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- ベトナム ― 注目分野(防災分野)
ベトナムでは気象や地形等の条件から洪水や土砂災害などの自然災害が頻発しており、防災体制の整備が進められている。
政府方針
ベトナム政府は2013年に「防災法」を制定し、2020年には防災対応能力の強化を図るために一部改正し、防災体制の整備を進めてきた。従前は主たる対象災害を洪水と暴風雨として対応してきたが、同法において19種類の自然災害を分類し(改正後は22種類)、現場主義による対策を基本理念に掲げている。同法に基づき、国家防災戦略、中央・地方の防災計画、災害対応計画の策定が義務付けられている。
防災担当機関である農業農村開発省の防災総局(現在の堤防管理・防災局)は、JICAと共に「ベトナム防災優先プログラム(Priority Programs for Disaster Risk Reduction in Vietnam)」を作成し、以下の6つの項目を進めることとしている。
1. 実践的な災害情報マネジメントの確立
2. より良い調整のための体制整備
3. 全てのレベルにおける防災計画策定と計画に基づいた優先投資
4. 暴風、洪水及び干ばつに関連する総合防災対策の実施
5. 地すべり及び土石流対策の実施
6. 気候変動に適応した持続可能なメコンデルタ開発のための生産・生計手段の再構築
暴風雨・洪水にかかる課題・動向
・ベトナムは海抜5m以下の低平地に人口の半数近くの人が暮らし、特に中部地域は台風常襲地帯で、毎年風水害に見舞われている。気候変動により、今後更に異常な降雨や強い台風の発生頻度が大きくなると予想される。また、近年の経済成長と都市化により、被災リスクは高まっている。このことからリスクを低減させる事業の計画・実施は喫緊の課題。
・豪雨発生時には、発電ダム等で事前放流して洪水調節容量を確保し、水害の軽減を図ることが首相決定されているが、水文観測体制と洪水予測体制が不備なことから、効果が十分発揮されていない。また、不適切な放流による人工災害発生の問題や発電量の減少の問題も生じており、水文観測体制と洪水予測体制の整備が急務となっている。
・2024年4月8日付の首相決定(289/QD-TTg)により、2030年をめどに、主要な水文観測所や気象観測所を自動化する目標が掲げられると共に、2050年までに優先して更新すべき既存観測所や新規で建設すべき観測所のリスト等がまとめられている。
・予警報発出および伝達の手順については体系化されているものの、水文・気象情報を単に発表するのではなく、住民の防災行動に結び付く情報として発信することの重要性が認識され始めている。
土砂災害にかかる課題・動向
・近年、豪雨による土砂災害(地すべり、土石流など)が多数発生しており、特に北部・中部の山岳地域において頻発しているが、これまでベトナムにおいて土砂災害の対策は体系的に行われてきていない。
・2021年から、JICAの技術協力により、土砂災害リスク評価手法の策定、パイロット省による対策の計画立案や対策工(砂防ダム)の実施、早期警戒システムの構築、土地利用規制に関する指針策定などを実施中。
・2023年10月27日付の首相決定(1262/QD-TTg)により、「山岳地域及び中部におけるランドスライドとフラッシュフラッドの早期警戒のためのプロジェクト」が承認された。国家・地方予算により、2030年までに37の地方省においてリスクマップの作成や警報・情報システムの構築などが実施されることとなっている。
その他災害にかかる課題・動向
・近年、主にメコンデルタ地域や中部における海岸侵食被害が確認されている。各省において対策が実施されているものの、気候変動による海面水位の上昇や台風の強度増加に伴う荒天時の波高増加により、将来、更なる被害が発生することが予想される。
・昨今、ホーチミン市や南部メコンデルタ地域において、地盤沈下の発生が確認されており、科学的根拠に基づいた原因究明や地盤沈下の影響の定量的な把握、具体の対策実施が喫緊の課題となっている。
その他参考、近年の関連する採択案件
・サイレントパイラーを用いた圧入工法によるアースダム・堤防の防災技術に関する案件化調査(株式会社小澤土木、株式会社橋本組)
・道路のり面の表層崩壊を抑制するのり面保護工技術の案件化調査(ロンタイ株式会社)
・斜面災害予防ソリューションに関する案件化調査(奥山ボーリング株式会社、株式会社オサシ・テクノス)
・道路法面災害対策技術(グラウンドアンカー工法)の普及・実証事業(株式会社エスイー)
・異常気象リスクへの関心度およびその対応策にかかるビジネス化実証事業(株式会社ウェザーニューズ)
・東南アジア諸国におけるプラスチック製雨水慮流構造体のビジネス拡大に向けたニーズ確認調査(秩父ケミカル株式会社)
※ベトナムにおける国別課題情報については、主にベトナム国の主要な政策課題や計画を取り上げています。ご検討いただく際のヒントとなりましたら幸いです。
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