると、2035年の時点で二酸化炭素の排出量を10%以上も削減でき、また、交通事故による損失額の大幅な軽減も見込まれるなど、環境にも人にも優しい交通政策・計画が策定されました。

この事例に見られるように、JICAは都市を支える地球環境にも配慮しつつ、各都市が直面する課題解決に取り組んでいます。

モンゴル ウランバートル市の都市整備支援

都市計画策定から実施能力向上まで一貫した都市開発事業

モンゴルの首都ウランバートルは急激に人口が増加しており、無秩序な拡大(スプロール)や社会インフラ施設の不足などさまざまな問題を抱えています。JICAは、持続可能な都市整備に向けて、都市計画策定から都市開発事業の実施まで一貫した支援を行ってきています。

急激に進む人口増加

モンゴルの首都ウランバートルは、1992年の社会主義体制崩壊以来、市場経済に向けて急速な改革を経験し、都市の成り立ちにも大きな変化を引き起こしました。1997年の人口移動の自由化と、1999年、2003年に起きた深刻な雪害により放牧を営むことができなくなった遊牧民の流入に伴い、1998年に65万人であった人口が2012年には130万人を突破し、急激に人口が増加しています。現在、同市の人口増加率は3%程度で推移しています。

人口増加の多くは地方からの流入であり、遊牧民が移動式住居(ゲル)を建て、都市の無秩序な拡大(スプロール)が進んでいます。この人口増加に対して、公共の住宅供給を担う住宅金融公社の実施能力不足もあって住宅供給は需要を満たしておらず、同市の人口の6割は、都市基盤施設が整備されていないゲル地区に居住していると推定されます。

また、同地区における暖房用の石炭使用による大気汚染などの環境問題や排水による汚染など、新たな都市問題も発生しています。

持続可能な都市整備を促進

そこでJICAでは、「ウランバートル市都市計画マスタープラン・都市開発プログラム策定調査」(2007〜2009年)を実施し、環境保全をベースとしたバランスある土地利用のあり方、都市計画行政の

ための法制度などを織り込んだ都市マスタープランを策定、その後、都市開発省とウランバートル市役所による内容調整の末、2013年2月に都市マスタープランが国会で承認されることとなりました。

さらに、このマスタープランの実現を後押しすべく、わが国の地方自治体との協働の下、「都市開発実施能力向上プロジェクト」(2010〜2013年)を実施。土地区画整理や都市管理に向けた制度設計などの整備や、行政組織の構築・都市開発事業実施に関する人材育成を行いました。その結果、住環境整備に資する都市再開発法が2014年の国会で承認される予定です。

JICAは都市の将来構造づくり(マスタープラン策定)から、実現のための法制度整備や組織構築までの一貫した都市開発事業により、持続可能な都市整備の促進に貢献しています。

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ウランバートルでは、遊牧民の流入により無秩序な拡大が進んでおり、基礎インフラの整った再開発が求められている

南スーダン 社会経済インフラ総合開発と緊急支援計画策定調査

国家建設の最大ニーズに応える

2011年に独立した南スーダン。JICAは、3大都市のひとつ、アッパーナイル州のマラカルタウンの道路、河川、給水施設改善など社会経済インフラ開発に協力しています。

「独立には成功した。これからは地方を開発しなければ新しい国づくりは立ち行かなくなる」。

南スーダン政府の誰もが認識する南スーダン国家建設の最大のニーズに応え、JICAが目指すインクルーシブな開発を実現すべく、2012年2月、JICAは南スーダンの地方都市、マラカルタウンでのプロジェクトを開始しました。

和平合意後アスファルト舗装が進み、給水施設が整備され、学校が再開され開発が目に見えて進みつつある首都ジュバに対して、南スーダン3大都市のひとつの、マラカルは、ジュバとの政治的・物理的距離―北の要塞都市としてかつて整備され、最大野党の拠点地、陸路600kmあり道路は通じていない―により、独立後も一切開発がなされてこなかった地域です。

このような地政学上重要なマラカルに、「独立の配当」をもたらすことはマラカルの人々のためにも南スーダン全体の平和の定着のためにも極めて重要な課題といえます。

プロジェクトでは6カ月程度で「見捨てられた」都市の包括的なインフラ開発計画を策定し、その後、1年半かけて、コミュニティ道路、河川港、給水施設改善のためのパイロットプロジェクトを実施します。南スーダン側からはインフラ整備だけでなく、整備のための人材育成も強く要望されており、研修、OJTも実施し、マラカルタウンの復興を3本柱で支援していきます。

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建設されてから50年以上の浄水場から供給される水質は極めて低く、人々はナイル川の原水を利用して生活している。給水率は東アフリカ最悪といわれている

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市内で舗装されている道路はほとんどないうえにブラックコットンソイルと呼ばれる土質によって、雨季には四駆、ロバすら通行できず陸の孤島となってしまう

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20年にわたる紛争で不在の人材を育成する。2011年12月には州の指導者層を招へいし、日本の戦後復興・開発の経験から、南スーダンの復興や地域開発をどのように進めていくべきか、また州の指導者層としてどうあるべきかについてディスカッションが繰り広げられた

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マラカル港。地域のハブ港として利用されているものの、施設は老朽化し効率も、安全性も低い作業がなされている