日本は、非西洋から近代化を成し遂げた最初の国であり、自国の伝統と文化を損なうことなく、法に立脚し、自由で民主的、平和で繁栄した国家建設を実現した国です。これら成功・失敗を含めた日本の経験は、開発途上国が現在直面する開発課題と共通するものがあり、知見として共有する価値があります。同時に、近年目覚ましい経済社会発展を遂げているアジア諸国への政府開発援助(ODA)を通じて、日本は多くの開発協力経験を有しています。

これら自国の近代化と海外での開発協力の過程で蓄積した経験と教訓を活かし、日本は世界の開発学をリードし、世界の持続的な発展に積極的に貢献する国となり得ると考えています。

JICAでは、開発途上国の各分野で成長と発展を支えるリーダーとなる人材を育成すべく、日本のさまざまな大学と連携し、2018年「JICA開発大学院連携プログラム」を立ち上げました。このプログラムでは、開発途上国の将来を担う意欲と能力を持った人材を日本に招き、大学の学位課程の中で専門分野の教育・研究に加え、欧米とは異なる日本の近代の開発経験と、戦後の援助実施国(ドナー)としての知見の両面を学ぶ機会を提供しています。

2020年には、日本の開発経験を学ぶ機会を国外にも広げるため、開発途上国各国のトップクラスの大学等を対象に、「日本研究」の講座設立支援を行うプログラム「JICAチェア」を開始しました。

日本国内と海外において「日本の開発経験」を学ぶ機会を提供することで、開発途上国の人材が、体系的に日本を理解し、母国の発展に効果的に役立ててもらうことを狙いとしています。同時に、これらの人材が知日派・親日派のトップリーダーとして活躍し、両国間の関係が中長期的に維持・強化されること、途上国からの優れた人材の受入を通じて、国内の地域活性化や大学教育の活性化、日本でのグローバル人材育成などの副次的効果も期待されます。