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3D測量でマチュピチュ遺跡の保全に挑戦-JICAスタッフが遠藤社長にインタビュー-(株式会社ふたば/福島県/2019年度基礎調査)

2023.02.06

2021年に創業50周年を迎えた株式会社ふたば(以下、ふたば社)は3D測量技術を持つ、建設コンサルティングや測量を行う企業です。「フィールドはふるさとから世界まで」をモットーに、2019年12月からJICAと連携して中小企業・SDGsビジネス支援事業「ペルー国マチュピチュ地区での3D 測量技術による文化遺産の保全と活用のための基礎調査」を実施しました。
1917年に福島県大玉村から移住した野内与吉さんが、マチュピチュ村の初代村長として同村の発展に貢献したことから、2015年にマチュピチュ村と大玉村は友好都市協定を結んでいます。ふたば社(当時双葉測量設計)の本社があった富岡町は、2011年に発生した東日本大震災・東京電力福島第一原発事故で全町避難となりましたが、富岡町からの避難をいち早く積極的に受け入れたのが大玉村でした。ふたば社はその大玉村に「恩返し」をするべく、大玉村と友好都市協定を結ぶマチュピチュ村のために2019年に本民関連携事業に応募し、採択されました。

マチュピチュ遺跡が災害によって崩れてしまう可能性

マチュピチュは15世紀のインカ帝国の遺跡で、アンデス山麓に属するペルーのウルバンバ谷に沿った山の尾根(標高2,430m)に位置します。世界遺産で有名なマチュピチュですが、 マナー違反的な行動等による人為的被害や、集中豪雨等の自然災害によって、遺跡の風化・劣化が進んでいます。
このような状況に対し、ふたば社は3D 測量でマチュピチュ遺跡の中心部を計測し、3D データを取得・保存し、遺跡の形状を正確に記録しておき、人為的被害や自然災害による損傷からの復旧・補修、効果的な保全対策等に活用すべく調査を実施しました。

ふたば社代表取締役社長遠藤秀文さんにインタビュー

佐藤(JICA)
「ふたば社は2022年5月8~20日の期間でペルーに渡航されましたが、今回の現地調査はどのような計画・目的だったのでしょうか?」

遠藤社長
「事業化検討チーム(3名)と現況調査チーム(2名)に分かれて計5名で現地調査を行いました。首都リマに到着後、JICAペルー事務所、日本大使館、文化省を訪問しましたが、文化省への表敬訪問では副大臣も出席し、本件への関心の高さが感じられました。翌日には標高3,400mのクスコに移動し、本格的に現地調査を始めました。標高が高く酸素濃度も低いため、高山病になりやすく、非常にタフな環境での調査でありました。
また、今回の調査では、JICAペルー事務所関係者と本調査内容や工程などを協議し、翌日のクスコ市からマチュピチュ遺跡の現地調査に同行頂きました。また、文化省への現地報告会にも同席頂き、本調査を通じて要所で貴重なご助言をいただきました。また、本調査を通じてペルー国内でのJICA新規事業についても貴重なご意見と提案をいただいており、今後、ふたば社は民間連携事業の調査結果を活用しつつ、技術活用可能分野のスコープを更に広げ、ペルー国全土の文化遺産保護・保全に貢献する調査をペルー事務所と共に行ってまいります。団員一同、心より感謝申し上げます。」

佐藤(JICA)
「現地での注目度の高さもさることながら、調査の過酷さも伝わってきますね。どのような調査結果が得られたのでしょうか?」

遠藤社長
「事業化検討チームは、リマも含めて10数カ所の関係機関を訪問してプレゼン&協議を重ね、先進的な3D計測・解析技術を応用した遺跡文化財の保全に加え、防災、インフラ、観光等の各種セクターでのニーズ調査を行いました。現況調査チームはマチュピチュ遺跡の既存データの検証と遺跡調査の現状と課題を把握し、各分野における将来のニーズを抽出しました。」

【画像】

マチュピチュ村のアルパカと遠藤社長

佐藤(JICA)
「盛りだくさんの調査内容ですが、とても意義のある現地調査になりましたね。実際にマチュピチュ村も訪問されたそうですね。」

遠藤社長
「はい、マチュピチュ村ではダーウィン村長を表敬訪問し、意見交換させていただきました。村長は「東日本大震災から福島での復旧・復興で培った経験や技術を防災、遺跡保全、観光等の改善に繋げてほしい」とのご意見をいただきました。そして当社の技術に対する期待として感謝状をいただいたおり、大玉村とマチュピチュ村との友好都市締結をきっかけに、JICAを通じて当社がマチュピチュ村の未来に少しでも関われる機会をいただいたことに大変嬉しく思います。」

佐藤(JICA)
「マチュピチュ村の未来への貢献、とても印象的なお言葉です。今回の現地調査にどのような感想をお持ちですか?」

遠藤社長
「世界で初めて福島県双葉郡富岡町で地震・津波・原発事故の複合災害を直接的に経験した一人として、失ったことばかり考えた時期もありましたが、今思うと得られた貴重な経験でもあったことを実感します。約10日間、ペルーに滞在しましたが、ペルー国内の様々な課題がこれまで経験してきたことと重ねて感じることもあり、人々が感じ思っている事をどのように形創ればいいか想像できるようなっていることを感じました。そして福島の震災復旧、復興で培ってきた経験と技術が様々なところに役立つことも実感いたしました。私たちは東日本大震災以降、幾多の苦しい時を過ごしてきましたが、そこを乗り越えてきた一つ一つにとても大きな意味があることを、本調査を通じて肌で感じました。」

佐藤(JICA)
「震災後の福島県内において、ふたば社は復旧・災害査定や、帰宅困難区域内にある施設のアーカイブ化を行っているほか、遠藤社長ご自身も一般社団法人「とみおかワインドメーヌ」を立ち上げて、富岡町でのワイン畑づくりを通し、地元の風土と個性を活かしたまちづくりに取り組まれています。マチュピチュ村・福島県の未来への貢献に期待すると同時に、ふたば社・遠藤社長の挑戦を応援しています。本日はお話し頂きありがとうございました。」

【画像】

JICAスタッフ:佐藤知美

【案件概要】
<本事業における提案製品・技術>

  • 3D測量(ドローン、レーザスキャナ)
  • 3Dデータ(3次元点群)活用

<特徴・活用範囲>
→地形・物体の形状を正確に再現したデジタルデータ
→設計図、遺跡全体図・断面図、維持管理の検討、VR、模型、地図の作成等

<今回の本事業の目的と現地における今後のビジネス展開について>
マチュピチュ遺跡中心部の既存3Dデータを確認・評価し、適切な保全や修復等への活用方法を提案する。全国に10,000箇所以上ある遺跡の3D測量によるデータ保全・活用事業を文化省から受注することを目指す。
ひいては、ペルー国文化省による「全国遺跡保全プロジェクト」や、JICA による「3D データによる遺跡保全能力向上プロジェクト」等につなげ、全国に 10,000 箇所以上あると言われるアンデス文明、及びスペイン植民地時代の文化遺産の保護と持続可能な活用への貢献を目指す。

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調査団(マチュピチュ遺跡にて)

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MINDEF INDECIでの技術紹介(2022年5月)

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文化省での調査結果報告(2022年5月)

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