キルギス共和国日本人材開発センター:地方3都市でキャラバンを実施-ビジネス、日本語、文化交流の各分野で地方との連携を強化
2025.12.12
2025年10月13日から18日にかけて、キルギス日本人材開発センター(KRJC)は、タラス(タラス州)、マナス(ジャララバード州)、オシュ(オシュ州)の3都市で、地方企業との意見交換、日本語教育事情調査、日本文化発信を組み合わせた「地方キャラバン」を実施しました。
本キャラバンにはJICA専門家、JF専門家、KRJCスタッフ・インターンが同行し、さらにJICAキルギス事務所およびJICA海外協力隊(JOCV)からの協力も得ながら、地方都市との多面的な連携強化を図りました。特にJOCVとは現地教育機関への紹介、日本語教育ネットワークの情報共有、文化紹介活動などで連携が進み、地方での日本関連活動を支える重要なパートナーとしてのサポートをいただきました。
ビジネス部門は、タラスで24社、マナスで8社、オシュで19社の企業が参加する意見交換会を実施しました。KRJCからビジネスコースや今後の地方展開案を紹介し、各地域の企業からは具体的なビジネス課題やニーズが共有されました。参加企業からは、短期間で受講できる研修形式の希望(例:2日間の集中プログラム)、価格設定の柔軟化(地域割引・分割払いなどへの関心)、ロシア語でのコース、企業ごとの状況に応じたカスタマイズ研修などのニーズが寄せられました。特にオシュでは女性参加者が多く、研修後のコンサルティングやビジネスプロセスのモニタリング支援のニーズが高いことも確認されました。
さらにKRJCは、タラス、マナス、オシュの企業支援団体と ビジネス人材育成に関する連携覚書(MOU) を締結しました。これにより、各団体と協力して地方企業への情報発信・集客の強化、共同プロジェクトの実施、教育環境整備などを進めていく基盤が整いました。
また、タラスでは、タラス州政府との協力覚書を別途締結し、地方行政とKRJCが継続的に協力しながら地域開発に取り組む枠組みが正式に構築されました。本覚書には、経済、農業、教育、人材育成、文化、医療、環境保護など幅広い分野での協力が盛り込まれており、州政府はKRJCの地方展開に対して積極的な支援姿勢を示しています。特に、今後のビジネス研修の共同実施、農業分野における日本企業・日本技術の活用可能性に関する意見交換、文化・教育イベントの地方展開支援、若者・女性の能力開発に向けた共同企画など、行政側から具体的な協力領域が提示されており、州政府とKRJCが地域の経済・社会課題に協働で取り組む新たな枠組みが動き出しています。
このように、タラス州政府との連携は単なる覚書締結にとどまらず、地方の政策機関とKRJCが互いの強みを活かして事業形成を進めていく重要な足がかりとなっています。
地方企業との意見交換会
タラス州政府との協力覚書
日本語部門では、日本語ブースを各地に設置し、ひらがなプリントを用いて日本語体験を実施しました。地域の子どもから大人まで多くの参加があり、日本語学習への高い関心が確認されました。また、KRJCの新規事業であるオンライン日本語講座の案内チラシの配布、講座説明などの販売促進活動を実施しました。参加者との交流からは、「日本に興味はあるが学べる場所がない」「多様なレベルの日本語クラスを開設してほしい」といった声が寄せられ、地方都市における日本語教育需要の高さが明確になりました。
各地の訪問では、日本語教育や文化交流に関する協力の動きも見られました。タラス州では日本語教育が現在休止しているものの、今後の再開に向けた協力の意向が示され、地域側の前向きな姿勢が確認できました。マナス州では日本学院関係者から現状の日本語教育環境が十分に整っていないとの課題が共有されつつも、元KRJC講師を含む関係者から協力の申し出があり、今後の連携の芽が感じられました。
また、浴衣貸し出しに関する問い合わせもあり、文化面での関心も高いことがうかがえました。さらにオシュ市では、日本センター訪問を通じて教授法セミナー開催に向けた意見交換を行ったほか、イベント会場でオシュ州大学やバトケン日本学院の教員と交流が生まれ、出張後も連絡を継続するなど、地域に広がる日本語教育ネットワークの形成が進展しました。
JF(国際交流基金)専門家による指導
ひらがなを楽しむ子供たち
地方でビジネス連携や日本語教育を展開するには、まず地域住民が日本への関心を持つことが不可欠です。興味や理解がなければビジネス研修の受講や日本語学習にもつながりません。そのため、日本への awareness(認知・関心)を高める文化交流は、地方展開の重要な土台となります。日本と欧州の中間に位置するキルギスでは日本文化への親和性は高い一方、地方では欧米機関や国際ドナーの活動が先行しており、日本の存在感を高める取り組みが求められています。
こうした背景のもと、日本文化イベントでは和太鼓、日本舞踊、花笠音頭、ソーラン節、日本の音楽、コムズ演奏など多彩なプログラムが実施され、3都市とも多くの市民が参加しました。会場では日本語体験、浴衣着付け、折り紙、書道などのブースも設け、地域の日本文化への理解を深める機会となりました。
締めくくりとなるオシュでは、大使館主催の「JAPAN DAY」の一部として開催され、上記プログラムに加え、オシュドラマシアターでKRJCの和太鼓グループ「大江戸太鼓」、スライマントー博物館でJICA/JOCV/KRJC有志による音楽隊「スシバルマック」、それぞれのコンサートも行われました。これらの文化活動は、JICAキルギス事務所およびJOCVの皆さまの多大な協力により実現し、学校調整や展示・ステージ運営など各場面で支援をいただきました。おかげで3都市それぞれで充実した文化交流が可能となりました。
浴衣体験コーナー
日本人グループ「コムズサムライ」のパフォーマンス
大江戸太鼓コンサート(オシュドラマシアター)
「スシバルマック」コンサート(スレイマントー博物館)
KRJCでは、今後、首都以外で文化・教育・ビジネスを包括的に発信する取り組みを強化していく方針であり、本キャラバンは地方との新たな協力関係を築く重要な機会となりました。
キャラバンの結果を踏まえ、KRJCはビジネス部門の地方展開として、2026年1月にタラスで2〜3日の集中セミナーを実施するほか、Business Start や Mini-MBA の地方販売を強化し、地域割引や分割払いなど柔軟な受講方法の導入も検討しています。また、日本語部門ではオシュでの教授法セミナーの開催に向けた準備を進めるとともに、地方企業との共同プロジェクトの形成、日本語教育の地域ネットワーク構築や教材支援の充実などを計画しており、ビジネス部門・日本語部門双方において地方との連携深化を図っていく予定です。
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