キルギスに日本型薬剤師教育を導入-(株)薬ゼミ情報教育センターがキルギスで薬剤師の継続教育に挑戦-
2020.09.25
中央アジアのキルギス共和国(以下、キルギス)で、薬剤師の継続教育に関する約1年間の調査が終了し、同国の医療教育向上、医療水準の向上や医療系国家試験開発の支援に繋がる可能性を見出しました。
漫画やドラマの題材として取り上げられ、注目を集める「薬剤師」。薬剤師は薬局や病院で処方箋に基づく調剤やお薬の説明、時には医薬品に関する相談にものってくれる身近な存在であり、適切な医療を提供するための重要な役割を担っています。
薬は人の健康、命に直結するもの。そのため、高い専門性が求められます。日本の薬剤師資格は、6年制の薬学部の過程を卒業した上で薬剤師国家資格に合格しなければならない、難易度の高い資格です。
一方、途上国ではまだ薬剤師資格の整備は十分ではないのが現状です。今回の調査の対象となったキルギスにおいても、国家的な薬剤師資格制度がありません。「薬学部を卒業すれば薬剤師になれる」という中で、本来薬剤師として求められる患者に医薬品の適正使用を促す指導力の担保・維持が難しい状況でした。
そのため、薬剤師が単なる販売員と化していて、抗生物質の不適切な使用や多剤投与等が発生し、患者の健康への影響と家計への負担の増加も問題となっています。
このような状況をキルギスの保健省は憂慮しており、質の高い医療人材の育成を喫緊の課題としています。
これらの課題に対し、(株)薬ゼミ情報教育センターは日本国内で実績のある薬剤師教育をキルギスに導入することで薬剤師育成に貢献すべく取り組んでいます。
同社は、日本国内で薬剤師になるための予備校や模擬試験の実績が豊富な企業です。2018年度第二回「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の案件化調査に応募、採択され、2019年5月から調査を開始しました。
「キルギスの薬剤師は、5年間で250時間の卒後継続研修が義務付けられているものの、運営機関のリソース不足やコンテンツ不足のため上手く機能していない状況でした。そこで、日本で毎年数千名の薬剤師輩出に貢献してきた教育ノウハウと現地のニーズを組み合わせ、手軽に導入できるE-learningを提供することにしました。また、国家試験制度がないことも薬剤師レベルを低下させている原因と考え、国家試験のトライアル版を作成し、保健省や教育機関に提案することにしました」と同社の担当者である中島大理さんは語ります。
案件化調査では、キルギスの保健省や教育機関と複数回にわたり意見交換、打ち合わせを行い、国家試験開発支援や現役薬剤師へのE-learning研修の実施を通じてビジネスとしての可能性を確信するに至りました。
薬学生向けE-テスト風景
薬剤師向けE-learning事後テスト
国家試験開発支援では、日本の薬学分野に関する問題を約1,000問提供。薬剤師へのE-learning研修では、現状の実力を測るための薬理・病態学を中心とした事前テストと、研修効果判定のための事後テストを実施しました。結果、平均得点率は事前テストの41.7%から事後テスト72.5%へと大幅に上昇しました。
「今回の取り組みで、受講生が正確で重要な知識を身に付けることができ、当社のE-learningコンテンツがキルギス国の薬剤師教育にも有用であるということを示すことができました。その結果、調査実施中に現地で薬局を経営する大手企業複数社から、自社の社員(薬剤師)育成に関する引き合いを得ることもできました。この取り組みを事業化し、キルギスの医療系国家試験開発と薬剤師の継続的な教育で、同国の医療教育と医療水準の向上に繋げていきたいです。」と中島さんは力強く語ってくれました。
詳細は報告書をご覧ください。
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