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カンボジアの経営者にJICAインターンが聞いてみました:「日本式経営から何を学びましたか?」―カンボジアとのビジネス交流会レポート― 2026.03 インターン 相原 陽菜子

2026.03.25

2026年2月27日、東京・赤坂にて「日本式経営を学ぶカンボジア企業経営者とのビジネス交流会」が開催されました。主催は独立行政法人国際協力機構(JICA)、共催はカンボジア日本人材開発センター(CJCC)。会場には、急成長を遂げるカンボジア市場で実際にビジネスを展開する12社の経営者が集結し、当日参加した日本の18団体・20名と直接交流する貴重な機会となりました。

カンボジア企業によるプレゼンテーションが始まり、聞き入る日本企業関係者の皆さんの様子。発表者の1人目は、建設会社SNP-PTのHeng Serey Rathana/ヘン・セレイ・ラタさんでした。

CJCCでは、「経営塾」という経営者向けの研修プログラムを提供しています。2025年10月から2026年2月の5か月間現地の経営塾で学び、その集大成として実施された本邦研修のプログラムの一つである本交流会では、カンボジアの経営環境に関するプレゼンテーションや、各企業による自社紹介に加え、名刺交換・自由交流の時間が設けられ、参加者は現地のビジネス事情や商習慣について理解を深めることができました。今すぐの進出や連携を予定していない方にとっても、将来のビジネスチャンスを探る第一歩として活用できる場となっていました。
JICAインターンとして本イベントに参加し、自由交流の時間を活用して、各ブースでの対話が一段落したタイミングを見計らい、カンボジア人経営者にお話を伺いました。

1. Sopheak Lar / ソペアク・ラー さん

企業名:KCE International School
事業分野:教育
事業内容:英語・クメール語・中国語のトリリンガル教育やグローバル市民教育を重視した、幼児教育からK–12までの一貫教育を提供する教育機関。
企業リンク:https://kce.edu.kh/

このプログラムに参加しようと思った目的を教えてください。

「今回のプログラムでは、自分の期待を大きく上回る学びがありました。新しいスキルを得て、多くの人と出会い、日本の文化や価値観、成功と課題についても深く知ることができました。こうした経験は、たとえ多額のお金を払っても得られるとは限らない貴重なもので、本当に幸運だったと思います。」

カンボジア企業によるプレゼンテーションが終わり、ブース設営直後の様子。右手前には待機するラーさん。

経営塾で学んだことの中で、持ち帰りたいと思った考え方は?

「特に印象的だったのは、“経営哲学”の重要性です。カンボジアでは、ビジョンやミッションはあっても、哲学という考え方はあまり浸透していませんでした。今回の学びを通して、私たちの学校でも、ビジョンや目標と一貫した哲学を築いていきたいと思いました。
また、日本では“会社”よりも“スタッフ”を第一に考えるという姿勢にも驚きました。これまで私たちは会社中心に考えていましたが、今後はスタッフを最優先に考える必要があると感じました。
この5日間の学びを通して、“4C・1S・1D”という考え方に出会いました。4C・1S・1Dとは、Internal Client=Staff(従業員)、Customer(顧客)、Community(地域)を大切にし、その上でCompany(会社)が成長するという考え方です。さらに、Simple(シンプル)に始め、Digital(デジタル化)で効率化することの重要性も学びました。」

2. Darith Khun / ダリス・クン さん

企業名:K Professional Accountants Co.,LTD
事業分野:会計サービス
事業内容:FCCA/CPA(英国勅許公認会計士・公認会計士)の資格を持ち、ビジネスおよび技術面のニーズに対応した会計・コンサルティングサービスを提供。
企業リンク:https://kpaglobal.com/

なぜ、このプログラムに参加しましたか。

「長年この業界で働いてきて、アメリカやヨーロッパなど世界各地を訪れてきましたが、日本には特別な魅力を感じていました。日本の“規律”や“細部へのこだわり”、そして“長く続く企業文化”に強く惹かれたのです。中には200年以上続く企業もあり、その秘訣を学びたいと思って参加を決めました。
このプログラムでは、企業の戦略や現場での実践を比較しながら、日本の経営哲学や組織運営のあり方を深く学ぶことができました。特に、企業・従業員・地域社会という3つの要素が密接に関わり合う“ステークホルダーのエコシステム”という考え方が印象に残っています。」

なにがカンボジア市場を日本企業にとって魅力的なものにしていると思いますか?

「カンボジアは人口こそ多くありませんが、経済成長率は非常に高く、年間5〜7%の成長を続けています。アジアでもこれほどの成長率を維持している国は多くありません。若い労働力も豊富で、生産性の高い人材が多いのが特徴です。
また、地理的にもベトナムやタイといった周辺国とつながっており、アジア市場への供給拠点としてのポテンシャルも高いです。カンボジアは安定した環境が整っており、日本企業にとって技術や投資を持ち込むには最適な場所だと思います。」

3. Ny Morokot / ニー・モロ コット さん

企業名:GooTalks Academy
事業分野:教育
事業内容:6〜15歳向けの体験型パブリックスピーキングおよびリーディングプログラムを提供。さらに、中小企業のオーナーやリーダー向けにスピーキング研修も実施。
企業リンク:https://gooshop.asia/pages/public-speaking-training-for-teenage-students

このプログラムにはなぜ、参加したのですか?

「今後3年以内に、GooTalks Academyをアジアに展開したいと考えています。今回の日本研修は、その第一歩としてブランドを紹介する機会になると思い、参加を決めました。
私たちのアカデミーは、TEDやToastmastersの学びを取り入れた独自のカリキュラムを持っています。このサービスや知識は、もっと広く届けるべきだと感じています。
私は日本の文化や人々の礼儀正しさ、粘り強さに強く惹かれていて、日本のリーダーたちからもっと学びたいと思っています。パブリックスピーキングを通じて、お互いに学び合い、持っているものを共有できると信じています。」

インタビュー後、モロコットさんの関係者の方に撮影していただいた写真。手にはモロコットさんからいただいた、アンコールワットのシンボルが縫製されたポーチ。

経営塾で学んだ考え方の中で、一番「自社に持ち帰りたい」と思ったものを教えてください。

「“選ばれる理由をつくる”という考え方です。ただ選ばれるのを待つのではなく、自分たちの価値を築き、選ばれる存在になることが大切だと学びました。
また、“顧客満足は従業員満足から始まる”という考え方にも共感しました。従業員が満足していれば、自然とお客様にも丁寧に接するようになりますし、その結果、提供するサービスや価値が地域社会にも良い影響を与えると感じました。
私が目指しているのは、そうした“エコシステム”を自社でもつくることです。」

4. Chhoengsan Nimolchackra / チョンサン・ニモルチャクラ さん

企業名:Maybank Cambodia and Home Food
事業内容:食品
事業内容:健康志向の子ども向け食品や高齢者向け食品を扱う新規事業の立ち上げを検討中。日本での学びを活かし、カンボジアでのビジネス展開を模索している。
企業リンク:https://gooshop.asia/pages/public-speaking-training-for-teenage-students

カンボジア企業が日本企業と協業をするときに出てくる課題は?

「まず最初に挙げられるのは“言語の壁”です。私自身も英語が得意ではなく、地元の大学で学んできたため、普段はクメール語を使っています。英語で話すことにはまだ慣れていない部分があり、やはり努力が必要だと感じました。
もう一つの課題は“信頼関係の構築”です。日本企業とビジネスを始める際には、まず“なぜ一緒にやるのか”という理由を問われます。相手がどんな人なのか、信頼できるのかを見極めようとする姿勢が強く、そこを乗り越えることが成功の鍵になると感じました。私たちも国際的な人材を採用していますが、最初は少し疑いの目で見られることもあります。だからこそ、信頼を築く努力がとても大切だと思います。」

5. Hay Dane/ ヘイ・ダン さん

企業名:UDAYA TECHNOLOGY Co., Ltd.
事業分野:SaaS
事業内容:ホスピタリティ、ヘルスケア、卸売、金融、物流などの分野に向けたデジタル管理システムを提供。生産・建設・製造業向けの産業オートメーションやサプライチェーン管理にも対応。
企業リンク:https://udaya-tech.com/

プログラムに参加した理由を教えてください。

「今回の研修では、日本企業との将来的な連携の可能性を探りたいと思って参加しました。私たちはカンボジア国内で長年ソフトウェア開発を行ってきましたが、日本の技術や機能を取り入れることで、さらにシステムを強化できるのではと考えています。
特に、ソフトウェアと連携するハードウェアの分野にも関心があり、日本の技術と組み合わせることで、より高い付加価値を生み出せると期待しています。」

インタビュー後、ダンさんに誘われて撮った写真。右側がダンさん。

学んだ日本式経営の中で、自社に持ち帰りたいと思った一番の考え方は?

「日本では“顧客満足”よりもまず“従業員満足”を重視するという考え方に驚きました。私たちの会社では、これまで顧客中心の視点が強かったのですが、これからは従業員のキャリアやモチベーション、会社への理解を深めるための戦略を考えていきたいです。
“全員がCEOのように働ける会社”を目指して、社員一人ひとりが責任感を持てるような環境づくりに取り組んでいきたいと思います。」

インタビューを終えて:

インタビューを通して最も強く感じたのは、日本式経営が「自国とは異なる文化の学び」として受け入れられているだけでなく、カンボジア企業の経営改善に直接つながり得る、実用的なヒントとして捉えられているという点です。
多くの経営者が共通して、「利益よりも従業員を第一優先にした組織づくり」や 「哲学に基づいた経営」 に強い関心を示していました。これは、日本企業が大切にしてきた価値が、現在目覚ましい成長の真っただ中にあるカンボジアの企業にも、上手くマッチし始めていることの現れではないでしょうか。

プログラム終了間際に撮っていただいた集合写真。1番左がクンさん、中央がダンさん。手に持っているのは、この写真を撮影してくださったラーさんからいただいた、カンボジア製のポーチ。中にはアンコールワットの写真付きのマグネットが入っていました。

その一方で、言語の壁や信頼関係の構築に時間を必要とする点など、協業する上で浮かび上がる障壁も共有されました。 こうした「リアルな声」は、カンボジア市場に関心を持つ日本企業にとって、進出する上での重要な視点となるでしょう。今回の交流会は、単なる情報交換の場ではなく、日本企業とカンボジア企業が互いの価値観や経営スタイルを理解し、将来における協業の可能性を見つけ出す第一歩となる場でした。
CJCCが長年取り組んできた日本式経営の波及が、参加者の人生における考え方や意識に確かな変化を生み、その学びがそれぞれの企業で実際に反映されようとしている姿を目の当たりにしました。日本企業にとっても、「今のカンボジア企業は何を求め、どんな強みを持っているのか」を知る貴重な機会となりうるプログラムです。今後、両国における企業の間により多くの接点が生まれ、新たな協業の可能性が広がっていくことを期待しています。
(インターン 相原陽菜子)


関連リンク:2月27日開催「日本式経営を学ぶ カンボジア企業経営者とのビジネス交流会」のご案内(JICA)|日本商工会議所
チラシ:https://x.gd/qYSDJ

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