【外国人材】自動車業界に就職を目指すための日本語学校を設立(ウィン)(2025.03.24)
2025.03.24
同社グループでは1拠点2人以上の外国人材を配置する(写真はホンダカーズ三河)
「すべてはお客様のために」を企業理念とするウィン(加藤博巳社長、愛知県岡崎市)は、外国人材の紹介と教育により、企業と外国人材の役立ちにつなげる取り組みに注力しています。
同社が外国人材の採用を本格化したのは2009年のこと。リサイクル部門において海外と中古パーツのやり取りがあった関係で、外国人材の受け入れを開始しました。
加藤社長(写真中央)とウィンの弓達常務(同左)、ホンダカーズ三河の蓮川常務(同右)
これまでにタイやベトナム籍などの人材採用実績があります。採用を始めたころは文化や風習が異なるため、既存社員とのコミュニケーションがうまくいかなかったり、トラブルもあったそうです。
加藤社長は「なんでも最初は大変」ととらえ、配置換えなどをしながら見極めてきました。現在はベトナムの送り出し機関と連携していることもあり、「〝ベトナムと日本の架け橋〟となるべく、送り出し機関とともに教育を行い、人材を育てること」(加藤社長)を重視しています。
同社は自動車ディーラー事業、自動車整備事業、U―car事業、日本語学校、人材紹介事業を展開します。
グループにはホンダカーズ三河があります。ホンダカーズ三河は自動車整備職種が対象職種となった16年から外国人技能実習の受け入れを開始しました。
当初は日本語レベルの問題から、日本人スタッフとのコミュニケーションが難しかったこともあり、洗車に関する後工程や作業などを任せていました。
日本語の勉強は今も欠かさないトンさんはアニメやインターネットを活用することが多い
日本人スタッフも技能実習生について「3年ほどで帰国してしまう人」ととらえ、技術を教え込むという意識が少なかったようです。
ただ、加藤社長は「技術を身に付けて帰国してもらわなければならないのに、このままではいけない」と思い、コミュニケーションと日本語教育が必要だと考えたそうです。
そこで、日本人、外国人材らを食事会や登山などに誘いコミュニケーション機会を増やしました。
ウィンの人材開発事業部の弓達孝常務取締役は「外国人と接する機会がなかっただけ。日頃からコミュニケーションを取り、知ろうという意識、理解しようという環境を社長が作ってくれた」と企業風土が変わったきっかけを振り返ります。
21年には自動車業界への就職を目指すためのウィン日本語学院を立ち上げました。一方で、外国人技能実習生の受け入れ事業などを行う「GHR協同組合」も設立。同社の人材開発事業部とウィン日本語学院、GHR協同組合が連携することで、外国人材が日本で自動車整備士として活躍するための環境づくりを行いました。
こうした環境が整っていることがベトナム人コミュニティの中で話題となったのか、同社への就職を希望する人材は増加しています。
今年の夏は家族で沖縄旅行を計画しているというトンさん
同社への就職を希望する外国人材が増えている背景には、同社が外国人材も日本人材も区別なく評価することにもありそうです。
例えば、日本語能力試験はN3・N2・N1の認定を取得すると手当が付きます。また、自動車整備士資格も3級、2級、1級、検査員資格などに手当が支払われます。そのほか、ホンダ独自の認定資格も同様です。講習費などは業務の一環として会社が負担するなど、万全のサポート体制を整えています。
加藤社長は「日本人と外国人の区別はしない。お金もチャンスも同様だ」と強調します。さらに、整備士のベースアップは2年連続で実施しました。
会社としてベースアップを続けることは苦しいとの見方もできますが加藤社長は「サービスは重要。スタッフは宝」と強調します。
休日は家族で寿司を食べに行くことが楽しみだという
ホンダカーズ三河の蓮川利幸常務取締役営業部長は「外国籍のサービススタッフに聞くと、『高難度整備をやらせてもらえることが嬉しい。やりがいがある』などと笑顔で話してくれる」と言います。受け入れ当初のことも知る蓮川常務は「採用実績が増えてきたことで、受け入れ側もノウハウが蓄積されてきた」と感じています。いまでは「現場でスタッフが冗談を言い合って笑っている姿が日常」と話します。
15年に入社したグエン・ドク・トンさんは技術・人文知識・国際業務ビザで2級整備士資格を持ち働いています。来日当初は「日本の文化を勉強して帰国するつもりだった」と振り返りますが「いまは日本でずっと働きたい」と笑顔で語ります。妻と子どもが二人おり、子どもは日本の小学校に通っています。将来は「工場長になりたい」と夢を語ります。
同社ではすでに外国人材の役職者がいます。
加藤社長は「今後は工場長などもっと上の役職を目指してほしいし、能力がある人達はどんどん引き上げていきたい」と考えています。また、事務スタッフや営業スタッフにおいても外国人材が増えていくことを期待しています。弓達常務は「企業が日本人と外国人は同じという考え方になることで」働くスタッフの意識も変わってくる」と考えています。
同社の取り組みは、加藤社長の強いリーダーシップが外国人材を受け入れる風土をつくりあげ、外国人材が働きやすい環境支援のために日本語学校を作るなど〝社長の本気〟が会社を変えるという好事例といえそうです。
社会基盤部 都市・地域開発グループ: imgge@jica.go.jp
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