【コロナ対策】消毒された安全な水をタジキスタン全土で継続供給-ピアンジ県・ハマドニ県上下水道公社給水事業運営能力強化プロジェクトによるCOVID-19対策支援-

2020年7月20日

JICAは、タジキスタン政府の要請に応じて、消毒された安全な水道水の供給を継続するため、タジキスタン全土の水道事業体が利用する塩素剤(さらし粉)の調達を支援しました。新型コロナウイルス対策の基本となる手洗いを励行するためにも安全な水は必要不可欠であり、この支援によって約105万人のタジキスタン国民が裨益します。

タジキスタンは、中央アジアの南東部に位置する内陸国で、人口は930万人、国土面積は日本の40%ほどの小さな国です。今年3月に入って、周辺国で次々に新型コロナウィルス(COVID-19)の感染者が報告される中、タジキスタンは4月末に初めての感染者が報告されました。その後、急速に感染が広がり、5月には一日に400人を超える感染者が見つかっています。5月をピークに感染者数は減ってきていますが、現在でも一日50人前後の感染者が報告されており、累計の感染者数は6,878人、死者数は57人(7月20日現在)となっています。

タジキスタン政府は、COVID-19の感染対策として、他国と同様に空港の乗り入れ制限や、外国人・タジク人の別なく、入国者の2週間の隔離措置を行っています。また、一部の事業所に対する営業自粛や集会の制限、公共の場でのマスクの着用が義務付けられ、違反者は25ソモニ(約2,500円)の罰金が課せられるようになりました。また、保健医療分野への優先的な予算配分や街中の消毒作業などを行っていますが、もともと、国として財政的に厳しい状況にあるところに今回のCOVID-19対策の出費が重なり、十分な感染対策が取れない状況にあります。

現在、JICAはタジキスタンで上水道分野の技術協力として「ピアンジ県・ハマドニ県上下水道公社給水事業運営能力強化プロジェクト」を実施しています。このプロジェクトは、同国の上下水道事業を統括する住宅サービス公社をカウンターパートとし、その所管の中から2つの県の上下水道公社で、給水施設の運転・維持管理及び経営を含めた運営面での能力強化を行っています。COVID-19の対策として有効である安全な水を供給するための給水の消毒処理(塩素消毒)の指導も重要な活動の一つです。しかし、水道水の消毒に利用する予定であった塩素がタジキスタン国内の保健分野において緊急に使用されており、水道用の消毒剤の入手が困難となっています。また、COVID-19の影響で水道料金収入が減少するなど、住宅サービス公社の財政状況も厳しくなっており、全国の上下水道公社で使用する消毒処理のための十分な量の塩素剤(さらし粉)を調達できない状況にあります。

このような状況下、本プロジェクトでは住宅サービス公社の要請に応え、300トンのさらし粉の供与を決定しました。このさらし粉の供与にあたって、住宅サービス公社にさらし粉の在庫状況を確認したところ、全国の上下水道公社には1ヶ月未満の在庫しかないことが分かりました。このため、緊急に35トンのさらし粉を調達し、住宅サービス公社に引き渡しました。

この対応は、さらし粉の供与を決定してからわずか2週間足らずで実現した支援で、他のドナー国や国際機関の中でも、タジキスタン政府の要請に応えて最も早く実現したCOVID-19対策支援の一つとなりました。また、この迅速な対応により、さらし粉の在庫が切れ、消毒処理がされないまま給水されるといった最悪の事態を回避することができました。さらし粉の調達は、最初の35トンに引き続き、複数回に分けて行われる予定になっており、高品質なロシア製あるいはイラン製のさらし粉が調達される予定です。なお、調達されたさらし粉の在庫管理や全国の上下水道公社への配送管理は、JICAタジキスタン事務所、本プロジェクトの現地スタッフ、アガハーン財団のボランティアが行っています。

タジキスタンの人々は、日本人と同じようにお茶をこよなく愛します。このため、水の味には大変敏感で、給水の消毒のために添加する塩素の濃度が高めで塩素臭がすると利用者からクレームがあります。最近、日本でも「おいしい水」が求められるようになり、給水中の残留塩素濃度をできるだけ低く押さえる試みが行われています。ここタジキスタンでも、適当に塩素を添加すれば良いのではなく、安全でかつおいしい水を求める利用者の要望に応えるため、JICAの技術協力プロジェクトによる塩素消毒に係る技術指導が益々重要になっています。

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調達された高度さらし粉

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さらし粉の在庫・配送管理を行う現地スタッフ

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全国の上下水道公社へ配送されるさらし粉

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塩素注入に係る運転管理指導

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残留塩素濃度の測定

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我が国の無償資金協力事業で建設された高架水槽

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安全な水の給水