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【外国人材】京都代表として特定技能者2名が全日本自動車整備技能競技大会に出場 大会初の外国籍チームとして善戦 その背景に迫る!

2025.01.10

全日本自動車整備技能競技大会で京都代表チームとして出場

外国人材の存在が社内の活性化やコミュニケーションのきっかけにつながる

組合が行うからこそできる きめ細かな監理サポートを実現

京都府自動車整備商工組合(京整商)は、2019年に全国の整備商工組合で初めて外国人技能実習制度の監理団体としての事業認可を受けました。現在はカンボジアやフィリピンから人材を受け入れ、入国から帰国まで全面的にサポートをしています。
監理団体の事業認可に先立ち、京都府自動車整備振興会(京整振)が協力・出資してカンボジアに送り出し機関を設立しました。送り出しから受け入れ、技能実習や特定技能への移行まで一貫してフォローが可能なことから、同制度に興味を持つ組合員工場は増加傾向にあります。
これまでに30事業者が同制度を活用し、技能実習生は累計110人、特定技能1号は同19人を受け入れています。



同制度を推進するのは、自身も新車ディーラーで自動車整備士として勤務経験もある技能実習生監理部職業紹介部の石村直哉主任。
組合員が抱える人材不足を解決する手段として展開しています。石村主任は「専業工場は企業規模などの面から技能実習生を受け入れたくても1人が精一杯なところも多い」としたうえで、大規模な監理団体ではできないサポートを重視しています。例えば、監理団体が行う実習生や企業担当者らとの1カ月に一度の面談や訪問指導は、一社につき一人のために行うと効率が悪いと考える監理団体は少なくありません。そのため、受け入れの条件として二人以上と指定されることもあります。さらに、一人の受け入れは相談相手などがいなく、孤立や失踪につながることも指摘されています。

京整商ではエリアを点でなく面でとらえることで、徒歩や自転車で仲間に会え、地域に友達がいる環境を作り、一人で悩まないような仕組みを整備しています。「普段から接点を増やし、顔を見に行くなど関係性も大事にしている。他の監理団体が対応しにくいエリアや企業規模のところもサポートできるようにしている」といっています。また、クメール語と日本語を織り交ぜた評価試験対策などを含むeラーニングメニューを独自に構築。こうした細かいサポート体制を拡充するために、カンボジア人通訳を含め4人が専属で監理業務にあたってきました。石村主任は「採用の入口は人手不足だったかもしれないが、一度受け入れるとみんな考えが変わってくる。『(外国人材の採用が)会社がまとまるきっかけになった』と話す工場もある。今後もさらに増えていくだろう」とみています。

最も効果的な学習方法は日本人と話すこと 顧客と話すことで敬語も学ぶ


同制度を活用し、外国人材を採用した工場の一つが京都市中京区で創業70年を超える歴史を持つ光自動車工業(中井一雄社長)。乗用車から大型車まで、販売・整備・板金塗装・車両管理などをトータルで展開する〝自動車の総合病院〟です。
同社には特定技能1号として働くタラン・チャイヤーさんが在籍しています。


チャイヤーさんは6年前に滋賀県内のカー用品店に技能実習生として来日。その後、京整商のサポートのもと、同社で働くこととなりました。同社では新人が入社すると中堅社員がOJT(職場内訓練)で教育します。外国人材においても教育内容は同様となります。中井社長は整備人材の育成・定着について「中堅社員の役割が非常に重要」と考え、適正配置を心がけています。チャイヤーさんの教育担当者について「非常に面倒見が良い。クメール語を勉強したり、仕事以外でもコミュニケーションを取っているようだ」と関係性の構築とリーダーシップを高く評価します。チャイヤーさんは「先輩はなんでも優しく教えてくれる。エンジンの載せ替えもタイヤ交換も、何をしていても楽しいが一番好きな仕事はお客さまからのニーズを聞き、提案をすること」だと話します。

光自動車工業のタラン・チャイヤーさん(29)

チャイヤーさんの日本語の勉強方法はカンボジアから使用している教科書を読み込むこと。「ひらがなやカタカナはわかるが、漢字は難しい。(漢字は)場所の名前や苗字で読み方を覚えている」と明かしてくれました。また、音声テキストを繰り返し聞きながら発音を学びます。
ただ、最も効果的な学習方法は「日本の人と話すこと。お客さまと話すと敬語も学べる」とし、日々の生活が日本語能力の引き上げに欠かせないことを強調していました。

将来の夢はカンボジアで自動車工場を立ち上げること。その夢に向けてまずは「たくさんの技術を学ぶために、特定技能2号とN2を取りたい。その後は2級資格、最終的には1級資格も取りたい」と考えています。家族と日本で暮らすという夢の実現に向けて「今できること、日本でしかできないことを増やしていきたい」といいます。
中井社長はチャイヤーさんについて「限られた時間の中でできることに愚直に取り組んでほしい。そして日本人の社員にもその姿を見てほしい。きっと職場の活性化につながるのではないか」と期待しています。

外国人材の存在が既存社員のモチベーション向上に効果を発揮

チャイヤーさんとともに日本自動車整備振興会連合会が主催する「第24回全日本自動車整備技能競技大会」に大会初の外国人メカニックチーム(京都代表)として出場したのが、京都市西京区の清水自動車工業(清水寿和社長)のサムリット・ブッティさん。同大会には同社の社員全員で応援に駆け付けました。

 同社は整備を中心に事業を展開しています。社員はパートを含め6人。そのうち2人がカンボジア人スタッフです。ブッティさんは19年に技能実習生として同社が受け入れ、現在は特定技能1号として働いています。技能実習生を採用した背景について清水社長は「ここ5、6年で周りの同業者が整備士不足で廃業を選択することが増えてきた。人材不足を理由に仲間が減っていくのは辛いと思っていたタイミングとこの制度を知る機会が重なったことで、まずは自分の会社で挑戦してみようと考えた」といいます。当時、自社では人材不足は感じていなかったものの、頭の中には将来に向けて必要になる可能性もかすめていました。

清水自動車工業のサムリット・ブッティさん(37)

 
採用に向けて、社員に説明するときには「反対意見が出たらどうしようかと少し考えた」と当時を振り返ります。ただ、「(ブッティさんの)素直さや真面目さ、勤勉さもあるが、既存社員が教える喜びを感じ、働くモチベーションにもなっている」と感じ、その結果「貴重な戦力となっており、なくてはならない存在」といわれるまでに成長しました。

 ブッティさんは先輩社員について「分からないことは何でも先輩に聞く。なんでも知っていてかっこいい」と目を輝かせます。「日本の整備技術は世界一だと思う。もっとたくさんの技術を身に付けたい」と話し、「将来はカンボジアで自分のガレージを作りたい」と夢を語ります。まずは特定技能2号を目指し、日本語の勉強を心がけています。ただ「日本語はとても難しい。仕事が終わって疲れていると教科書を見ないで寝てしまうこともある」と明かすブッティさん。分からない漢字はスマートフォンでかざして読み方や意味を学んでいるほか、動画などを見て学習するとのことです。

 清水社長は「せっかく時間とお金をかけて来ているのだからさまざまな経験を積んでほしい。国家資格も取ってほしいし、また機会があるならば技能競技大会にも挑戦してもらいたい。技術をしっかりと学び、母国で若い人に日本の整備技術を教えられるような人になってもらえたら嬉しい」とエールをおくります。同時に、地元の祭りに連れ出し、神輿をかつぐ体験などを通して、日本の文化の体験や近隣住民とのコミュニケーションにつなげています。清水社長は周囲の整備工場の経営者らに「外国人を採用することについて聞かれると『抜群だよ』」と自信を持って答えています。

全日本自動車整備技能競技大会で京都チームは初の外国人のみで編成されたチームとして全国から注目を集めました。
その背景には選手の日々の努力のみならず、京整商の手厚いサポートや、受入れ事業者の理解、良好な人間関係からもたらされる「人」が成長できる環境がありました。

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お問い合わせ先

社会基盤部 都市・地域開発グループ : imgge@jica.go.jp

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