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【事例紹介】フィリピンの下水処理を変える!「浄化槽」という新しい選択肢 - フジクリーン株式会社(愛知県)

2026.02.05

フィリピン北部の山岳都市であるバギオ市は、涼しい気候と美しい景観で多くの観光客を惹きつける人気都市。一方で、標高の高さと急な坂・丘が広がる地形が、都市インフラ整備の大きなハードルにもなっています。
特に下水処理の分野では、地形的・財政的な条件がネックとなり下水道インフラの拡張や新規整備が難しいという課題があり、その結果、十分に処理されないままの排水が水路や川へ流れ込み、地域の水環境に負荷を与え、衛生面や景観保全の観点からも大きな課題となっています。

10%未満の下水普及率が示すニーズと現場のギャップ

フィリピンにおける 公共下水道への接続率は国全体で10%未満 と低く、首都マニラでさえ約30% にとどまっているのが現状です。メトロセブやダバオといった第2・第3の経済圏においても公共下水道網は未整備であり、一般家庭ではセプティックタンク(腐敗槽)※1が主要な汚水処理手段 となっています。しかし、多くのタンクは開口部がなく、適切な汚泥引き抜きができない構造であることに加え、多くの家庭が一度も汚泥を引き抜いた経験がない という維持管理の欠如が、河川・地下水の汚濁を深刻化させる主要因となっています。

汚濁が深刻な水路

セプティックタンク開口の様子

※1 セプティックタンク(腐敗槽)とは、下水道のない地域で家庭の汚水を地中に埋めたタンクに貯め、微生物の力で沈殿・分解させてから土壌へ浸透させる簡易的な浄化装置。日本では現在、セプティックタンクの設置は禁止され、より浄化性能が高い「浄化槽」への切り替えが進む。

下水道普及率15%のバギオ市においても、BOD値※2は河川基準の約2倍,アンモニア態窒素は19倍という汚濁が確認され、生活排水が未処理のまま水路等に流出し、公共水域の水質汚濁が進行していることが明らかになっています。加えて、フィリピンの排水基準は日本より厳格であるにもかかわらず、多くの既存施設で基準が遵守されていないことも指摘されています。基準未達による罰金・操業停止リスクが企業活動の経済的ダメージにつながる可能性も高まっており、制度と現場運用のギャップが、汚濁対策の実効性をさらに低下させています。

※2 BOD値(生物化学的酸素要求量):数値が大きいほど汚染度が高い。フィリピンでは民家を除く民間・公共施設からの放流水に対し、厳しい放流基準がかされている。

新たな選択肢としての「分散型下水処理」

これらの課題に対し、日本の浄化槽業界トップシェアを誇るフジクリーン株式会社は、建物や住宅の近くで汚水を処理できる「浄化槽」を活用した分散型の下水処理ソリューションを提案し、2025年2月から、JICAの支援のもと「浄化槽技術による効率的かつ持続的な下水インフラ整備に関する普及実証ビジネス化事業」を実施しています。

2025年12月上旬には、バギオ市行政の敷地内にフジクリーン製の高性能浄化槽2基の設置が完了しました。本システムはフィリピンの厳格な排水基準に準拠した高度処理仕様で、2026年1月より本格運転を開始します。これから約1年間のパイロット実証期間を通じ、処理性能評価や河川への流入負荷低減による水質改善効果、さらに持続的な運転を可能にする維持管理モデルの確立を目指して検証を進めていきます。

フジクリーン浄化槽の強みは、まさに現場実装のしやすさにあり、インフラ整備が追い付かない地域で特に効果を発揮します。

  • その場で処理できるため、長い管路が不要
  • 狭いスペースでも設置可能
  • 操作・維持管理の負担が小さい
  • し尿+生活排水を一括処理(下水処理場と同等の処理性能)
  • 河川・地下水の汚濁負荷を直接低減

この浄化槽の優位性は今年度日比両政府によって主催された浄化槽セミナーにおいても広く発信され、オンライン含む300名超の参加者の強い関心を集めました。今後、バギオ市やフィリピン中央政府との連携をさらに強化し、浄化槽技術の紹介と普及活動を本格的に推進していきます。

JICA実証事業内で設置が完了したフジクリーン浄化槽

JICAと共に広げる「浄化槽」普及モデル

「浄化槽」技術は、JICA が現在進める「下水道マスタープラン策定プロジェクト」でも重要な位置づけにあります。集中型だけではカバーが難しいエリアに対するソリューション、下水道整備に時間を要する間の一時的かつ実装可能なソリューションとして、分散型処理(浄化槽)の導入は不可欠であり、持続可能で効果的な下水インフラ整備モデルの形成への貢献が期待されます。加えて、JICAはフィリピン政府が実施するNSSMP(国家汚泥・下水管理プログラム)の活用促進を目的として、マニュアル・申請書式の改善、普及セミナー、制度運用支援を通じ、地方都市の衛生インフラ整備を後押ししています。この取組は、各地の下水処理整備を加速させるだけでなく、日本の浄化槽技術の普及拡大にもつながることが期待されています。

「浄化槽」は、地形条件等の厳しい都市でも導入しやすく、現場の運用体制と組み合わせることで水質負荷を直接低減できる技術です。フジクリーン株式会社による1年間の実証データ は、フィリピン各地のきれいな川と衛生的な都市づくりにおいて新しい選択肢を与えることになります。

(フィリピン事務所)

■案件概要はこちら↓
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/1628/Fc231064_summary.pdf

■フジクリーン株式会社のHPはこちら↓
https://www.fujiclean.co.jp/

■中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)についてはこちら↓
https://www.jica.go.jp/activities/schemes/priv_partner/activities/sme/index.html

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