西バルカンからの研修生と富山県富山市、石川県金沢市を訪問しました!2025年1月
2025.03.03
2025.03.03
北陸地方は、特徴あるまちづくりを展開している都市がいくつもあります。文化都市の金沢市、コンパクトシティで有名な富山市等。
しかし、何といっても、北陸地方に共通して言えることは、鉄道等公共交通が発達していることではないでしょうか。
北陸新幹線やJR線をはじめ、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、ハピラインふくい、富山地方鉄道、万葉線、のと鉄道、北陸鉄道、えちぜん鉄道、福井鉄道等、多くの民間鉄道事業者による鉄道が地域住民の足として活躍しています。
立山連峰を望む運河
そのような北陸地域の都市公共交通の管理・運営を紹介するために、都市・地域開発グループは、西バルカン(ボスニアヘルツェゴビナ、北マケドニア、コソボ、アルバニア)の行政関係者を対象に、本邦研修を企画し、2025年1月27日から2月3日にかけて、富山県富山市、石川県金沢市を訪問しました。
富山市、金沢市の講義・視察では、日本の地方都市が抱える課題、それぞれの地域特性を活かした取り組み、交通事業者との協力の重要性等を学ぶことができました。
西バルカンの主な公共交通はバスとなっており、朝夕のラッシュアワーの時間帯の渋滞が一つの課題となっています。そのため、金沢市の”車中心から人中心のまちなか”を目指すバス専用レーンやパーク・アンド・ライドの充実化に向けた取り組みは「複雑な仕組みではないため自国でも取り入れやすい」と、参考になることが多かった様子でした。
TOYAMAキラリ(ガラス美術館ほか)
今回の研修生は行政機関からの参加者が多かったこともあり、行政が主体となって多くの関係機関を巻き込んだ富山市の施策の話は、研修生にとって学びの多い講義・視察となりました。
特に「市長が変わっても掲げたビジョンを追い求める組織の姿勢」に感銘を受けた様子でした。
金沢市の講義の様子
LRTとフィーダーバスの接続
視察の様子
富山市の交通事業者である富山地方鉄道の講義では、富山市のビジョンに対して協力的な姿勢を問う質問が多く、「富山市が中心となり、様々な機関が一つのビジョンに向かって協力できるのは素晴らしい」と研修生からコメントがありました。一方で「ビジネスということを考えるとなぜ赤字路線を運営し続けることができるのか」等の質問もありました。富山地方鉄道は研修生からの質問・意見を受け、「世界的なスタンダードである欧州の方々からの質問・意見を通じ新たな気づきがあった」と、双方向の学びに繋がる時間となりました。
富山大学 中川先生の講義の様子
富山大学の中川先生の講義では、北陸新幹線の開通により、新幹線と並行する北陸本線がJRから第三セクターに転換され、この転換を機に沿線の利便性を向上させる取り組みが富山市を中心にして行われたという説明がありました。このような行政が地方交通を支える考え方は、実は西バルカンを含む欧州ではスタンダードな考え方であり、講義内容について非常に親近感を感じていた様子でした。
研修の最終日には、研修生から「東京は最先端の技術の採用や規模感が異なるため実現が困難なところが多いが、富山や金沢の取り組みは規模感が近いこともあって参考になることが多い」と北陸地方の訪問に対して賛同する声が多くありました。
今年の5月には、研修の対象都市の一つであるスコピエでセミナーを開催する予定です。セミナーは、今回の研修に参加した12名にも来ていただき、研修を踏まえて提案・考えた改善策の実施・取り組み状況の確認や対象国間のネットワーク強化を図ることを目的として実施します。そのときに本研修で習得した知識・技術が活用されている報告を聞けること期待しています。
今回の研修のように日本の地方都市の独自の取り組みが、JICAが支援する途上国が自分達の課題を解決する上でのヒントや気づきを与えるケースがあります。反対に海外の方たちの視点の質問・意見により、日本側関係者が、当たり前と考えていたことの価値への気づきや疑問、新たな発見を得るケースもあります。JICAは、日本の自治体の持つ、途上国の課題解決に対する強みや取り組みについて、研修等を通じて途上国に紹介しつつ、日本の自治体のプロモーション、お互いが学び合えるような環境・関係構築の機会を提供していきたいと思います。
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