世界中の仲間とともに社会課題解決に取り組む ~ 日本のプラスチックリサイクル技術で、カンボジアのごみ山に挑む! ~ 興亜商事株式会社(愛知県)

2024.03.22

1. カンボジアの現状と興亜商事株式会社

カンボジアは2011年から急速に成長し、2016年7月に低中所得国と位置付けられました。このような急成長を遂げる一方、廃棄物の排出量増加に対応出来ていないという問題を抱えています。2004年から2017年の間にごみの排出量は5倍以上になり、1年間で150万トンのごみが発生しています。これは東京ドーム1と1/5個分にあたります。また、首都のプノンペンでは、社会問題となっているプラスチックビニール袋を毎日1,000万枚ほど消費しています。しかし、未だカンボジアにはごみ処理場やリサイクルする施設の整備が整っていないため、毎日奈良の大仏10体分に相当する2500トンのごみの8割が処理されずにごみ埋め立て地に山積みになっています。そして、ここに山積みされたごみの7割以上が再利用できる可能性があることも明らかになっています。
また、カンボジアの貧困地区にはごみ収集サービスが行き届いていない場所もあり、海洋にごみが流出する原因になるほか、不適切な焼却処分はダイオキシンなどの有害物質を発生させるため健康被害をもたらすリスクを生み出します。

カンボジアのごみ処理場。分別されず、すべてのごみが同じ場所に捨てられている。


このようなカンボジアのごみ問題解決に取り組む興亜商事株式会社の社長 奥村雄介さんに、JICAの民間連携事業部でインターンシップをしている河原崎がインタビューをさせていただきました。


河原崎:このような現状に対し、奥村さんが特に問題だと感じる点はどこですか。

奥村:カンボジアでは急速に経済が発展している一方、人々の廃棄物削減に対する意識は以前とあまり変わっていないと感じています。日本ではごみを出す際に、分別のルールをしっかり守り、処理業者のことも考えて、ごみ出しが行われています。しかし、カンボジアでは各家庭を周る資源回収業者が買い取るもの、あるいは近年出てきている販売サイトで売れるもの以外はすべてごみとして認識され、同じ場所に捨てられます。
そもそもの意識の違いの問題がカンボジアにはあると考えています。

河原崎:奥村さんがこのようなカンボジアの状況に向き合おうと思われたきっかけは何でしょうか。

奥村:海外で事業をしてみようと思ったきっかけは、人生1度きりなので、なにか挑戦してみたい、そして日本での70年間の事業経営経験がどれくらい役に立つのか知りたいと考えたからです。その後アジア圏の調査に行き、他国と比べ課題が山積みであるカンボジアでチャレンジしようと決めました。

河原崎:ここにJICAがご協力させていただいているのですね。現在、JICAの中小企業・ SDGs ビジネス支援事業を利用して、カンボジアで普及・実証事業を行っていらっしゃいますが、なぜこの支援メニューをご利用されようと思ったのですか。

奥村:JICAと協働することで、事業を進めやすくなると思ったからです。知らない土地で企業だけで廃棄物処理やリサイクルをやろうとしてもなかなか難しいのが現状です。ここにJICAがいることで、相手国政府や一緒に事業を進める人達との信頼関係を築きやすいといった利点や、相手にJICAがバックアップしているという安心感を与えられると思ったからです。

河原崎:ありがとうございます。では、この支援メニューをどのような形でご利用していただいているか詳しくお聞きしてもよろしいですか。

奥村:主に3点あります。1点目は費用です。この事業はJICAから委託を受けているため、我々のためであって、我々のためではないという特徴があると思っています。なので、日本代表だという気持ちで、JICAと協働し、適切に費用が使われているかを確認しながら、調査を進めています。2点目が情報という点です。JICAの職員と一緒に渡航する機会もあり、JICA職員から直接アドバイスをいただくことが出来ています。3点目に信用度です。先ほども述べましたように、JICAが一緒に取り組んでいる事業であるということで、相手国政府からの信頼獲得に繋がっています。

2. 興亜商事株式会社の技術と取り組み

河原崎:カンボジアの未来を変える貴社のPLAYCLEという技術について教えてください。

奥村:PLAYCLEというのは造語です。プラスチック、リサイクル、そしてプレイという言葉が組み合わさって出来た単語で、遊び心を持ってプラスチックをリサイクルしようという意味を込めています。PLAYCLEでは、種類の混在するプラスチックごみを新たな資材としてよみがえらせることが出来ます。

PLAYCLEの製造現場。製造は現地スタッフが担う。

河原崎:まだまだ分別の意識が低いカンボジアではすべてのプラスチックごみがまとめて捨てられているからこそ、PLAYCLEが製造される意味があるのですね。

奥村:さらにPLAYCLEは建材としていくつかのメリットがあります。例えば、木材と同様の強度を持ちつつも、腐ることがないという点です。また、製造過程で出たごみや使用済みのPLAYCLEを繰り返し製造材料として使用することが出来るので、PLAYCLEだけで循環出来るという利点もあります。

PLAYCLEで作られた椅子や机

河原崎:この技術を使い、カンボジアでどのようなことを成し遂げたいですか。

奥村:PLAYCLEをカンボジアの様々な地域に普及すること、そしてこの取り組みにカンボジアの人々を巻き込みたいと思います。例えば、木材で作られているカンボジアの橋や通路をPLAYCLで作り変えることや、カンボジアの未来を担う子供たちに環境教育を行うことでごみに対する意識の変化を促したいと思います。また、日本企業だからこそ日本の“もったいない精神”も伝えたいです。
実際、この調査にはカンボジアの子供たちにも参加してもらっています。PLAYCLEから生まれたごみ箱を学校に設置し、適切に分別されたごみを捨ててもらったり、またPLAYCLEの製造工場にも見学に来てもらっています。このような活動を通じ、子供たちに分別やごみを減らすことの重要性を教えられたらいいなと思っています。

子供たちのPLAYCLE製造現場見学

学校に設置されたPLAYCLEで作ったごみ箱。子供たちにごみの分別を促す。

河原崎:この調査の過程でJICAを利用してよかったことはありますか。

奥村:JICAの支援を通じ、多くの学びを得られました。多様なJICA人材からの意見や、現地の事情や制度を理解するコンサルタント会社からの幅広い視野のアドバイスをいただけました。また担当者との密なコミュニケーションも私のやる気を一層掻き立ててくれました。調査を通じて出来たことのすべてがJICAのサポートがあったからだと考えています。

3. 今後の展望について

河原崎:現在、日本やカンボジアでも、ごみ問題解決だけにとどまらない様々な社会貢献活動を行っていらっしゃいますが、貴社として、カンボジアや世界に対しての今後の展望はありますでしょうか。

奥村:興亜商事のMissionとして、“地球を救うヒーローになろう”を掲げており、私たちは地域や社会の抱える問題を事業化して解決したいと考えています。その一環として地元愛知県のサッカーチームの運営や雇用を行い、地域課題の解決に取り組んでいます。このチームの選手をカンボジアに派遣することもしました。カンボジアでは今後、1つでも多くのごみ山を減らしたいと考えています。このような社会課題解決を多くの国で、いろいろな人とチャレンジしていきたいです。

奥村さんが役員を務める女子サッカーチーム LOVELEDGEの選手とカンボジアの子供たち

河原崎:最後に、奥村さんご自身の夢を教えてください。

奥村:私の夢は会社のVisionでもある“EARTHNOWA(アスノワ)”を実現することです。アスには明日、そして未来の意味が込められています。また、英語でEarth(地球)を表してもいます。そして、ワは循環、地球・仲間のワを意味しています。私は子供たちの未来のために、そして地球のために社会課題を見つけ、解決するというEARTHNOWAを世界中の仲間とともに実現したいです。

カンボジアの現地職員と奥村さん

数年ぶりにスバイリエン市長と会い、これからの協力関係を確認しあった。

4. 最後に

高い技術力を持ち、その力で社会課題解決に取り組む日本企業は年々増えています。しかし、海外でもビジネスを展開している企業はあまり多くはないのが現状です。海外でのビジネスをスタートさせることは、日本でスタートさせる以上の難しさがあると思います。そのような異国の地で社会課題解決に取り組もうと考える企業に対し、資金だけでなく、幅広い情報や手厚い支援を提供しているのがJICAの民間連携事業です。世界という舞台で、企業の持つ力を活かし、地球や子供たちの未来のため活動したいと考えていらっしゃる企業様をJICAは応援していきます。

5. 詳細

興亜商事株式会社
1952年設立、愛知県所在。廃棄物処理事業にとどまらず、障害者雇用促進、SDGs貢献活動、スポーツ支援など幅広い事業を展開しています。

JICA 民間連携事業
開発途上国での社会・経済課題解決に取り組む日本企業に対し、支援を行っています。様々な形での支援メニューを展開しており、JICAが持つ現地の情報や豊富なネットワークを提供しながら、企業に合ったサポートをします。

(民間連携事業部インターン 河原崎百華)

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