jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

課題情報の発信(資源・エネルギー)

1. 途上国の課題

途上国では、不十分な発電量や電力供給網、電力の安定利用できない状態が要因となり、人々の経済活動に様々な支障が出ています。途上国の現状を踏まえ、資源・エネルギー分野の課題を大きく3つに分類し、各課題について、企業が改善しうる具体的な課題を整理しました。

1.市民の生活や経済活動に必要な電力が十分に発電されていない
2.発電量は十分であっても、電力供給網が未整備のため電気を届けられない
3.電力供給網が充足していても、電力を安定利用できる設備が整っていない

開発途上国の資源・エネルギーに関する課題の概要

課題01:発電量の不足

課題02:電力供給網が不十分

課題03:電力の安定利用ができない

2. JICAの事業戦略(グローバルアジェンダ)

JICAでは前述の3つの課題に対応する事業戦略を掲げ事業を実施しています。
課題1「発電量の不足」には再生可能エネルギーの導入促進、課題2「電力供給網が不十分」に対しては送配電ネットワークの強化、課題3「電力の安定利用ができない」に対しては省エネルギーの促進、を掲げています。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター


【参考】JICAグローバルアジェンダ 「資源・エネルギー」
https://www.jica.go.jp/activities/issues/energy_minig/index.html

3. サブセクター説明

上記の課題をもとに、資源エネルギー分野におけるビジネスニーズや事業展開国を検討する際のポイント、企業の展開事例などを、「エネルギーを生み出す」「エネルギーを届ける」「エネルギーを使う」のサブセクターに分類して説明します。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

エネルギーを生み出す

  • 現状と課題
  • 地方の未電化人口が多い
  • 地理的条件から電力の安定供給が困難
  • 災害に強いエネルギー供給体制が脆弱
  • 食品廃棄物等の再エネ資源が未活用
  • バイオ燃料の精製技術がなく輸入依存
  • 現地ニーズ
  • 小規模系統の電力供給(自然エネルギー)
  • バイオ燃料の高効率製造
  • 発電システムの保守・管理技術

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府は市民へのエネルギー供給に対して外資参入を積極的に進めているか?
E: Economy - 経済成長が進む一方で政府が対応できていない未電化地域、電力供給が不安定な地域があるか?
S: Society - エネルギーの欠如やゴミ処理問題により企業活動や市民生活に悪影響があるか?
T: Technology - 輸入燃料より安価かつ効率的にエネルギーを生み出せるか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「再生可能エネルギー」「バイオ」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 再生可能エネルギー )(バイオ
【参考】ODA見える化サイト (jica.go.jp)

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • 地熱発電
  • バイオマス発電
  • 水力発電
  • 太陽光発電システム
  • 太陽光発電活用技術(水浄化、養殖など)
  • 風力発電
  • 流水式マイクロ水力発電
  • 発電所内省エネ設備の設置・販売
  • ソフト技術
  • パワーコントロールシステム
  • 遠隔モニタリングによる発電所保守

台風などの強風環境下でも発電可能な風力発電機「垂直軸型マグナス式風力発電機」

垂直軸型マグナス式風力発電機
株式会社チャレナジーが開発した、台風などの強風環境下でも発電可能な風力発電機をマダガスカル国の未電化地域に導入することで、再生可能エネルギーによる電力普及を促し、発電コストの軽減やCO2の削減に貢献する。また、政府の掲げる2030年までに電化率70%、そのうち再生可能エネルギー比率85%とする目標達成に貢献することを目指す。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

エネルギーを届ける​

  • 現状と課題
  • 送配電工事の施工技術が未発達
  • 電力網の運用・保守が非効率
  • 故障時の復旧に時間がかかる
  • 現地ニーズ
  • コストおよび作業効率のよい送配電線資材、技術
  • 安全作業が可能な重機の導入

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 電力供給強化のための外資優遇策を導入しているか?
E: Economy - エネルギー需要の増加を見込んだ設備投資を行う資金力があるか?
S: Society - 停電の長期化により企業活動や市民生活に悪影響があるか?
T: Technology - 競合となる欧米技術の導入・普及はどれほど進んでいるか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「配電」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 配電
【参考】ODA見える化サイト (jica.go.jp)

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • 日本製資機材(高所作業車、耐電性グローブ、防・保護具、 検電器・安全ブロック、碍子など)
  • ソフト技術
  • 送配電網管理システム(コントロールセンター)
  • 送配電自動化システム
  • 日本式配電技術訓練
  • 配電系統計画を支援ソフトウェア

無停電工法を含めた安全且つ効率的配電工事の機械化普及促進事業

無停電工法を含む配電工事機械
住友商事(株)、(株)アイチコーポレーション、(株)きんでんが、無停電工法や同工法に要する高所作業車・機材等をベトナムで展開することで、同国の停電理由の80%以上を占める作業停電を改善し、配電の安定化に貢献する。

日本の製品・サービスが求められるサブセクター

エネルギーを使う

  • 現状と課題
  • エネルギー非効率な設備や施設管理
  • 設備の経年劣化による事故の増加
  • 現地ニーズ
  • エネルギー効率のよい工場設備・空調・住宅・資材
  • エネルギー管理モニタリングシステム(省エネ化)

対象国選定のポイント

【ビジネス環境】×【JICAの知見やネットワーク】をマクロで把握することで適切な進出先を検討することができます。

ビジネス環境(例:PESTフレームワークで分析する場合)
P: Politics - 政府は省エネ対策指針を策定し推進しているか?
E: Economy - 省エネ機器を購買する経済力があるか(1人当たりGDP等)
S: Society - 企業・消費者は既存機器を省エネ機器に代替していくべきという考えを持っているか?
T: Technology - 自社より安価で同等の機器やシステムが普及していないか?

JICAの知見やネットワーク
本サブセクターに関するJICA Biz採択案件やその他のODA事業の過去案件からこれまでに得られたJICAの知見やネットワークを参照できる可能性があります。
例:検索ワード「省エネ」等
【参考】民間連携事業 採択事業検索 省エネ
【参考】ODA見える化サイト (jica.go.jp)

想定される民間技術(例)

  • ハード技術
  • EVバス
  • 省エネ塗料
  • 環境配慮ボイラ・ポンプ
  • 省エネ建築用資材
  • 省エネ住宅建設
  • プリペイドガスメーター
  • ソフト技術
  • 省エネ診断システム
  • 工場内エネルギー最適化
  • AI省エネモニタリング(ビル)
  • 発電・蓄電器のIoT監視システム

ダナン市の浄水場に設置された高効率のポンプ

簡易省エネ診断技術
株式会社オオスミが、ベトナムで事業者への省エネ診断や診断マニュアル策定などの簡易省エネ診断コンサルティングサービスを提供することで、同国の省エネ法の推進に貢献することを目指す。

4. ビジネス展開上のTIPS

現地ニーズとの合致・創出

ビジネス展開には長期視点の働きかけも重要です。

途上国では、政府のエネルギー政策や電化施策が不十分な場合が多くなっています。日本では当たり前の業務体制(エネルギー供給網の点検・保守、停電の際の迅速な復旧、人命を優先した安全な工事)が途上国では整っていないことが通常です。
日本がこれまで実施したODA支援を通して構築された信頼を活用し、政府機関への説明、業界団体や企業へのセミナー等の活動によって長期視点で自社製品・サービスの価値を高めていく必要があります。

ターゲットごとの購買力

現地事情やクライアントの経済力を確認しておきましょう。

公共クライアントの場合:送配電網は将来的なエネルギー需要増加を見越した初期投資が必要です。減価償却期間も長期にわたるため、政府の財政や予算配分をしっかり確認する必要があります。
民間クライアントの場合:マイクログリッドは比較的進出しやすい傾向があります。世界的に無電化地域の多くの市民は高額な電気代を払っているため、日本企業の技術が代替手段として提供しやすい状況です。

競合との差別化・独自化

商品・サービスの導入の可能性をあらゆる角度から検証しましょう。

多くの途上国ではエネルギーセクターが公営のため、「日本式」が導入できるか、しっかり可能性を把握することが重要です。
例:送配電の資機材は欧米が競合となる場合もあります。
例:ニッチ領域への中国参入も多く見られ、価格競争が不可避の可能性もあります。

5. 統計情報等

1)主な統計の使い方

資源・エネルギー分野の基礎的な情報の多くは日本語での検索が可能ですが、最新の統計データや業界レポートを探す際には、国際機関や研究機関、業界団体のウェブサイトを活用する必要があります。

国際エネルギー機関(IEA) 国際エネルギー機関(IEA)のデータベースでは世界のエネルギー需給予測等のデータや政策レポートが確認できます。例えば、https://www.iea.org/data-and-statisticsのホーム画面にあるEnergy Statistics Data Browserの国地域検索欄に国名を入力すると、電力種別ごとに積み上げられた当該国の総発電量の年間推移が確認できます。

なお、国ごとの政策はGoogle等の検索エンジンでキーワード検索する方法が有効です。
キーワード:「国名/都市名」 ×「Policy/roadmap/masterplan」 「Energy/Power grid」等

2)その他の統計

基礎情報

専門情報