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【事例紹介】火災が頻発するインドネシアの泥炭地の修復に日本企業が取り組んでいます - 住友林業株式会社(東京都)

2025.01.30

泥炭を知っていますか?木や枝葉が枯れると通常は分解されますが、水分を多く含む場所では酸素が不十分なため分解されずに有機物が土壌に堆積し続けることがあります。これが泥炭です。泥炭は石炭の一種なので乾かせば燃料として使える不思議な泥でインドネシアには20,949,000ha(北海道約2.5個分)の泥炭地があると言われています。泥炭地の泥炭は通常、水に浸かり湿地となっているのですが、農業開発、プランテーション等のために水が過剰に排水されると土壌が乾燥し、好気性微生物による分解が進む他、火災が発生しやすくなります。泥炭火災では煙と共に大量のCO2が大気中に放出されるため、泥炭地を乾燥から守ることは大気汚染(ヘイズ問題)対策や気候変動対策観点から重要です。
※2015年9−10月の期間において東南アジア島嶼地域で発生した大規模な泥炭・森林火災からのCO2放出量は日本の年間放出量に匹敵する量となりました。

住友林業株式会社は、火災が頻発するインドネシアの泥炭地の修復と管理をする為、中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)を活用し、衛星・ドローン・AIを活用した持続可能な泥炭地管理計画策定モデルを目指しています。
同社は本事業に先行し2010年よりインドネシアの西カリマンタン州で森林事業を展開しており、泥炭地が乾燥しないように地下水位を管理しつつ、自然環境の調査に基づき保護する森林と植林事業の為の場所を区分けし、生物多様性を守りながら森林経営をしています。
本事業では西カリマンタン州の事業で培った同社のノウハウに最新のIT技術を組み合わせることで調査期間を大幅に短縮しながら、土地利用計画を作り、泥炭地管理モデルを泥炭地管理者に提供することを目指します。

具体的なビジネスモデルとしては、泥炭地の利用権を有する公的機関や民間企業を想定顧客とし、泥炭を保全しつつ最大限土地を有効利用するための土地利用計画・コンサルティングサービスを提供することを想定しています。その際、顧客側の収益源として、森林経営等の土地活用による収益だけでなく、泥炭地保全のCO2排出削減効果によるカーボンクレジット(プロジェクトが実施されなかった場合を基準として、実際に排出量が下回った場合の差分をクレジットとして認証するもの)を収益源として提案することも視野に入れています。

世界中の森林が貯蔵する量の2倍近くの炭素が固定され、炭素の貯蔵庫ともいわれる泥炭地の課題解決は、インドネシアの温室効果ガス削減目標の達成にも寄与します。

■案件概要はこちら↓
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/1606/Bz231039_summary.pdf

■本案件に関連する同社の取り組みはこちら↓
https://sfc.jp/information/news/2024/2024-09-17.html

■中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)についてはこちら↓
https://www.jica.go.jp/activities/schemes/priv_partner/activities/sme/index.html

泥炭の写真:一見普通の土に見えますがすべて泥炭です。(周囲には低木のみで、一帯に泥炭地が広がっている場所であり周囲には火災跡の灌木が生える)

ドローン/衛星:泥炭地管理モデルの策定にはドローンを始め、衛生データや地下水位、土壌水分、降雨量、温度に関するデータを取得するための自動かつリアルタイムの監視ツール、AIなど様々な技術により調査期間の大幅な短縮を実現しています。

枯れた泥炭湿地林:泥炭湿地林には固有種や希少種が多くみられると同時に、その過酷な環境に適応した特殊な構造や機能を持つ植物が多くみられます。同社では本文で述べた通り生物多様性を守りながら行う森林経営にも取り組んでいます。

泥炭火災の様子:草木だけでなく地中も燃えるため完全に消火するのは容易ではありません。(同社管理地外の様子)

西カリマンタンでは約164,422haの森林管理面積のうち、約27,673haの植林施業面積を有している(施業面積以外は保護林である)。また、生態系の保全やCO2の吸収・固定を担う「保護林」の保全、それらをとりまく「地域社会」との共生を通じて、広域の環境を維持したうえで、木材の安定供給と地域の経済発展に貢献している。

事業を通じ、雇用創出、女性のエンパワーメントにも取り組んでいます。

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