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【外国人材】読み書き、会話を含めた日本語能力の向上がポイント(石川編)

2025.02.14

教育を仕組み化。徹底的な日本語教育ときめ細かなサポートが重要

外国人の受け入れは、みな〝最初は不安〟
他社がどう対応しているかを知ることで不安解消へ



今回は石川県内の3つの整備工場で特定技能、技能実習生として働くスタッフと彼らをサポートする教育を仕組みとして提供している「ダイバーシティマネジメント社」(野崎幸恵代表、石川県金沢市)について紹介します。

入社後できるようになったことなどをレポートとしてまとめた


テさんはポストに投函されたチラシやスーパーのレシート、パンフレットなど身近にあるあらゆるもので日本語を学ぶ

「ダイバーシティーマネジメント」代表の野崎さん



車検点検、保険、ロードサービス、板金塗装など、24時間365日フルサポートを20人のスタッフで展開するTMコーポレーション石川(秋田純平社長、石川県金沢市)は、2024年2月からミャンマー国籍のチョウ・リン・ソーさんを技能実習生として受け入れています。秋田社長は「コミュニケーション面などの不安があった」と受け入れ前を振り返り、ただ、ダイバーシティマネジメント社のノウハウを取り入れた辰口自動車販売(室谷眞一社長、石川県能美市)での前例や教育サポートにより決断できたと言います。




外国籍スタッフの受け入れは、既存スタッフの理解が欠かせません。そこで秋田社長は事前にミャンマー国籍のスタッフを受け入れたいと思っていること、しっかりと育成し、会社の戦力にしたいと考えていることを既存スタッフに説明し、理解を得たそうです。


 受け入れに当たって、ダイバーシティマネジメント社が入社前からSNSを活用し徹底的に日本語と日本の生活文化、志などを教育します。入社後も週1回の日本語教育を継続しキャリアプラン等も含め彼らと企業の架け橋となっています。

帰国後も視野に入れた人材育成を徹底している

野崎代表は「われわれと受け入れ企業との連携が非常に重要」とし、生活指導者、現場指導者との定期的なコミュニケーションを欠かさないそうです。

チョウさんについて秋田社長は「なんでも挑戦してもらいたいし、なんでもできるように教育したい」と考えています。現場指導を担当する橘翼さんは「最初は自分が作業しているのを見せて、実際にやらせてみて、できなかった部分を教える」と言います。分からずに失敗することはあるということを前提に卯尾彬店長は「失敗は誰でもある。自分がフォローをするから失敗を次に生かしてほしい」と話しています。


チョウさんは「日本で板金塗装や整備技術などしっかり学びたい。そして日本の整備機器を買って帰国後はクルマ屋を開きたい」と夢を語ります。入社9ヵ月で日本語能力検定試験N2合格の実力を持つチョウさんは、いまも教科書や動画、日本のアニメなどを通して語彙力を高め、意欲的に学んでいます。

夢を持つ人しか受け入れない。だから本気で育てる

日本で楽しかったこととして小舞子(白山市)での釣りだと答えたチョーさん



辰口自動車販売では特定技能のアウン・モートン・ナインさんと3級自動車整備士資格を持つティン・テ・エーさん、技能実習生のチョー・ジン・ウーさん、ニニ・ウィン・ヌェーさんの合計4人が働いています。

人は皆ミャンマー国籍です。同社ではかつてフィリピン国籍のスタッフを受け入れたこともありました。その経験から「日本語レベルの重要性を痛感した」(室谷社長)そうです。


同社が重視するのは整備技術も語学も同時に学び、帰国後に役立つ育成をすること。


「日本で学んだことが帰国したときに使えないような教育ではいけない。だから本気で取り組むし、夢を持つ人しか受け入れない」と強調します。そのためにも、ダイバーシティマネジメント社のサポートの下、漢字を含めた読み書きを通して、日本語の理解力を高めるサポートをしています。現在は4人ともN2レベルの実力を備えており、現在も勉強中です。

ナインさんは友人と波打ち際をドライブできる「千里浜なぎさドライブウェイ」に行ったという


3級自動車整備士資格取得に向けて努力を続けるナインさんは「板金塗装の仕事が面白い。塗装は難しいが面白い」と話します。車検整備などを担当するテさんは「スキャンツールを使った故障診断、修理が楽しい」とやりがいを感じています。


23年5月から働くチョーさんは「最初は難しいと思った調色も慣れてくるとわかるようになってきた」と成長を実感。「帰国後は自分の整備工場を開きたい」と話すニニさんは塗装に面白みを感じているそうです。3級整備士資格を取得したテさんは講習に通わず検定試験に合格した。野崎代表は「日本語が理解できるから学科合格につながる。日々の業務が実技試験の勉強につながる」と好循環を実感しています。

外国籍のスタッフが入社して会社の雰囲気が良くなった


ヨシダ自動車(吉田寛治社長、石川県小松市)は24年4月からミャンマーのニョー・リン・アウンさんとチョー・ゼーヤ・リンさんを受け入れています。ともにダイバーシティマネジメントの教育を受けており、入社8カ月で日本語能力検定試験N2に合格しました。アウンさんの夢は「自分のクルマ屋を持つこと」。そのためにも車検整備やオプション作業などを通して、日本の整備技術の習得に力を入れています。

料理好きな一面もあるアウンさん

リンさんは休日に動画やアニメを見て過ごすことが多い



合わせて、日本語力もさらに高めたいと考え、1日1時間以上は必ず日本語の勉強を行っています。日本の文化に興味があったリンさんは「知らないことを知って、少しずつ整備技術が身につくことが嬉しい」と感じています。日本語は「毎日日本人と会話をすることやアニメを見ること」で〝生きた日本語〟の習得を目指しています。同社の吉田慶二副社長は「受け入れ前は会社に馴染めるか、仕事についていけるのか、社員とのコミュニケーションは取れるのかなど不安はあった」と話しますが、9カ月経った現在は「不安は全くない」と笑顔で話します。


最初こそ「社員も『大丈夫かな』という目で見ていた」と言いますが「クルマが好きで、教えたことをみるみる吸収していく」二人の姿勢が周りのスタッフを変え、「彼らが来て職場の雰囲気が良くなった」と実感します。今では現場に欠かせない存在になっているようです。

日本の桜を見て感動したと話したニニさん



吉田副社長は「日本語でコミュニケーションが取れるという点が非常に大きいのでは」と話し、教育の仕組みが効果を表しているようです。
吉田副社長は「将来的にはクルマの受け入れ状態の説明や接客なども任せたい」と考えています。

野崎代表は「整備工場は人を育てる文化がないところが多いが、大事なのは人を育てようという意識があるかどうか」と強調します。「その意識があれば、あとは日本語の習得をベースに企業とともにスキルマップを提案する段階に進むことができます」と野崎代表。「日本で働くための共通言語は日本語。
日本語ができればコミュニケーションが取れる」と話した室谷社長の言葉がすべてを表しているのかもしれません。

TMコーポレーション石川 秋田社長(左)とチョーさん(真ん中)と現場指導者の橘翼さん(右)

辰口自動車販売で働くナインさん(左)、ニニさん(左から2番目)、チョーさん(中央)、テさん(右から2番目)、室谷社長(右)

ヨシダ自動車 現場指導者の兼重亮さん(左)とアウンさん(中央)とリンさん(右)

お問い合わせ先

社会基盤部 都市・地域開発グループ: imgge@jica.go.jp

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