メキシコ南南協力:日本—エルサルバドル—メキシコ TAISHIN(耐震)プロジェクト

JAPAN-MEXICO PARTNERSHIP PROGRAMME(JMPP)

2003年に日本政府はメキシコ政府と日本メキシコパートナーシッププログラム(JMPP)を結び、日本とメキシコの二国間技術協力の更なる強化と、共同で他の第三発展途上国へ技術協力を行っていくことに合意しました。そして、後者の実現のために、日本はJMPPの枠組みの中でメキシコの南南協力を支援していくことを約束しました。長い日墨交流の中で、JICAはメキシコに対して様々な分野で開発援助を実施してきました。JMPPでは、メキシコを開発援助のパートナーとして捉え、日本の支援を通して技術移転された知見や経験を今度はメキシコが第三国へ技術移転することを支援し、開発支援の効率化を目指します。JMPPの枠組みは様々な協力形態により構成されており、現在のところ、メキシコ人専門家の第三国派遣、第三国集団研修の開催、三角協力(日本、メキシコ、第三受益国)プロジェクトの設立などが主な協力形態となっています。

「TAISHIN(耐震)プロジェクト」:メキシコの南南協力成功事例

耐震プロジェクトはJMPPの枠組みの下で行われた南南協力の事例の中でも最も成功した事例の一つと考えられています。

2001年の1月と2月にエルサルバドルにおいて巨大地震が発生し、全国の家屋の11%強にあたるおよそ16万4千戸の家屋が崩壊しました。この大災害の発生を受けて、JICAとエルサルバドル住宅都市開発庁は復興のため、国内の多くの関係者の努力を集結して「TAISHIN(耐震)プロジェクト」を立ち上げました。その知らせを受け、メキシコ政府はJICAメキシコ事務所と審議し、エルサルバドルに対しプロジェクトの支援を申し出ました。メキシコは1985年にメキシコシティで起った大地震の後に日本の支援を受け、類似のプロジェクトを実施しており、当時日本の支援を受けて設立されたメキシコ国立防災センターに日本の防災・耐震技術が日本人専門家を通して移転されました。その移転された防災・耐震に関する技術と知見を今度はメキシコがエルサルバドルへ当該プロジェクト支援を通して技術移転することになりました。

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このエルサルバドル・日本・メキシコの三カ国による三角協力プロジェクトは2003年から2008年まで実施され、効果的にプロジェクト目標を達成し、次のような成果を生み出しました。

「耐震プロジェクト」においては、中南米地域内における南南協力の本来の利点が実際に発揮されました。例えば、メキシコ人専門家とエルサルバドルのカウンターパートは、スペイン語という共通言語だけでなく、類似する文化的背景や慣習を持っていました。更には、両国の建築基準や生活環境条件も大変類似しており、その結果、非常に円滑な技術移転が行われました。

加えて、日本とメキシコは戦略的な支援パートナーシップの形を実現し、その結果、特に費用対効果の優れたプロジェクトが実施されました。具体的には、「耐震プロジェクト」において日本は資金、機材、専門家による技術支援などの協力を行いましたが、メキシコ人専門家はそれらの日本からの協力の効果的な活用を確実なものにする技術支援を行いました。

また、三カ国の研究者と技術者間のオープンで密接な連携はこのプロジェクトの成功に欠かせない要素でした。メキシコ国立防災センターのメキシコ人専門家は、1990年代に日本において当該分野における研修を受けており、それらの経験に基づく日本人専門家とメキシコ人専門家の間の連携は、そこで得た知識と積み重ねてきた経験をメキシコとエルサルバドル間で共有するのに非常に効果的な形で発揮され、エルサルバドルの人々との円滑な連携をも可能にしました。こうして、三つの異なる国のカウンターパートはお互いを受け入れ、お互いのニーズに確実に対応していったのです。

上述のプロジェクトの成功に基づき、エルサルバドル・日本・メキシコは「耐震・第二フェーズ」プロジェクトを三角協力プロジェクトとして2008年12月から実施しています。第二フェーズでは、2003年から2008年まで実施されたプロジェクトから得られた、建築工法に関する研究結果の活用と普及の持続的な体系作りを目指しており、特に関連機関の組織能力向上と建築に関する基準作りを活動の柱とした更なる研究結果の普及が期待されています。

本プロジェクトの成功の重要な鍵は、受益国であるエルサルバドルの開発ニーズに完璧に合致した協力が行われた、ということであったと全ての関係者が同意しています。JICAエルサルバドル事務所のスタッフの一人、サンドラ・ビアナのコメントによると、「エルサルバドル人はとにかくただただこのプロジェクトに大満足よ。」